記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/15
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
世界ランク1位のテニス選手、ノバク・ジョコビッチ。彼はある食事療法で、劇的な変化を手に入れたという話です。
一体どんな食事療法を実践したのでしょうか?
ジョコビッチの影響で、一流アスリートも続々と追随している食事療法。
それが、これから紹介する「グルテンフリーダイエット」です。
ジョコビッチは、グルテンフリーダイエットの開始1週間後から、体調が見る見るうちに良くなり、その後、グルテンを再び摂取したところ、あっという間に、不調に逆戻りしたといいます。
グルテンは、小麦や大麦、ライ麦といった穀物に含まれるタンパク質のことです。 ほとんどの人は問題なくグルテンを摂取できますが、アレルギーを持っていて、息切れやめまい、嘔吐といった体調不調を起こす人が一定数います。また、セリアック病を患っている人はグルテンを食べるべきではありません。
セリアック病を患っている人が、グルテンを摂取すると、腸に損傷があたえられます。この損傷によって、ビタミン、カルシウム、タンパク質、炭水化物、脂肪といった重要な栄養素は体内に取り込まれなくなります。栄養が吸収できなければ身体は機能しません。
セリアック病は深刻な病気ですが、グルテンを摂取しなければコントロールできます。
完全にグルテンを除く食生活を続けることで、ダメージを回復させることができます。熟知するには時間がかかりますが、効果は絶大です。
しかし、やめた途端に再び腸がダメージを受け、元に戻ります。
グルテンは小麦類を中心とする穀物に含まれているため、パン、パスタ、シリアル、ケーキ、お菓子などさまざまな食品に含まれています。 また、加工食品に添加されることも多いので、食品ラベルをよく読んでグルテンを確認することが大事です。 食品ラベルを見て、グルテンを確認すると同時に、小麦を含まないからといってグルテンフリーとは限らないことを覚えていてください。
グルテンが含まれているかどうか確信できない場合は、食べない方がいいです。
あまり想像がつかない食品にも加えられていて、以下のものが挙げられます。
・ビール、その他のアルコール ・クルトン、パン粉と詰め物
・加工された肉
・加工されたベーコン
・加工されたシーフード
・ソース
・スープブイヨン
・しょうゆ
・せんべい
・マリネ
・麦芽、麦芽フレーバー、麦芽酢 ・処方薬および市販薬およびサプリメント
・ビタミンを含む栄養補助食品
・リップスティック、リップグロス、リップクリーム
・子ども用粘土(セリアック病の子供は、粘土を使用した後に手を洗う必要があります)
グルテンフリーダイエットは、
・パンや麺類が食べられないから食生活が楽しくなくなる
・健康でバランスのとれた食事を楽しむことができない
ということはありません。グルテンフリーの食品は多数あります。
・果物
・野菜
・肉、魚、鶏肉(マリネや化学調味料でコーティングしない)
・米
・ナッツ
・グルテンフリー粉(ジャガイモ、大豆、米、キビ、亜麻、ソルガム、タピオカ、コーンスターチ)
・ミルク、コテージチーズ、クリームチーズ、ヨーグルトなどの乳製品
グルテンフリーのパン、パスタ、ソース、焼き菓子など、グルテンを含む食品の代用品になるグルテンフリー食品も幅広くあります。地元の健康食品店、専門店、ネットショップで見つけることができます。
基本的には医師や栄養士が「食べることのできるもの」と「避けなければいけないもの」のリストをつくることからはじまり、栄養士がグルテンフリーのプランをつくってくれます。
グルテンフリーをはじめるヒント
・グルテンフリーについてできるだけ多く学ぶ
グルテンフリーについては、書籍、料理本、ウェブサイトがたくさんあります。
・外食する際には材料を質問する
ウェイターやシェフに、グルテンフリーのメニューがあるか尋ねます。
・サポートグループに参加する
セリアック病患者のためのサポートグループを見つけましょう。 同じ状況の人と話すことで意外な効果を上げることがあります。
果物、野菜、全粒粉、赤身肉、魚などのグルテンフリー食品を食べることで、必要なビタミンやミネラルはすべて手に入ります。
しかし、グルテンフリーの食事療法をはじめたばかりの頃は、サプリメントも摂取したほうがいいでしょう。グルテンを含む食品を食べていたときに、身体が吸収できなかったビタミンとミネラルを摂取するためです。
もちろん、サプリメントもグルテンフリーのものを選ぶようにしてください。
小麦は主食の1つであり、朝食用シリアルなどの多くの小麦製品があり、農業科学の進化でビタミンやミネラルも強化されています。
昔は、小麦を食べないと、ビタミンBや鉄のような栄養素が不足する危険性がありましたが、現在では、他の食品からも必須栄養素が取れる時代になっており、小麦抜きの選択肢がたくさんあります。
また、小麦を食べなくても、健康に害を与えることはないし、小麦の代替品も充実しています。グルテンフリーのパンを選び、キヌア、トウモロコシ、米などの他の種類の穀物を試してみてください。
グルテンフリーダイエットは、食事から完全に小麦を抜きますが、パンのような小麦からできているのが明らかな食品はさておき、醤油のようにわかりにくいものもあります。できる限り成分表をチェックするようにしてください。
トースト(加熱調理した小麦は消化しやすくなる)、サワードウでつくったパン、フランス産の小麦でつくったパン、パン屋の手づくりパンでは問題が起こらない人もいます。
現在、過敏性腸症候群の人のために開発されたFODMAP食事療法が、小麦の消化に問題を抱える人に推奨されています。 FODMAPは発酵性オリゴ糖類、二糖類、単糖類、ポリオール類という、腸内で分解、吸収されにくい炭水化物です。 FODMAPは、腸内で細菌を増殖させ、お腹にガスを溜め、下痢を引き起こす成分で、小麦、タマネギ、リンゴ、ナシ、キノコ、蜂蜜、キャベツ、牛乳などがFODMAPにあたります。 栄養士のアドバイスと合わせて実践すると、FODMAP食事療法は、更に効果を高めます。
日本人にとって、このグルテンフリーダイエットを2週間実践するというハードルは、欧米人に比べ、遥かに低くなります。
なぜなら、主食が米で、麺類はそばを食べればいいから。
2週間だけ、パン、麺類を断ってみましょう。
「疲労感が抜けない」「集中力が出ない」という人は、ぜひ試してみてください。
“劇的”な変化が起こるかもしれません。