妊娠中の体重増加を食事制限だけで考えないための管理のポイント

2026/9/12

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

妊娠中は体重が増えること自体が自然な変化

妊娠中は胎児が成長するだけでなく、胎盤や羊水が増え、母体の血液量なども変化するため、体重が増加します。そのため、妊娠前と同じ体重を維持することが目標ではありません。

一方、妊娠中の体重増加量には個人差があり、妊娠前の体格によって目安が異なります。厚生労働省の「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」では、日本産科婦人科学会が示した体重増加指導の目安として、妊娠前のBMIが18.5未満では12から15kg、18.5以上25未満では10から13kg、25以上30未満では7から10kgが示されています。BMI30以上では個別対応となります。

ただし、この数字を毎週厳密に守らなければならないという意味ではありません。指針でも個人差を考慮した緩やかな指導が重要とされています。妊娠前の体重、妊娠経過、胎児の発育、むくみや血圧などを確認しながら、妊婦健診で一人ひとりに合った管理を行います。

体重が増えることを怖がって食事を大きく減らしたり、反対に二人分食べる必要があると考えて食べすぎたりせず、妊娠時期に合わせて食事を整えましょう。

妊娠初期はつわりに合わせて無理なく食べる

妊娠初期は、吐き気、食欲低下、においへの敏感さなど、つわりの症状が現れることがあります。普段通りの三食を食べることが難しい場合は、一度に多く食べず、食べられるものを少量ずつとる方法があります。

冷たい食品なら食べやすい、炊きたてのご飯のにおいが苦手など、食べやすさには個人差があります。食事の形にこだわりすぎず、本人が受け付ける食品から水分やエネルギーを補いましょう。

一方で、特定の食品しか食べられない時期があったからといって、短期間で栄養バランスを完璧にしようとする必要はありません。症状が落ち着いてきたら、主食、主菜、副菜を少しずつ組み合わせます。

日本人の食事摂取基準2025年版では、妊娠前の女性に対するエネルギーの付加量として、妊娠初期は一日50kcal、中期は250kcal、後期は450kcalが示されています。必要なエネルギー量はもとの体格や活動量でも異なるため、数字だけを見て食事量を機械的に増減するのではなく、体重や体調を確認しながら考えましょう。

中期以降は主菜と副菜を不足させない

つわりが落ち着いて食べられる量が増えてきたら、食事全体のバランスを整えていきます。ご飯やパン、麺などの主食だけで済ませず、肉、魚、卵、大豆製品などを使った主菜と、野菜などの副菜を組み合わせましょう。

妊娠中は鉄など必要量が増える栄養素があります。赤身の肉や魚などは鉄とたんぱく質を補う食品として利用できます。また、乳製品、大豆製品、小魚、緑黄色野菜などを食生活に取り入れることで、カルシウムを含む食品の幅も広げられます。

ただし、一つの栄養素だけを意識して同じ食品を大量に食べる必要はありません。妊娠中は食品の安全にも配慮が必要で、生肉や加熱不十分な食品、リステリアなどのリスクがある食品には注意します。

健康食品やサプリメントも、妊娠中なら多くとるほどよいものではありません。ビタミンやミネラルには過剰摂取に注意が必要なものもあります。葉酸を含め、サプリメントの使用について分からないことがあれば、産婦人科医、助産師、管理栄養士、薬剤師などへ確認しましょう。

体重が増えすぎたときも食事を抜かない

健診で体重増加について指摘されると、次の受診までに体重を戻そうとして食事を抜く人もいます。しかし、妊娠中に自己判断で厳しい減量を行うことは避けましょう。

まず、菓子や甘い飲み物が増えていないか、一食の量が急に多くなっていないか、外食が続いていないかなど、調整しやすい部分を確認します。飲み物は水や無糖のお茶などを基本とし、清涼飲料水を習慣的に飲んでいる場合は量を見直します。

食事は主食、主菜、副菜を基本とし、揚げ物や菓子だけを減らして必要な料理まで削りすぎないことが大切です。運動については妊娠経過に問題がなければ行える場合がありますが、妊婦健診で医師や助産師に相談してから、自分の状態に適した活動を取り入れましょう。

また、短期間に急激に体重が増えた場合には、食事量だけが原因とは限りません。むくみや血圧の変化などを伴うこともあるため、自己判断で食事制限を行わず、健診で相談してください。

食事や水分がとれないときは早めに医療機関へ相談する

つわりによる吐き気は珍しい症状ではありませんが、何度も嘔吐して水分をほとんどとれない、尿が少ない、体重が減り続ける、立っているのもつらいといった場合には、妊娠悪阻などの評価が必要になることがあります。早めに産婦人科へ相談しましょう。

妊娠中期以降でも、急激な体重増加に加えて強い頭痛、見え方の異常、急なむくみなどがある場合には医療機関へ連絡してください。強い腹痛、大量の出血、意識障害、けいれん、強い呼吸困難などがある場合は速やかな医療対応が必要です。

妊娠中の体重管理では、数字だけを良くするために食べる量を減らすことが目的ではありません。母体の健康を保ちながら胎児が成長できるよう、適切な食事を続けることが基本です。

毎日の体重変化に不安を感じる場合には、自分だけで食事量を調節し続けず、妊婦健診で食事内容や生活について相談しましょう。個人差を考慮しながら緩やかに管理することが大切です。

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