通常のうつ病と違うの?! 高齢者特有のうつ病について

2017/6/12

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

厚生労働省が実施している患者調査によると、日本におけるうつ病患者数は2008年には100万人を突破するほど急激に増加し続けています。この記事では、全うつ病患者数の中でも高い割合を占める高齢者のうつ病を紹介します。

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うつ病とは

うつ病診断には慎重な判断が必要です。
憂うつな気分や気持ちが重いなどの状態がほぼ一日中ある・・・そんな状態が長期間続くと、うつ病と診断されることがあります。

しかし、それだけでは断定できないところが、うつ病診断の難しいところです。

一定の診断基準(主に大うつ病と呼ばれるタイプのうつ病の診断に使われる)の他にも、性格や環境、他の病気や服用していた薬が関係していることもあるからです。
これまでに躁状態や軽躁状態を経験したことがある場合は、うつ病でなく双極性障害(躁うつ病)である可能性も考えられるため、そのような経験がなかったどうかの確認も必要になります。

また、抑うつ状態の背景には統合失調症などの精神疾患が潜んでいるというケースもあります。
そのような症状がうつ病と診断されてしまえば、本当の疾患が見逃され、早期発見・早期治療のチャンスを逃してしまうことになりかねません。
正しいうつ病の診断には「どのタイプのうつ病なのか」「他の精神疾患である可能性はないか」などを確認することが不可欠です。

うつ病発症と年齢は関係があるのか?

うつ病は子供でも発症する可能性がある疾患であり、加齢によって発症するものではありません。
しかし、65歳以上の人がうつ病になりやすいという事実はあります。

その理由とは?

年を重ねるにつれ、退職、病気、家族の死などに直面する機会が増えます。
このようなときに悲しいと感じるのは普通のことです。
しかし、高齢者は恥ずかしさから悲しい気持ちや不安な気持ちを医師や介護者に話すことができないことが多く、悲しみから抜け出しにくくなってしまうことが原因ではないかと考えられています。

また、高齢者は、うつ病と認知症など他の病気との違いを診断するのが難しいケースが多いのも、気づきにくい原因のひとつだと言えるでしょう。

一般的なうつ病との違いは?

うつ病の患者に一般的にみられる精神的・身体的症状に加えて、高齢者のうつ病には以下のような症状が見られることが特徴です。

・妄想や幻覚が見える
・退屈感や無力感がある
・記憶上の問題または混乱が起こる
・社会活動に一切関わらなくなるなど

うつ病からの回復のために

うつ病のと疑われるような症状や行動の変化が見られたら、なるべく早く医師に相談しましょう。
うつ病は恥ずかしいものではなく、誰にでも起こり得る治療可能な病気です。
医師の診断とアドバイスを受けることは、認知低下、他の病気、自殺のリスクなどを軽減するのに大いに役立ちます。

また、相談に行く前に以下のことを確認しておきましょう。
・家族や親戚と話し合う
・服用している薬を確認する
高齢者が他の病気の治療のために処方薬を服用しており、これらの薬のうちの1つがうつ病を引き起こしている場合、医師に相談して薬を変える必要があります。
また、うつ病の高齢者を介護している場合は、助けになるサポートグループを紹介してもらうのも良いでしょう。

おわりに:高齢者のうつ病は、医師やサポート機関の助力も必要

ひと口に「うつ病」と言っても、タイプや原因や対処方法などは人によって異なります。
一般的な治療法だけではなく、信頼できる医師に相談し、自身に合ったケアを行うことが回復への近道となるでしょう。

また、うつ病の高齢者の介護をしている場合は、家族のほかにも医師やサポート機関に相談し、力を貸してもらえる環境を整えておくことが大切です。

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