ひどい腹痛は子宮外妊娠の危険が!?症状や出血の特徴とは?

2017/5/12 記事改定日: 2018/4/20
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前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

妊娠初期にひどい腹痛を感じることがあったら、異所性妊娠(日本では子宮外妊娠と呼ばれることが多い)の可能性があります。また、妊娠初期には本人が妊娠を自覚していないケースもあるので注意は必要です。
ここでは、子宮外妊娠についてまとめています。

ひどい腹痛を起こす子宮外妊娠のしくみとは?どの場所に起こるの?

子宮外妊娠とは、受精卵が子宮以外のどこか(通常は卵管)に着床することです。子宮外妊娠は、重度の腹痛を引き起こし、時間が経つにつれて悪化します。また不正出血や立ちくらみ、気を失いそうな感じを引き起すこともあります。

毎月、一方の卵巣が卵管に卵子を放出します。妊娠しなければ、子宮内膜がはがれ落ち、生理(月経)になりますが、卵子が精子と受精すると、子宮に進入して子宮内膜に着床し、胎児へと成長します。

しかし、受精卵が子宮外に着床した場合、正常に発達し続けることはできません。子宮外妊娠の90%以上が卵管で発生していますが、子宮頸部、卵巣または腹部で起こる可能性もあります。

子宮外妊娠でも妊娠検査薬は陽性になる?

妊娠検査薬は尿の中のhCGというホルモンを感知して、妊娠しているかどうかを迅速に判断するものです。hCGは受精卵が子宮に着床すると産生が開始されるホルモンであり、妊娠の維持に必要なプロゲステロンというホルモンの分泌を促す作用があります。
hCGは着床が成立して初めて産生されるホルモンであるため、このホルモンが尿中に排出されているかどうかで着床の有無、つまりは妊娠の有無がわかります。

しかし、卵管などに着床が生じる子宮外妊娠でもhCGは産生され、妊娠検査薬は陽性となります。一方で、稀に子宮外妊娠では検査薬に反応するだけの十分なhCGが分泌されず、検査薬では陰性と出ることもあります。
子宮外妊娠は早期に適切な治療を行わないと、卵管破裂などの重篤な症状を引き起こすことがあります。妊娠検査薬で陽性が出た場合は、なるべく早く産婦人科へ行って、正常な妊娠かどうかを診断してもらいましょう。また、妊娠検査薬が陰性でも生理が二週間以上遅れている場合には産婦人科受診をおすすめします。

子宮外妊娠の症状とは?腹痛の頻度は?どんな出血が起こる?

乳房の圧痛、吐き気、疲労などの症状の多くが、通常の妊娠初期症状と類似しているため、子宮外妊娠は、症状からは診断が難しいとされます。不定期に起きる痙攣痛や軽度の腟出血は、妊娠中に起こってもそれだけでは異常と言えませんが、特に次のような症状があり、症状が続いたり悪化している場合は、医師に相談しましょう。

  • 妊娠検査薬で陽性が出た後の異常な出血や茶色の腟出血
  • 生理(月経)とは違う腟出血
  • 通常は下腹部に生じる、鋭い差し込むような腹痛(鈍痛で始まり、痙攣痛に進行)

腹痛は継続的または時々途切れ、運動、腸の緊張または咳などで悪化することがあります。

子宮外妊娠は、初期には症状がなく、一部の女性は妊娠したことに気づかないことさえあります。子宮外妊娠が進むと、卵管を破裂させ、命にかかわる内出血を引き起こすため、迅速な治療が必要です。
子宮外妊娠が疑われる場合は医師に連絡してください。早めに診断できて早期にケアができれば、将来的に健康な妊娠をする可能性が非常に高いといわれています。

卵管破裂

子宮外妊娠に気づかず卵管が破裂した場合は、次のような症状があります。

  • 腹腔内での大量出血(性器出血はないことが一般的)
  • 腹痛の悪化
  • 重度の鋭い腹痛
  • 直腸圧
  • 嘔吐
  • 失血による低血圧
  • 失血による気絶しそうな感じ、脱力感またはめまい
  • 横隔膜下の血液の貯留による肩の痛み
  • 将来的な不妊
  • 腹腔内出血やショック状態

子宮外妊娠の出血と着床出血はどのように違うの?

着床出血とは、受精卵が子宮に着床するときに子宮内膜の一部が剥がれ落ちることで生じる出血です。着床出血は起こらない人の方が多いですが、通常は生理予定日前後一種間頃の時期に起こります。出血は一過性で、うすいピンク色のおりものや茶色いおりものとして現れます。

一方、子宮外妊娠での出血は、時期は着床出血と同じころに起こりますが、長く続くのが特徴です。また、色はだんだん鮮血に近くなることが多く、腹痛を伴ってきます。
長く続く妊娠初期の出血は着床出血ではなく子宮外妊娠の出血である可能性があるので注意しましょう。

子宮外妊娠が診断される時期はいつ?どんな検査をするの?

子宮外妊娠は、通常、妊娠4~6週目頃に診断されます。通常は、妊娠している場所を見つけるために超音波検査を行い、妊娠中に産出されるホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)レベルを調べるために血液検査を行います。子宮内以外の場所に胎嚢があれば子宮外妊娠の診断となりますが、もし子宮内に胎嚢がなかったとしてもそれだけでは子宮外妊娠の診断とはなりません。まだ週数が早い、胎嚢の発育が悪いなどの理由で超音波では検出できていないだけかもしれないからです。また、血中hCGレベルやその増加が通常より低い場合、子宮外妊娠かもしれません。

子宮外妊娠の治療にはどんな方法がある?

残念ながら、子宮外妊娠を防ぐ方法はありません。治療にはいくつかの選択肢がありますが、どれを選択しても、その後医師による慎重な経過観察が必要です。

  • 経過観察:hCGが低く、すでに低下傾向になっている場合に経過観察のみですむ場合もある
  • 薬物治療:早期に発見されれば、薬物のみで治療できることもある。治療期間は1ヶ月以上必要とし、治療がうまくいかなかった場合は手術が必要
  • 腹腔鏡手術:着床部位を取り除く手術。日本では術後2~3日で退院となり、術後の経過観察は1ヶ月以内で終了するのが一般的
  • 開腹術:現在ではほとんど行われない

子宮外妊娠の原因 ― どんなことがリスクファクターになる?

全妊娠の約2%を占める子宮外妊娠は、卵管で卵子の動きが遅くなったり、妨害されるために起こることが多いとされています。
どの女性にも子宮外妊娠が起こる可能性はありますが、35歳以上で喫煙している人は子宮外妊娠のリスクが高くなりるといわれています。子宮外妊娠の原因を特定することは難しいですが、以下は関連する要素です。

  • 子宮内膜症
  • 骨盤内炎症性疾患
  • 過去に子宮外妊娠したことがある
  • 卵管結紮を含む卵管手術(手術してから2年後またはそれ以上後に可能性が上がる)
  • プロゲステロンのみのピルを使用しているときの妊娠(卵管での卵子の動きを遅くする)
  • クラミジアや淋病のような性感染症がある
  • 喫煙

子宮外妊娠のリスクが高い場合は、妊娠しようとする前に必ず医師に診てもらい、妊娠していることがわかったらすぐに医師の診察を受けましょう。

おわりに:妊娠初期のひどい腹痛には要注意。気になる腹痛があるときはすぐに病院へ

妊娠初期のひどい腹痛は子宮外妊娠の可能性があります。鋭い差し込むような腹痛があったら、すぐに医師の診察を受けましょう。
子宮外妊娠になっていたとしても、早期に適切な治療を施せば、次の機会で正常な妊娠が期待できるといわれています。

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