ヒスタミン食中毒の特徴と魚を扱うときの注意点

2026/6/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ヒスタミン食中毒はアレルギーに似た症状が現れる

ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが多く蓄積した魚や魚の加工品を食べることで起こる食中毒です。顔や口の周りの赤み、じんましん、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢など、アレルギーに似た症状がみられます。
一般的には食後まもなく症状が現れることが多く、同じ料理を食べた複数の人に症状が出る場合もあります。ヒスタミンは魚に含まれるアミノ酸の一種から、細菌の働きによってつくられます。魚そのものに対するアレルギーとは発生の仕組みが異なりますが、家庭で見分けることは難しいため、症状が出た場合は医療機関へ相談します。

赤身魚やその加工品が原因になりやすい

ヒスタミン食中毒は、マグロ、カツオ、サバ、イワシ、サンマ、ブリ、アジなどの赤身魚や、その加工品で報告されています。干物、照り焼き、揚げ物、缶詰など、加熱された料理が原因になることもあります。
原因となる魚が腐ったようなにおいや色を示すとは限りません。見た目やにおいだけで安全性を判断することが難しい点が特徴です。口に入れたときに唇や舌へ刺激を感じることもありますが、違和感のない場合もあります。味見をして安全を確かめる方法は避けます。

一度できたヒスタミンは加熱しても減らしにくい

アニサキスや一部の細菌は、適切な加熱によって予防できます。一方、食品中にすでに生成されたヒスタミンは熱に安定しており、通常の加熱調理では十分に分解されません。そのため、焼く、煮る、揚げるといった調理をしても、生成済みのヒスタミンによる食中毒を防げない場合があります。
予防で重要なのは、食べる直前の加熱だけではなく、購入から調理まで魚を低温で管理し、ヒスタミンをつくらせないことです。酢、塩、しょうゆなどの味つけでも、ヒスタミンを取り除くことはできません。

購入した魚は速やかに冷蔵または冷凍する

魚を購入するときは、冷蔵または冷凍された状態を確認し、買い物の最後にかごへ入れます。持ち帰るまでに時間がかかる場合は、保冷剤や保冷バッグを使用します。帰宅後は室温へ置いたままにせず、速やかに冷蔵庫または冷凍庫へ入れます。
冷蔵庫に入れていても、長期間保存すれば安全というわけではありません。消費期限や保存方法を確認し、早めに調理します。冷凍した魚を解凍するときは、冷蔵庫や電子レンジの解凍機能を使い、室温で長時間放置しないようにします。一度解凍した魚を何度も冷凍し直すことも避けます。

介護施設や家庭での下処理のポイント

魚を扱う前後には手を洗い、包丁やまな板を清潔にします。生魚に使用した器具は、ほかの食品に使う前によく洗浄します。調理の途中で作業を中断する場合も、魚を室温へ置いたままにせず、冷蔵庫へ戻します。
高齢者向けに骨を除いたり、細かく切ったりする作業は時間がかかることがあります。必要な量だけを冷蔵庫から取り出し、残りは低温で保管します。弁当や配食へ魚料理を使う場合は、調理後の温度管理にも注意し、長時間常温に置かないようにします。

症状が出たときは食べた物を記録する

魚を食べた後に顔の赤み、じんましん、頭痛、吐き気、下痢などが現れた場合は、食べた料理、食べた時刻、症状が始まった時刻を記録します。同じ食事をした人の体調も確認します。残った食品がある場合は、原因確認に必要となることがあるため、食べずに冷蔵または冷凍して保管し、医療機関や保健所の指示に従います。
自己判断で市販の抗アレルギー薬だけを飲み、様子を見続けることは避けます。薬によって眠気やふらつきが起こる場合もあり、高齢者では転倒につながることがあります。

呼吸困難や意識の変化は速やかに対応する

息苦しさ、声のかすれ、のどや舌の腫れ、強い動悸、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、速やかに救急要請を検討します。嘔吐や下痢が続いて水分を取れない場合も、脱水を起こす可能性があるため早めに相談します。
ヒスタミン食中毒は、魚を十分に加熱するだけでは予防できません。購入後の持ち運び、冷蔵や冷凍、解凍、下処理まで低温管理を続けることが基本です。見た目に問題がなくても、保存状態に不安がある魚は食べないようにします。

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