月経前の食欲変化と食事の整え方 甘いものや塩分との付き合い方

2026/6/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

月経前に食欲が変わる背景

月経前になると、甘いものや炭水化物を食べたくなる、食べても満足しにくい、反対に食欲が落ちるといった変化がみられることがあります。月経前症候群はPMSとも呼ばれ、月経が始まる3日から10日ほど前に心身の不調が現れ、月経開始とともに軽くなる状態です。症状には、むくみ、乳房の張り、頭痛、疲労感、いらだち、気分の落ち込み、集中しにくさなどがあり、食欲の変化や過食も含まれます。原因は一つに定まっておらず、排卵後のホルモン変動に対する体の反応、睡眠、ストレス、生活リズムなどが関係すると考えられています。食事だけで症状を防げるとは限りませんが、食べ方を整えることは体調管理の土台になります。

月経周期と食事を記録する

食欲の変化が月経前に繰り返されているかを知るために、月経開始日、食欲、食べたもの、睡眠、気分、痛み、むくみなどを2周期ほど記録します。細かなカロリー計算までは必要ありません。食事を抜いた日に強い空腹が出た、睡眠不足の翌日に間食が増えた、塩分の多い食事の後にむくみが気になったなど、本人の傾向が見えれば十分です。体重は水分量でも変動するため、月経前の一時的な増加だけで急な食事制限を始めないようにします。家族は食べすぎを責めるのではなく、症状が出やすい時期を共有し、休息や食事の準備を支えることが大切です。介護職が関わる場合も、食事量や気分の変化を月経周期とあわせて記録すると、医療職への相談に役立ちます。

主食を抜かず食事の間隔を整える

月経前の過食が気になるときも、ごはんやパンなどの主食を極端に減らす方法は避けましょう。食事の間隔が長くなり、強い空腹から一度に多く食べることがあります。基本は、主食、主菜、副菜を組み合わせることです。主食は活動のエネルギー源、魚、肉、卵、大豆製品などの主菜はたんぱく質の供給源、野菜、きのこ、海藻などの副菜はビタミンやミネラル、食物繊維を補う役割があります。忙しい日は、おにぎりにゆで卵と具だくさんの汁物を添える、パンにヨーグルトと果物を組み合わせるなど、用意しやすい形で構いません。一食ごとの完璧さを求めず、一日または数日の範囲で偏りを整えます。

甘いものと塩分を無理なく調整する

甘いものを完全に禁止すると、かえって食べたい気持ちが強くなる人もいます。菓子を食べる場合は袋のままではなく、一回分を皿に取り分け、食事を抜かずに楽しむ方法があります。空腹時には、果物、無糖のヨーグルト、牛乳、豆乳、小さなおにぎりなども選択肢です。むくみが気になる時期は、汁物を飲み干さない、漬物や加工食品を重ねない、調味料をかける前に味を確かめるなど、塩分を減らす工夫をします。カフェインや飲酒が睡眠、いらだち、動悸などに影響していると感じる場合は、摂取量と症状を記録し、夕方以降を控えるなど自分に合う範囲で調整します。水分はむくみを恐れて極端に減らさず、少しずつ摂ります。

カルシウムやビタミンは食品から幅広く補う

産婦人科の診療ガイドラインでは、生活指導や運動療法がPMSの基本的な対応として示され、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB6などが症状を和らげる可能性にも触れられています。ただし、特定の栄養素を多く摂れば必ず改善するという意味ではなく、効果には個人差があります。カルシウムは牛乳やヨーグルト、小魚、豆腐、青菜など、マグネシウムは豆類、種実類、海藻など、ビタミンB6は魚、肉、いも類などに含まれます。複数の食品を組み合わせ、普段の食事から補うことを基本にします。乳製品が合わない人は、無理に摂らず、体質やアレルギーに合わせて代わりの食品を選びましょう。

サプリメントを使う前に確認したいこと

PMS向けとして販売されるサプリメントや健康食品には、ビタミン、ミネラル、ハーブ成分などが含まれることがあります。錠剤やカプセルは複数の製品を併用すると、同じ成分を重ねて摂る可能性があります。食品から摂る場合と異なり、高濃度の成分を継続して摂取することになるため、表示された目安量を超えないことが重要です。妊娠の可能性がある人、持病がある人、低用量ピルや抗うつ薬、抗凝固薬などを使用している人は、購入前に医師や薬剤師へ相談してください。体調が悪化した場合は使用を中止し、製品名と摂取量を伝えて受診します。健康食品を治療薬の代わりにせず、効果を感じないまま長期間続けないようにしましょう。

医療機関へ相談する目安

食欲や気分の変化が毎月繰り返され、仕事、学業、家事、人間関係に支障がある場合は、婦人科へ相談しましょう。症状が月経前以外にも続く場合は、貧血、甲状腺疾患、うつ病、摂食障害など別の原因を確認することも大切です。精神症状が強い月経前不快気分障害はPMDDと呼ばれ、婦人科と精神科、心療内科が連携して治療する場合があります。過食後に嘔吐する、極端な食事制限を繰り返す、体重が急激に変化する場合も早めの相談が必要です。自分を傷つけたい気持ちや消えてしまいたい気持ちがある場合は、一人で抱えず、家族や身近な人に伝え、精神科や救急窓口などへ早急につながってください。食事を整えることと医療を利用することは、どちらか一方を選ぶものではありません。症状の程度に合わせて組み合わせましょう。

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