自閉症スペクトラムは、大人になってから診察を受けても遅くないの?

2017/3/14 記事改定日: 2019/2/17
記事改定回数:2回

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、子供のときにその特徴があらわれて気づくこともありますが、大人になるまでそのことに気づかなかったこともみられます。この記事では、自閉症スペクトラム障害の特徴や大人が診断を受けることのメリットなどについて解説します。

自閉症スペクトラム障害とは

自閉症スペクトラム障害(ASD:Autism Spectrum Disorder)とは、自閉症やアスペルガー症候群(AS)、特定できない広汎性発達障害(PDD-NOS)などの総称です。職場や学校などで周囲の人とコミュニケーションをとるのが難しく、反復行動や強いこだわりなどがみられたり、限られた分野にだけ強い興味や関心を持ったりすることがあります。また、発達障害とともに、知的障害や言語障害を伴うこともあります。

今のところ、自閉症スペクトラムを発症する原因は明らかになっていませんが、生まれつき何らかの脳機能障害が原因になっているのではないかと考えられています。

大人の自閉症、症状にどんな特徴あるのか

自閉症スペクトラム障害の症状には、コミュニケーションの難しさや興味や特定の分野に対する興味や関心の強さといったものがありますが、どのような症状がみられるかや、その症状の強さの度合いなどには個人差があります。このため、たとえば目の前に自閉症スペクトラム障害の人が2人いたとしたら、2人の症状や特徴には共通点がほとんどない可能性があります。

以下に、大人の自閉症スペクトラム障害の方に多くみられる症状をご紹介します。

社会的コミュニケーションの難しさ

自閉症スペクトラム障害の方は、ジェスチャーや表情、声色といった非言語的コミュニケーションや、冗談、皮肉などの言葉を理解したり、自分で使ったりするのが苦手です。中には、話さなかったり、かなり限られた発言しかしない人もいます。人の言うことが理解できる場合もあるかもしれませんが、手話など、別の手段でのコミュニケーションを好みます。

社会的相互作用の難しさ

自閉症スペクトラム障害の方は、人の気持ちを認識して理解したり、自分の気持ちを整理したりすることが苦手です。たとえば、無言で他人に近づいてそばに立ったり、ひとりでいることを好んだり、他人に助けを求めないこともあります。そのため、同僚と関係を築いたり、友達を作ったりするのが難しくなります。

社会的想像力の問題

自閉症スペクトラム障害の方は、他人の意図や行動を理解したり、予測したりすることが苦手なため、あらかじめ決まっている行動以外の状況を想定することが難しいと感じます。このため、限られた範囲で行動を繰り返すことが多くなります。ただし、ここでいう「社会的想像力の欠如」は、創造力が欠けていることを意味しているわけではありません。自閉症スペクトラム障害を抱える方の多くは、非常にクリエイティブな才能を持っているからです。

そのほかの症状として、以下のようなものものあります。

自閉症の主な症状

  • 寄り添われたり、アイコンタクトを避ける
  • 興味のない音に反応しない
  • 名前を呼ばれても返事をしない
  • 話すのが苦手
  • 行動に落ち着きがない
  • 場の空気を読むのが苦手
  • 順序やルーチンへのこだわりが強い
  • 同じパターンの行動を繰り返し、パターン以外の状況に混乱する

自閉症スペクトラム障害の診断を受けたほうがいいのか

自閉症スペクトラム障害の症状にあてはまるのではないかと感じるとき、その診断を受けることはとても意義深いことです。多くの人は、なぜほかの人にできることが自分にはとても難しく感じるのか、また、なぜ自分は夢中になるほどあることに没頭してしまうのかを理解する上で、診断をうけてよかったと言っています。また、診断を受けることで支援を受けやすくなるメリットもあります。

大人になってから自閉症スペクトラム障害の診断を受けることには、以下のようなメリットがあります。

自分自身を理解する

自閉症の人は、これまでの人生の中で、特定のことを行うのが非常に難しいということを十分に自覚していたものの、それを自分で説明することが難しかったと思います。しかし、きちんと診断を受ければ、自分の状態を知ることができるだけでなく、なぜ自分には困難に感じられることがあるのかを理解することができます。また、安心感も得られます。

他者の理解を得やすくなる

自閉症の人の多くは、常に誤解されていることに苦しんでいます。しかし、なぜ特定のことを難しいと感じるのかを理解してくれる人が近くにいると、理解やサポートを得やすくなります。

自閉症スペクトラム障害はどこで診てもらえばいいの?

自閉症スペクトラム障害が疑われる場合は、精神科で検査してもらうことができます。ただし、精神科の中でも特に「発達障害」を専門的に扱う医師が在籍する病院がおすすめです。受診を考えている場合は、「発達障害」を専門的に診れる医療機関を探しましょう。また、公的機関である精神保健福祉センターや保健所などで精神科医による無料相談を受けることもできますので、これらのサービスを利用するのも一つの方法です。

受診する際には、普段の様子をよく知る家族や周囲の人に同席してもらい、どのようなことに困っているのか、幼少期からの状況などを詳しく説明できるようにしましょう。

職場に溶け込むためにどうしたらいい?

自閉症スペクトラム障害に悩む大人は、職場環境が騒がしいと感じたり、通勤ラッシュが苦痛に感じたり、職場に行くことがストレスに感じたりすることが多いです。そのため、周囲の理解とサポートが重要になります。

自閉症スペクトラム障害の人は、「空気を読む」ことや「察する」ことが苦手です。したがって、上司や同僚に、できるだけストレートに用件を伝えてもらうようにお願いしましょう。また、ひとくちに自閉症といってもその特徴は人によってさまざまなので、何が得意で何が苦手なのかをきちんと伝えたり、もし可能であれば自分の個性に合った業務を任せてもらえるように頼んでみることもおすすめです。

自閉症スペクトラム障害の方の中には非常にクリエイティブな方も多いので、会社の中で力を発揮できる業務を見つけることができれば、その人にとっても、会社にとっても大きなメリットとなります。

おわりに:大人になってからでも、自閉症スペクトラム障害の診断を受けるのは大事

自閉症スペクトラム障害を抱える方の中には、子供の頃に症状が認められないまま大人になった方もいらっしゃいますが、診断を受けるのに遅すぎるということはありません。中には、診断を受けたらレッテルを貼られたり、他人から期待されなくなってしまうのではないかと不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、診断を受けることで、自分や家族、職場の人が自閉症スペクトラム障害のことを理解したり、支援や治療プログラムを受けやすくなるため、日常生活の負担が軽くなることがあります。もし、自分が自閉症スペクトラム障害かもしれないと感じるようでしたら、一度精神科および心療内科で診察をうけることを検討してみてください。

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