介護中の女性にみられる骨盤臓器脱に気づくための症状と受診のポイント

2026/9/13

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

骨盤臓器脱とは骨盤内の臓器が下がる状態

介護中に女性から、股の間に何か挟まっている感じがする、陰部から何か出ていると訴えられることがあります。こうした症状の原因の一つに骨盤臓器脱があります。

骨盤臓器脱とは、子宮、膀胱、直腸など骨盤内にある臓器を支えている組織が弱くなり、腟の方向へ下がってくる状態の総称です。子宮が下がる子宮脱のほか、膀胱側や直腸側の腟壁が下がる場合などがあります。

日本女性心身医学会では、軽い状態では症状がないこともありますが、進行すると腹部に力を入れたときなどに、何かが出てくるような感覚が現れると説明しています。排尿や排便の障害につながる場合もあります。

出産経験や加齢などが関係することがありますが、すべての女性に起こるわけではありません。また、女性本人が羞恥心から家族や介護職に症状を伝えない場合もあります。

排泄や入浴介助の際に変化に気づいたときは、年齢によるものと決めつけず、本人の意向に配慮しながら婦人科などへの相談につなげましょう。

立っていると症状が強くなる場合がある

骨盤臓器脱では、一日の中でも症状の感じ方が変わることがあります。朝はそれほど気にならなくても、立ったり歩いたりした後に下垂感が強くなる場合があります。

陰部に何か触れる、歩くと擦れて痛い、下着に何か当たる、下腹部が重いといった訴えが聞かれることもあります。また、尿が出にくい、残っている感じがする、何度もトイレへ行くなど排尿症状を伴う場合があります。排便しにくいと感じる人もいます。

介護が必要な女性では、こうした症状を自分から説明することが難しい場合があります。トイレに長く座っている、排尿後すぐまたトイレへ行く、陰部を気にする動作が増えたといった変化が手がかりになることがあります。

ただし、排尿症状には尿路感染症やほかの泌尿器疾患なども関係します。介護者が骨盤臓器脱と診断する必要はありません。

いつからどのような症状があるか、立っている時間との関係、排尿や排便の変化などを記録し、医療者へ伝えることが大切です。

本人が見せたくない気持ちを尊重する

介護者が入浴や排泄の際に、腟付近から組織が出ているように見えることがあります。異常を確認しなければならないと思い、何度も見たり触ったりすることは避けましょう。

本人が意思表示できる場合は、気になる症状があることを説明し、婦人科で相談することを提案します。どの程度見てもよいかについても本人の意思を尊重します。

認知症などで十分に説明できない場合でも、介護だから当然と考えて無言で陰部を確認するのではなく、ケアに必要な範囲で声をかけながら行います。

症状を他の利用者や必要のない家族の前で話すことも避けます。排泄や性器に関する症状は、本人が特に恥ずかしさを感じやすい内容です。

受診するときも、本人が話せる部分は本人から説明してもらい、家族は不足している情報を補う形にするとよいでしょう。車いすを使用している、診察台への移乗が難しいといった場合には、予約時に医療機関へ伝えておくと対応を相談しやすくなります。

骨盤底筋訓練やペッサリーなどの治療法がある

骨盤臓器脱の治療は、症状の程度や本人の生活への影響、全身状態などを踏まえて選択されます。

軽度から中等度では、骨盤底筋を意識して収縮させる運動が行われる場合があります。また、腟の中に器具を入れて臓器を支えるペッサリー療法が選択されることもあります。症状や程度によっては手術療法が検討されます。日本女性心身医学会でも、骨盤底の運動、ペッサリー、手術などが治療方法として紹介されています。

どの治療が適しているかは、年齢だけで決まるものではありません。介護が必要な女性でも、症状によって日常生活が妨げられている場合には治療を検討できます。

骨盤底筋訓練についても、本人が正しい筋肉を動かせているか分からない場合があります。自己流で強く腹部へ力を入れ続けるのではなく、婦人科や泌尿器科などで方法を相談するとよいでしょう。

ペッサリーを使用する場合も、定期的な診察や管理が必要になることがあります。家族が器具を自己判断で購入して使用することは避けましょう。

出血や排尿困難を伴う場合は医療機関へ相談する

骨盤臓器脱が疑われる症状があり、本人が生活しにくさを感じている場合は、婦人科や女性泌尿器科などへ相談しましょう。

外へ出ている部分が擦れて出血している、痛みが強い、排尿しにくい、尿が出ないといった場合は、早めの評価が必要です。発熱や排尿時の強い痛みなどがある場合は感染症が関係している可能性もあります。

また、パッドに血が付いている場合に、骨盤臓器脱による擦れだけと決めつけることは避けましょう。特に閉経後の女性では、性器出血について別の婦人科疾患がないか確認する必要があります。

大量の出血、強い腹痛、意識状態の変化などを伴う場合には、速やかな医療対応が必要です。

骨盤臓器脱は生命に関わる症状だけで受診する病気ではありません。歩きにくい、排泄がしにくい、陰部が気になって外出を避けるなど、生活の質に影響している場合も相談する理由になります。

介護中の女性についても、年齢や要介護状態だけを基準に婦人科の症状を見過ごさず、本人がより快適に生活できる方法がないか専門家へ相談することが大切です。

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