子どもと大人が家庭でできる感染対策のポイント

2026/8/12

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

秋から冬は家族全体で感染症に備えたい時期

秋から冬にかけては、インフルエンザをはじめとする急性呼吸器感染症への注意が必要になります。また、ノロウイルスによる感染性胃腸炎は一年を通して発生しますが、特に冬季に流行しやすいとされています。保育園や学校へ通う子ども、職場へ出勤する大人、通院や介護サービスを利用する高齢者など、家族それぞれが異なる場所で人と接するため、感染症を家庭へ持ち込む機会を完全になくすことは困難です。そのため、感染を完全に防ぐことだけを目標にせず、手洗いや咳エチケットなどの基本的な対策を日常生活に取り入れ、体調を崩した人が出たときに家庭内で広げにくくすることが大切です。特に乳幼児、高齢者、基礎疾患がある人などが同居している家庭では、流行が始まる前から家族で対応を確認しておくと安心です。

手洗いと咳エチケットを家族共通の習慣にする

呼吸器感染症や感染性胃腸炎への対策として、まず意識したいのが手洗いです。帰宅したとき、食事の前、トイレの後、鼻をかんだ後、子どものおむつを交換した後など、生活の区切りに合わせて手を洗います。小さな子どもは一人では十分に洗えないこともあるため、大人が一緒に確認するとよいでしょう。また、咳やくしゃみがある場合は、周囲へしぶきが広がらないよう配慮します。マスクを使用できる年齢であれば、体調や場面に合わせて適切に使用する方法があります。厚生労働省は、医療機関を受診するときや、重症化リスクが高い人が多く利用する施設を訪問するときなどを、マスクの着用が効果的な場面として挙げています。一方、2歳未満の乳幼児は窒息などの危険があるため、マスクの着用は勧められていません。子どもには年齢や発達に合わせた無理のない感染対策を行います。

換気や生活空間の工夫も組み合わせる

感染症対策は、一つの方法だけに頼るのではなく、複数の方法を組み合わせることが基本です。家族が長時間一緒に過ごす部屋では、室温を保ちながら可能な範囲で換気を行います。寒い季節は窓を閉め切りやすいため、暖房を適切に使用しながら、短時間でも空気を入れ替えられる環境を整えます。家族の誰かに咳や発熱などの症状がある場合は、可能であれば寝る場所や食事をする位置を調整し、特に高齢者や基礎疾患がある人との近距離での接触を減らします。ただし、乳幼児や介護が必要な人では、一人にしておくことが安全とは限りません。感染対策を優先するあまり、必要な見守りや介助が不足しないようにすることも重要です。家庭の広さや家族構成によってできる対策は異なるため、無理なく続けられる方法を選びます。

予防接種は年齢や健康状態に合わせて確認する

感染症の中には予防接種によって発症や重症化のリスクを下げることが期待できるものがあります。インフルエンザワクチンについて、厚生労働省は感染を完全に防ぐものではないものの、発病を予防する一定の効果に加えて、重症化を予防する効果も期待されるとしています。予防接種の対象や接種方法は、感染症の種類、年齢、基礎疾患などによって異なります。子どもでは定期予防接種の接種状況を母子健康手帳などで確認し、大人も年齢や持病に応じて必要な予防接種についてかかりつけ医へ相談するとよいでしょう。高齢者や基礎疾患がある人と同居している場合は、本人だけでなく家族全体で感染症への備えを考えることも大切です。接種時期や対象者は制度変更などで変わる場合があるため、その年の公的な情報を確認します。

家族に発熱や咳が出たら体調に合わせて接触を減らす

家族に発熱、咳、鼻水、のどの痛みなどが出た場合は、無理に仕事や学校へ行かず、休養を取りながら経過をみます。咳やくしゃみがある大人やマスクを安全に使用できる年齢の子どもでは、家族と近くで過ごす必要がある場面でマスクを使用することも感染拡大を抑える方法の一つです。鼻をかんだティッシュは放置せず処分し、その後は手を洗います。タオルなど、顔や手に直接触れるものの共用を避けることも検討します。看病をする人をある程度決められる家庭では、複数の家族が頻繁に出入りする状況を減らすと管理しやすくなります。ただし、感染症によって感染しやすい期間や必要な対応は異なります。病名が分からない段階では、家庭で診断を決めつけず、症状と全身状態を見ながら必要に応じて医療機関へ相談します。

嘔吐や下痢がある場合は呼吸器感染症とは異なる対策も必要

冬に注意したいノロウイルスによる感染性胃腸炎では、嘔吐物や便を介して家庭内に感染が広がることがあります。嘔吐物や便を処理するときは、使い捨ての手袋やマスクなどを使用し、周囲へ広げないよう静かに拭き取ります。厚生労働省では、ノロウイルスに汚染された場所の処理には、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤などが有効としています。家庭用製品を使用する場合は、対象物や濃度、換気など製品の使用上の注意を確認します。消毒液を別の容器へ移す場合は誤飲にも注意し、子どもの手が届かない場所で管理します。また、下痢や嘔吐がある人は、家族の食事を直接調理する作業を避けることが望まれます。処理後は手袋をしていた場合でも手を丁寧に洗い、汚染された衣類や寝具も適切に洗浄します。

子どもと大人では体調悪化のサインが異なることがある

感染症にかかったときの症状や重症化のしやすさには個人差があります。子どもでは、自分から息苦しさや脱水を説明できないことがあるため、呼吸が普段より速い、肩で息をする、水分を飲めない、尿が明らかに減る、ぐったりして反応が悪いといった変化に注意します。乳幼児では哺乳量や機嫌も体調を知る手がかりになります。大人でも、明らかな呼吸困難、強い胸痛、意識がぼんやりする、水分を取れない状態などがある場合は、速やかな医療相談が必要です。特に高齢者は、高い熱が出なくても食欲低下や活動性の低下などで感染症が表れる場合があります。年齢だけで判断せず、普段の状態と比べて急激な悪化がないかを見ることが大切です。意識障害や明らかな呼吸困難など緊急性が高い症状がある場合は、救急要請を検討します。

家族全員が完璧を目指さず続けられる対策を重ねる

家庭内の感染症対策では、家中を常に消毒したり、家族同士の接触を完全になくしたりすることは現実的ではありません。特に育児や介護では、食事や排泄、着替えなど近い距離での支援が必要です。手洗い、咳エチケット、場面に応じたマスク、換気、適切な予防接種など、効果が期待できる基本的な対策を生活の中で重ねることが重要です。また、体調不良時に使用する体温計、マスク、使い捨て手袋、ペーパータオルなどをあらかじめ確認しておくと、家族が急に発症したときにも対応しやすくなります。秋から冬は複数の感染症が同時期に広がることがあります。特定の感染症だけを警戒するのではなく、本人と家族の体調を日頃から確認し、症状が出た場合は早めに休養と必要な医療相談につなげることが、子どもから大人まで共通する感染症対策になります。

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