記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/6/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
失語症は、脳卒中や頭部外傷などによって、話す、聞いて理解する、読む、書くといった言葉の働きに障害が生じた状態です。声は出ても言いたい言葉が見つからない、相手の話が分かりにくい、文字を読めないなど、現れ方は人によって異なります。言葉が出にくいことを、考えていない、理解していないと決めつけてはいけません。本人は伝わらない焦りや、周囲から子どものように扱われるつらさを感じることがあります。家族や支援者は、正確に話してもらうことだけを目標にせず、本人が何を伝えようとしているかを一緒に確かめる姿勢を持つことが大切です。
テレビや周囲の会話が聞こえる場所では、言葉を理解する負担が増えることがあります。重要な話をするときは、静かな場所を選び、正面から顔が見える位置に座ります。一度に大勢で話しかけず、会話の中心となる人を決めます。急いでいる時間帯や疲れているときは、普段より言葉が出にくくなることがあります。説明や質問を続ける前に、体調と集中できる時間を確認します。眼鏡や補聴器を使う人では、適切に装着できているかも見ます。環境を整えることは、本人の能力を試すためではなく、残っている力を使いやすくするための支援です。
長い説明や複数の質問を続けると、内容を整理しにくくなります。一文を短くし、ゆっくり自然な声で話します。大声にすれば理解しやすくなるとは限りません。質問は一度に一つにし、答えを待つ時間を十分に取ります。はい、いいえで答えられる質問は役立ちますが、誘導しすぎると本人の本当の希望と異なる答えになることがあります。二つの選択肢を示し、指さしや表情も含めて確認します。同じ言葉が伝わらないときは、繰り返すだけでなく、別の言い方に変えたり、実物や写真を見せたりします。支援者が先回りしてすべて答えないことも重要です。
言葉だけで伝えにくい場合は、紙に大きくキーワードを書く、カレンダーを指す、写真や地図を見せる、身ぶりを使うなど、複数の方法を組み合わせます。文字が読める人でも、長い文章は理解しにくいことがあります。日時、場所、金額など間違いが生活へ影響する情報は、書面で残し、本人と一緒に指さして確認します。スマートフォンやタブレットの写真、音声入力、定型文も役立つ場合があります。ただし、新しい機器の操作が負担になる人もいます。病前から使い慣れた物を優先し、言語聴覚士と相談しながら、本人に合う道具を少しずつ整えます。
何度聞いても意味が分からないときは、分かったふりをせず、まだ分からないことを穏やかに伝えます。本人の言い間違いを毎回訂正したり、家族同士で笑ったりすると、会話を避けるようになる場合があります。疲れやいら立ちが強くなったら、いったん休み、時間を置きます。重要でない言い間違いは、内容が伝わっていれば訂正しない選択もあります。本人が怒ったように見えるときも、性格の変化と決めつけず、伝えたいのに伝わらない不安や、痛み、疲労がないかを確認します。支援者側の焦りが高まったときは、別の人へ交代することも安全な対応です。
診察や契約、復職の面談など、正確な意思確認が必要な場面では、家族だけに通訳の役割を任せないことが大切です。医療機関には失語症があることを事前に伝え、説明資料を簡潔にしてもらいます。自治体によっては、失語症者向け意思疎通支援者の派遣事業があります。仕事では、口頭指示を短くする、手順を文字や写真で示す、電話対応を調整するなどの配慮が考えられます。本人がどこまで自分で伝えたいかを確認し、支援者が発言を奪わないようにします。言語聴覚士、相談支援専門員、就労支援機関などと情報を共有するときも、本人の同意を基本とします。
これまでより急に言葉が出なくなった、相手の話を理解できなくなった、顔の片側が下がる、片方の手足に力が入らない、激しい頭痛やふらつきがある場合は、脳卒中の可能性があります。以前から失語症がある人でも、いつもの症状として様子を見ず、救急要請を検討してください。けいれん、意識障害、繰り返すおう吐がある場合も緊急の評価が必要です。日頃の支援では、本人が使いやすい伝達方法を家族、医療、介護、職場で共有しながらも、決めつけずにその都度意思を確かめます。会話の速さより、本人が参加できた感覚を大切にすることが、生活の安心につながります。