禁酒や減酒を失敗しない方法とは?計画の立て方や酒量を減らすポイント

2017/9/6 記事改定日: 2020/10/12
記事改定回数:3回

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

二宮 英樹 先生

記事監修医師

東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック

二宮 英樹 先生

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

酒は百薬の長ともいわれますが、やはり飲みすぎは身体に悪い部分もあります。健康を考えて禁酒に挑戦するも、挫折する人が少なくありません。この記事では、お酒の量を減らすコツを禁酒した人の体験談を交えて紹介します。減酒・禁酒を考えている人はぜひ参考にしてください。

禁酒や減酒の短期的・長期的メリットとは

禁酒したり、飲酒量を減らしたりすると、短期的には次のようなメリットが期待できます。

  • 朝、気分が良い
  • 日中疲れにくい
  • 肌つやがよくなる
  • 健康になってくる
  • 体重が減ってくる

さらに、禁酒や減酒を長期間続けると、次のようなメリットも期待できます。

  • 気分の落ち込みが少なくなる
  • 睡眠の質がよくなる
  • 判断力・行動力・記憶力の改善
  • 心臓肥大のリスク低下
  • 免疫力の改善

次章から、長期的メリットそれぞれについて詳しく解説していきます。

二日酔いや寝酒など飲酒リスクと禁酒・減酒のメリット

この章では、お酒を飲んでいるときに現れやすい不調などを紹介しながら、禁酒・減酒で得られるメリットを説明します。

気分の落ち込みが少なくなる

二日酔いになると、不安になったり落ち込んだりすることがあります。これは、大量の飲酒とうつ病には強いつながりがあると考えられていることが関係しています。

もしすでに不安な気持ちや悲しい気持ちに陥りやすい状態にあるなら、飲酒によって悪化してしまう可能性があります。飲酒量を減らすことで、飲酒による気分の落ち込みが少しずつ改善していくといわれています。

睡眠の質がよくなる

飲酒は、睡眠の質を左右します。眠れないからと「寝酒」する人もいるかもしれません。しかし、アルコールには眠りに陥りやすくする作用がある反面、睡眠を浅くして早期に目が覚めやすくなってしまう作用もあるのです。

実際、寝る前にお酒を飲むと熟睡しにくくなってしまうことがわかっています。このため、お酒の量を減らすことで熟睡でき、疲れがとれやすくなる効果が期待できます。

判断力・行動力・記憶力の改善

飲酒をすると、判断力と行動力が低下しやすくなります。お酒を飲むと攻撃的な性格になってしまう人は、減酒や禁酒で性格を穏やかに保てるようになる場合があります。

また、大量飲酒を長期間続けると記憶力を低下させる恐れがある、と考えられています。お酒の量を減らすことで、記憶力が改善することがあります。

心臓肥大のリスク低下

長期にわたって大量飲酒すると、心臓肥大のリスクが高くなるといわれています。一度肥大した心臓は、完全にもとに戻すことができません。肥大してしまう前に禁酒や減酒に取り組んで予防しましょう。

免疫力の改善

お酒は適量を飲むだけでも免疫力に影響を及ぼすことがあります。そのため、飲酒量が多い人はさまざまな感染症にかかる可能性が高くなるといわれています。最近風邪を引きやすくなった人も、減酒に長期間取り組むと風邪や病気になりにくい体づくりにつながる可能性があるでしょう。

節度ある飲酒量の目安とは?純アルコールの計算方法を知ろう

厚生労働省が提唱する「節度ある適度な飲酒」では、1日あたりの適切な飲酒量は純アルコールで1日約20gとされています。

純アルコール20gに相当する酒量

缶ビールなら500ml缶1本分、日本酒なら1合(180ml)、25度の焼酎ならグラス2分の1杯(100ml)です。

純アルコールの計算方法

自分が摂取した純アルコールの量を計算できるよう、以下の計算式をメモしておくと安心です。

お酒の量(ml) × アルコール度数/100 ×0.8(アルコールの比重)=純アルコール量(g)
例)アルコール度数5%の500ml缶ビールを1本飲んだ場合
→500ml×0.05×0.8 で、摂取した純アルコールは20g

減酒の効果を実感するためには、1週間の純アルコール摂取量を140gに抑えること、また、1日あたりの純アルコール摂取量は60gを超えないことが大切です。以下に、飲酒量を減らすためのコツを紹介します。

飲酒量を減らすコツは?ひとりでも成功できる?

飲酒量を減らす、または禁酒を目指す場合に挫折せずに目標を達成するために、下記のような方法をとることをおすすめします。

禁酒・減酒計画を立てる
1日の飲酒量の目安を設定する
飲酒の予算の設定する
飲酒量を設定したら、その量に見合った予算を設定。予算が減ると、自然に飲酒量も減少する
周囲に協力を仰ぐ
友人や家族、会社の同僚など、周囲の人に禁酒・減酒宣言してお酒の量を減らしていることを伝え、サポートをお願いする
計画の継続
計画通り飲酒量を守る。「1度だけ」「今回だけ」という安易な気持ちで上限を超えて飲むと、その量が日常的な飲酒量になってしまうので注意
小さいサイズにする
缶ビールであればロング缶(500ml)を避ける、ワインであれば小さなサイズのグラスで飲むようにする
度数の低いお酒を選ぶ
アルコール度数をチェックし、度数が低いものを選ぶ
水分補給
アルコール分解には水分が必要。飲む前もお酒を飲んでいる合間も水分補給をする
水分補給は、水やスポーツドリンクなどのノンカフェイン・ノンアルコールのものを選ぶ
休肝日
飲酒量を減らしても毎日飲んでいると肝臓が疲弊するので、週に2日程度はお酒を飲まない「休肝日」を作る
厳酒外来に相談する
厳酒外来を受診し、医師の指導のもと禁酒・厳酒にとりくむ

減酒外来とは

減酒外来とは、飲酒量を減らしたり、社会生活に支障を来さない程度のお酒の楽しみ方を身に付けたりするための治療や訓練を行う外来のことです。飲酒を完全にやめるのではなく、「問題のない飲酒習慣」を促すことが治療の目的となります。

治療方法はアルコール依存の重症度、患者自身がどのような飲酒をしていきたいかなどによって大きく異なりますが、基本的には自身の飲酒に対する認識のゆがみを修正するため、医師や臨床心理士などと面談を行う認知行動療法などの精神療法が行われます。

そのほかにも、抑うつ気分や不眠などの精神的な症状を伴う人は、向精神薬や睡眠導入剤などによる薬物療法が併用されることもあります。

禁酒による離脱症状はいつから始まる?アルコール中毒の場合は?

毎日多くのアルコールを摂取していた人は、禁酒することで動悸、発熱、発汗、震えなどの離脱症状を引き起こすことがあり、重症な場合には異常興奮による錯乱、幻覚、記憶障害などが見られることも少なくありません。
禁酒前のアルコール量が多いほど離脱症状が現れるまでの時間は短く、症状も重度です。

「アルコール中毒」とは?

アルコール中毒と呼ばれるような状態の人は、禁酒後6~12時間ほどで離脱症状が現れます。軽度な場合には禁酒後2~3日ほどで症状が現れ、3~4日ほどすると徐々に改善していきます。

禁酒で健康になった人の体験談と健康効果

ここからは禁酒に成功した人の体験談を紹介します。

Jさん(45歳・女性)

1日の終わりにお気に入りの酒を飲むのが好きな、ごく普通の女性。1日にグラス2杯のワインしか飲まないので、Jさんは決して大酒飲みではありませんでした。ある日、ワインを楽しむ時間が楽しみというより、ただの習慣になっていることに気づきました。

彼女は医師に相談して1カ月間禁酒しました。禁酒の計画は、「1カ月間禁酒することと」「健康のために毎日1時間のエクササイズに取り組むこと」というシンプルなものでしたが、意外なほど早くに健康面での効果を実感できました。

Jさんの体にあらわれた禁酒の効果

禁酒を始めて最初の1週間は特につらさを感じず、新年会の乾杯ビールでさえ断っていたそうです。2週目の半ばになると、夫がビールを味わっている姿を見て苦しい思いをしながら我慢しましたと話しています。

2週目を過ぎると禁断症状も落ち着きました。そして夜10時前には眠りにつき、午前6時15分にアラームが鳴る前に自然に目が覚めるようになったそうです。肌の調子もよくなり、気持ちもいきいきとしたのに加えて、禁酒をこつこつと続けてきたことで自分自身に自信が持てるようになりました。

また、禁酒を始めた当初は減量は特に気にしていなかったそうですが、最初の1カ月で2.3kg体重が減り、その後も少しずつ体重は減ったそうです。今ではお腹についていた肉も消えました。これは、ワインを飲まなくなったことに伴い、スナック菓子を食べる量や機会が少なくなったためかもしれません。

おわりに:禁酒や減酒は体調の改善などメリット大!計画と周囲の協力が成功の鍵

禁酒したJさんの体験談を紹介しつつ、禁酒と減酒の成功させる方法を紹介しました。完全に断酒するのは難しい場合や、自分でお酒をやめようとしても続かないという人は、減酒外来を受診してみてはいかがでしょう。減酒外来では、その人の健康状態や家庭環境にあわせて、オーダーメイドの減酒プランを考えながらサポートしてくれるので、減酒達成の確率が大幅に上がります。最近は減酒外来を設けている病院が増えているといわれているので、最寄の病院に相談してみてください。

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