記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
鼻や頬などの顔に赤みが出たり、ニキビのような赤いできものが出たりしている方。
それ、実は「酒さ様皮膚炎」という別の症状かもしれません。
酒さ様皮膚炎の原因や治し方について、この記事で詳しく解説していきますので、思い当たる症状がある人は参考にしてください。
酒さ様皮膚炎とは、顔の皮膚に現れる症状です。鼻や頬、顎や額を横切る赤みから始まり、時間が経つにつれて、赤い斑点と膿が詰まった隆起が現れることがあります。鼻や頬のいたるところに小さな血管が浮き出たり、鼻の皮膚が赤くて太くなったり(酒さ鼻)するケースもあります。
まず、酒さ様皮膚炎の主な症状は、下記の通りです。
酒さ様皮膚炎はニキビと同様、顔にできるできもので、ニキビの一種といわれていたこともありますが、酒さ様皮膚炎とニキビは全く異なります。酒さ様皮膚炎は黒ずむことがなく、肌も脂っこいわけではありません。反対に肌が乾燥し、皮がむけるのが特徴です。また、酒さ様皮膚炎の丘疹や膿疱は瘢痕化せず、顕著に現れる時期とそうでない時期とがあります。
酒さ様皮膚炎の原因ははっきりしていませんが、以下のような複数の潜在的な要因が絡み合って引き起こされる症状ではないかと考えられています。
顔面の血管の異常によって、顔面が紅潮したり血管が浮き上がったりするのではないかといわれています。ただ、なぜ異常が起こるのかについてはわかっておらず、現段階では過度の日光浴が原因と考えられています。
紫外線や辛い食べ物、アルコール、運動、ストレス、暑さ、寒さなどの外的要因によって肌内の分子であるペプチドが活性化し、肌の免疫系や神経、血管に影響を与え、酒さにつながるという最新の研究があります。
ニキビダニは人の肌に住みついているものですが、基本的には無害です。しかし酒さ様皮膚炎の患者の肌には多く住んでおり、この症状に影響を与えている可能性があります。
酒さ様皮膚炎は家族間で遺伝する可能性がありますが、どの遺伝子が関連しているかなどの詳しい情報についてはわかっていません。
ステロイドは炎症を抑える効果が強く、飲み薬や点滴、塗り薬などで様々な病気に使用されます。塗り薬は、中々治らない湿疹などの皮膚炎に用いられることが多く、薬効の強さによって様々な種類のものが販売されています。
一方で、ステロイドは漫然と使用を続けると思わぬ副作用を生じることがあります。皮膚で問題となる副作用は、皮膚がステロイドの効果に慣れてしまい、次第に治療開始時の容量では効かなくなることです。その結果、ステロイド薬を大量に塗らないと皮膚がひどい炎症を起こした状態となるのです。このようにして起こる皮膚の炎症を「ステロイド酒さ」と呼ぶこともあります。
酒さ様皮膚炎の確実な治療法はありませんが、適切な処置によって症状をコントロールすることはできます。酒さ様皮膚炎によって、ニキビのような丘疹と膿疱ができてしまった場合の治療法としては、塗り薬による治療法と経口薬を服用する方法があります。
病院で処方される塗り薬の例としては、以下のものがあります。
ニキビのようなできものが治るまでに、7~8週間かかる場合があります。また、副作用として、皮膚のヒリつきや痛み、かゆみ、乾燥などがあります。
症状が深刻な場合、経口用の抗生物質での治療がすすめられることがあります。
酒さ様皮膚炎治療に処方される経口の抗生物質は、
などがあります。
基本的な服用期間は4~6週間程度ですが、赤みが強い場合はさらに長期間服用することもあります。
また、副作用として、
などが現れることがあります。
イソトレチノインは重度のニキビに処方されるものですが、場合によっては低用量のものを酒さ様皮膚炎の治療に使うこともあります(妊娠中に服用すると出生異常の原因となることがあるので、妊婦さんは服用を控えてください)。
イソトレチノインの副作用には次のようなものがあります。
酒さ様皮膚炎には、漢方薬で改善することがあります。
代表的なものでは、黄連解毒湯、桂枝茯苓丸、十味敗毒湯、清上防風湯などが挙げられます。
しかし、これらの漢方薬の効果には個人差があり、あくまで治療の補助として位置づけるようにしましょう。また、使用する際には必ず担当医に相談して、他の薬との飲み合わせなどを確認してください。
いかがでしょうか。肌が脂っこいわけではないのに、鼻周辺に赤みやニキビのようなできものができている成人の方は、酒さ様皮膚炎の可能性があります。酒さ様皮膚炎の原因はよくわかっていない部分が多いですが、正しい処置をすれば症状をコントロールすることはできるので、「もしかしたら?」と思ったら皮膚科に足を運んでみてくださいね。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。