在宅で緩和ケアを受けるために家族が準備したいこと

2026/8/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

緩和ケアは自宅でも受けられる

緩和ケアは、病気による痛みや息苦しさ、不安、生活上の困りごとなどを和らげ、本人と家族の生活の質を支える医療やケアです。がん領域で広く知られていますが、緩和ケアは治療をやめた後だけに受けるものとは限りません。国立がん研究センターは、治療中から緩和ケアを受けることができ、住み慣れた自宅でも訪問診療や訪問看護などを組み合わせて支援を受けられると案内しています。在宅療養を希望する場合は、本人の希望だけでなく、どのような症状があるか、家族がどこまで介護できるか、夜間や急変時の連絡先があるかなどを整理することが大切です。病院から自宅へ移る前に、医療と介護の支援体制を具体的に整えておくと安心につながります。

訪問診療と訪問看護の役割を知る

在宅療養では、医師が定期的に自宅を訪問する訪問診療や、看護師が体調確認、医療処置、療養上の相談などを行う訪問看護が中心になることがあります。必要に応じて、訪問介護、訪問入浴、薬剤師による訪問、福祉用具の利用などを組み合わせます。病院で受けていたすべての医療がそのまま自宅で行えるとは限らないため、どこまで対応できるかを事前に確認します。特に、痛み止めの調整、酸素療法、点滴、排泄の支援、食事や嚥下の問題などは、本人の状態によって必要な対応が変わります。退院支援の担当者や医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーに相談し、誰が何を担当するかを家族にも分かる形にしておくことが大切です。

急変時の連絡方法を家族で共有する

在宅緩和ケアでは、症状が変化したときにどこへ連絡するかをあらかじめ決めておくことが重要です。夜間や休日に痛みが強くなった場合、息苦しさが増えた場合、意識状態が変わった場合など、それぞれの場面で訪問診療医、訪問看護ステーション、救急医療のどこへ連絡するかを確認します。本人が自宅で過ごすことを希望していても、すべての急変を自宅で対応する必要があるわけではありません。症状や本人の希望、医療体制によっては入院が適切な場合もあります。緊急連絡先は冷蔵庫や電話の近くなど家族がすぐ確認できる場所に置き、薬の一覧、診断名、医療機関名、保険情報などもまとめておくと、急な相談時に役立ちます。

本人が大切にしたい生活を聞いておく

在宅療養では、医療処置だけでなく、どのように過ごしたいかがケアの方向を決める重要な情報になります。食べられるものを楽しみたい、家族と同じ部屋で過ごしたい、入浴を続けたい、できるだけ病院へ行きたくないなど、希望は人によって異なります。体調が悪化してから初めて話し合うと、本人が十分に意思を伝えられないこともあるため、比較的落ち着いている時期から希望を確認しておくとよいでしょう。ただし、一度決めた方針に縛られる必要はありません。本人の気持ちは病状や生活状況によって変わることがあります。家族も不安や迷いを抱えるため、本人の希望と家族が担える介護の範囲を医療者と共有し、無理のない方法へ調整していくことが大切です。

家族だけで抱え込まないための支援

在宅療養では、家族が薬の管理、食事、排泄、見守りなど多くの役割を担う場合があります。介護する家族が眠れない、食事が取れない、仕事や通院に支障が出るほど疲れている場合は、支援を増やす必要があります。訪問介護やショートステイなどの介護サービス、医療者への相談、親族の協力などを組み合わせ、家族が休める時間を確保します。国立がん研究センターも、家族自身が悩みや困難を抱えたときに、医療者や相談窓口へ相談することを勧めています。がん相談支援センターでは、患者本人だけでなく家族からの相談も受け付けており、在宅療養や利用できる制度について情報を得られる場合があります。

まとめとして自宅での療養をチームで支える

在宅緩和ケアを続けるためには、家族がすべてを担うのではなく、医師、看護師、介護職、ケアマネジャー、薬剤師などが役割を分けて支える体制が必要です。本人の希望、現在の症状、急変時の対応、家族の介護力をあらかじめ共有し、状態が変わるたびに見直します。強い呼吸困難、意識障害、止まらない出血、急激な痛みの悪化などがある場合は、事前に決めた連絡先へ速やかに相談します。在宅療養は最後まで自宅にいなければならないという選択ではありません。本人と家族の安心を優先し、自宅と病院を行き来しながら療養することも含め、状況に合う場所を選んでいくことが大切です。

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