記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/6/14
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
てんかんとは、脳の神経の不具合で発作を起こしてしまう病気ですが、発作で意識を失うこともあり、とても危険が伴います。
てんかんのある人のほとんどは、薬物治療で発作が起きないようにコントロールしています。どんな薬が処方され、どんな治療をするのでしょうか?
この記事では、てんかんの治療、特に薬物治療について詳しくみていきます。
ここでは、てんかんの薬を使った治療について解説します。
てんかんの発作を抑える薬は、抗てんかん薬とよばれます。通常、てんかん治療の最初の選択肢です。てんかんのある人の約70%が抗てんかん薬で発作をコントロールしているといわれています。
通常、抗てんかん薬での治療は2回目の発作後に初めて開始されます。なぜなら、1回目の発作では、必ずしもその発作がてんかんであるとは限らないためです。
以下のようなときには、最初の発作後に治療を開始することもあります。
・脳波(EEG)からてんかんであることがわかった
・磁気共鳴画像(MRI)スキャンを使うと、脳にダメージを与える危険性がある
・脳卒中など、すでに脳に損傷がある
状態によっては、治療として脳の手術が選択される場合もあります。しかし、てんかんの原因となる部位を手術で取り除いても、ダメージや障害を残らない場合のみ手術が実行されます。手術については、次回の記事で詳しくお伝えします。
外科手術が困難と判断された場合、迷走神経刺激療法と呼ばれる治療が代替手段として選択されることがあります。これは胸に小さな装置を埋め込み、迷走神経に電気を流し刺激を与えることで発作を軽減させる治療法です。迷走神経は脳の深部に影響を与え、ペースメーカーのような役割をしているようです。外部から人為的に迷走神経に刺激を加えることでてんかん発作を抑えることができることが報告されています。
薬で発作をコントロールすることが難しい子供の場合は、食事療法が取り入れられるケースもあります。
てんかんの治療の中心となる抗てんかん薬での治療についてお伝えします。
抗てんかん薬ではてんかんを治癒することはできませんが、てんかん患者の大半は、抗てんかん薬で 発作を防ぐことができるといわれています。抗てんかん薬は、発作の原因となる電気的刺激を伝える脳内の化学物質に働きかけることで、発作を抑制しています。
抗てんかん薬には多数の種類があり、どのタイプの抗てんかん薬が選択されるかは、いくつかの要素(たとえば発作の種類、年齢、他に服用している医薬品、妊娠の可能性など)によって変わります。
一般的に使われる抗てんかん薬には、バルプロ酸塩、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、オキシカルバゼピン、エトスクシミド、ピラマートなどがあります。
抗てんかん薬は、錠剤、カプセル、液体、シロップなどが、あります。抗てんかん薬をいつ、どのくらい服用すべきかについては、必ず医師の指示に従いましょう。自己判断で服用を止めると、てんかん発作が悪化する可能性があります。抗てんかん薬の服用を勝手に止めることは絶対にしないでください。
薬の量や回数は、少ない用量から始め、発作が止まるまで、あるいは副作用が出るまで、安全な範囲内で少しずつ量を増やしながら決定していきます。1種類の抗てんかん薬で発作をコントロールできないときは、新しい薬を徐々に導入しながら古い薬の量を減らし、別の種類の抗てんかん薬に変更されます。
抗てんかん薬の目的は、副作用を最小に押さえ、発作をコントロールすることです。発作を抑えるために、複数の抗てんかん薬を組み合わせることもときどきありますが、抗てんかん薬は1種類ずつ試すほうが、複数の薬を服用するよりも好ましいといわれています。
抗てんかん薬を服用している間は、医師の相談なく、市販の医薬品や補助療法の薬を服用しないでください。ほかの薬と抗てんかん薬との相互作用で、発作を引き起こす可能性があります。
バルプロ酸ナトリウムは、通常、妊娠の可能性がある年齢の女性には処方されません。これは、未来の赤ちゃんに身体的な欠損や発達障害を引き起こすリスクがあるといわれているためです。信頼できる避妊薬を使っているかなども確認します。
2年以上発作がない場合、抗てんかん薬の服用を中止が検討される場合があります。
薬物治療の副作用は、抗てんかん薬による治療を始めるときによく起こります。しかし、通常短期間であることが多く、数日でなくなることが多いでしょう。
具体的な副作用は、服用している薬によってさまざまですが、一般的な抗てんかん薬の副作用には以下のようなものがあります。
・眠気
・エネルギー不足
・興奮
・頭痛
・コントロールできない体の揺れ(震え)
・脱毛、もしくは望ましくない髪の成長
・歯ぐきの腫れ
・発疹
発疹が出ている場合、薬にアレルギーがある可能性があります。この場合、すぐに医師の診察を受けてください。
場合によっては、薬の摂取量が多すぎると、酔っぱらったような症状(精神の不安定、集中力の低下、嘔吐など)が起こることがあります。これらの副作用があったときも、すぐに医師に連絡して、用量について相談しましょう。
特定の抗てんかん薬の副作用については、薬に付いている説明書を確認してください。
ハーブ療法などの補完療法の中には、てんかんに効果があるといわれるものがありますが、医学的な研究でその効果ははっきり示されてはいません。
てんかんのある人にとって、ストレスが発作を引き起こす可能性があります。運動、ヨガ、瞑想といったストレス解消法やリラクゼーション療法は役に立つでしょう。
てんかん治療には、抗てんかん薬が中心となります。多くの人が、薬で発作を抑えています。薬の種類や服用する量など、すべて医師と相談しながら治療しましょう。医師の確認がないままに薬の量を変えたり飲まなくなったりすることはとても危険です。
また、人によっては、薬物治療が効果がなかったり、手術のほうが効果的な場合もあります。それも医師に相談しましょう。
次の記事では、てんかん治療の選択肢の一つである脳手術についてお伝えします。
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