記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/9/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
出産後は、妊娠や出産による体の回復と同時に、授乳、赤ちゃんの世話、睡眠不足など生活全体が大きく変わります。疲れやすい、涙もろくなる、不安を感じやすいといった変化が現れることもあります。産後数日は一時的に気分が不安定になることがありますが、気分の落ち込みや強い不安が続き、日常生活や育児に影響する場合は専門家への相談が必要です。こども家庭庁の産婦健康診査では、産後間もない時期に体の回復だけでなく、母親の気持ちや精神状態、育児環境なども確認します。産後のつらさを、母親だから耐えるべきと考える必要はありません。本人が不調に気づきにくい場合もあるため、パートナーや家族も睡眠、食事、表情、会話など普段との違いに目を向けることが大切です。
赤ちゃんの授乳や夜泣きでまとまった睡眠が取りにくいことはありますが、赤ちゃんが眠っているときにもほとんど眠れない、強い不安が続く、何をしても楽しめない、自分を責める気持ちが強いといった状態が続く場合は相談しましょう。食欲が著しく低下する、家族との会話を避ける、育児に強い恐怖を感じるなどの変化も確認します。一方、疲れているから産後うつであると本人や家族だけで診断することはできません。貧血、甲状腺疾患、感染症など身体的な病気が体調不良に関係している場合もあります。産後健診では、困っていることを小さなことと思わず伝えてください。パートナーが受診に同行できる場合は、本人が説明しにくい睡眠や食事の様子を補足することも役立ちます。
産後の休息では、周囲から休んでよいと言われるだけでは、実際には休めないことがあります。授乳以外の赤ちゃんの世話をパートナーや家族が担当する、買い物や調理を外部サービスに頼る、来客を控えるなど、本人が横になれる時間を具体的につくることが大切です。母乳育児を希望している場合でも、授乳方法や体調について助産師などに相談し、本人だけに負担が集中しない方法を考えます。家事の完成度を産前と同じ水準に保とうとする必要はありません。また、家族からの支援が得にくい人もいます。こども家庭庁の産後ケア事業では、宿泊型、通所型、訪問型などの方法で、母親の心身のケアや育児支援を行う仕組みが整備されています。利用条件や費用は自治体によって異なるため、住んでいる地域の窓口へ確認しましょう。
産後は赤ちゃんの健診が優先され、母親自身の受診が後回しになることがあります。しかし、産婦健康診査は母親の体とこころを確認する重要な機会です。厚生労働省の出産なびでは、産後二週間、産後一か月頃の産婦健康診査について案内しており、問診や診察、血圧などとともに精神的な状態や育児環境を確認するとしています。自治体によって助成制度や実施方法が異なるため、妊娠中から利用方法を確認しておくと安心です。産後ケアは、特別に深刻な状態になった人だけの制度とは限りません。2024年度改定のガイドラインでは、産後ケア事業が幅広く利用できる支援として位置づけられています。疲れが強い、授乳に困っている、頼れる人が少ないなどの段階から地域の保健師や助産師へ相談して構いません。
気分の落ち込みや不安が強く、自分を傷つけたい気持ちや消えてしまいたいという思いがある場合は、一人で抱えず速やかに医療機関や地域の相談窓口へつながることが必要です。現実にはない声が聞こえる、強い混乱がある、普段と明らかに異なる言動が急に現れた場合も早急な医療評価が必要です。家族が安全を心配する状態では、本人を一人にせず医療機関などへ相談してください。また、大量の出血、強い腹痛、高熱、呼吸困難、意識障害など身体面の急変がある場合も速やかな医療対応が必要です。産後は赤ちゃんの健康と母親の健康を分けて考えるものではありません。母親が休息をとり、必要な治療や支援につながることは、家庭全体の生活を支えることにもつながります。症状が重くなってからではなく、少しつらい段階から周囲や専門職へ相談しましょう。