糖尿病の基礎知識 ~症状・原因・治療法について~

2017/6/29 記事改定日: 2018/3/6

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

生活習慣病のひとつとしても知られる「糖尿病」ですが、どんな病気なのかよくわからいという方も多いのではないでしょうか?
そんな糖尿病について、この記事で種類・症状・原因・治療法をお伝えしていきます。

糖尿病はどんな病気?

糖尿病はインスリンというホルモンの不足や作用低下が原因で、血糖値の上昇を抑える働き(耐糖能)が低下してしまうために高血糖が慢性的に続く病気です。
通常、ブドウ糖は食事によって吸収された後、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンによって細胞内に取り込まれます。しかし、糖尿病患者の場合は何らかの原因によってインスリンの量が不足あるいは作用しにくくなっているため、血液中にブドウ糖が残って高血糖の状態が続いてしまいます。
高血糖の状態が続くと、膵臓がインスリンを過剰に分泌して臓器に悪影響を与えたり、血管に血栓ができたり、網膜症や高血圧、動脈硬化、脂質異常症などさまざまな合併症を引き起こす恐れがあります。

【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成】
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-048.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-002.html

糖尿病の種類とそれぞれの特徴について

糖尿病は主に1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、その他に大別されます。
以下にそれぞれの糖尿病の特徴を説明します。

1型糖尿病

1型糖尿病は体内の免疫系が膵臓にあるインスリンを生産するβ細胞に攻撃することで起こります。β細胞が破壊されると、身体は糖(グルコース)をエネルギーに変えるために必要とされるホルモンであるインスリンをほとんど、あるいは全く生産しなくなります。その結果、血糖値が危険なレベルまで上がり、糖尿病性ケトアシドーシスという命を脅かす病気が引き起こされる可能性があります。
1型糖尿病の患者は、自分で毎日インスリン注射を複数回行い、血糖値を管理し、食事療法に従い、定期的に運動をすることによって血糖値を健康な範囲に保つ必要があります。

1型糖尿病は一般的に幼少期や青年期に多く起きますが、理論上はどの年齢でも発症する可能性があります。発症数は2型糖尿病よりも少なく、診断された糖尿病の全ケースのおよそ5~10%ほどです。
1型糖尿病の症状は以下のとおりです。
・過剰な喉の渇き
・頻尿
・視界不良
・極度の疲労
・極度の空腹
・体重減少

2型糖尿病

2型糖尿病はインスリン抵抗性(身体が自分の作るインスリン抵抗力を示すこと)とインスリン欠乏(身体はインスリンを作るが、インスリン抵抗性に打ち勝つことができるほど十分な量ではないこと)の両方を特徴としています。
インスリンは糖(グルコース)をエネルギーとして利用するために体内の細胞に輸送することはできないので、血糖値が上昇してしまうのです。そのうちに、高血糖値によって網膜症、神経障害、心臓病などの重度の糖尿病合併症が引き起こされる可能性があります。

2型糖尿病患者は心血管疾患になる危険性も非常に高くなっています。
このため、血糖値のコントロールに加えて血圧とコレステロール値の上昇を防ぐための適切な治療が不可欠です。

1型糖尿病との違い

1型糖尿病と違い2型糖尿病は通常中高年以上の成人に多く発症しますが、近年では10代の人や若者でもかかる割合が高くなっています。2型糖尿病にかかる人の多くは肥満の状態にあります。家系、その中でも第一度近親者は特に、2型糖尿病のリスクの増加に影響を与えます。2型糖尿病の症状は以下のとおりです。
・過剰な喉の渇き
・頻尿
・視界不良
・皮膚や尿路感染症の再発など

妊娠糖尿病

妊娠前は糖尿病ではなかったにも関わらず、妊娠中に高血糖になる症状を妊娠糖尿病といいます。
妊娠糖尿病は体が妊娠中に必要なインスリンの生成・使用ができなくなることで発症し始めます。十分なインスリンがなければ血糖をエネルギーに変えることができず、血糖が血中に高濃度で蓄積してしまうからです。
妊娠糖尿病の原因ははっきりとしていませんが、赤ちゃんの成長に必要な胎盤からのホルモンが母親の体内でのインスリン抵抗性をあげることがひとつの要因であることがわかっています。

【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成】
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-048.html

糖尿病の合併症について

糖尿病が進んでしまうと全身の血管と神経が血糖値の高い状態になり、体の各器官に適正に栄養を供給できなくなります。そうすると、全身にさまざまな障害が起こってきます。
特に〈糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病神経障害〉の三つの症状は、糖尿病の三大合併症と呼ばれるほど有名な合併症です。
また、三大合併症のほかにも〈脳梗塞、心筋症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、糖尿病性足病変、歯周病、糖尿病ケトアシドーシス〉などの合併症が起こる危険性があります。
また、糖尿病を発症すると免疫力が低下しやすくなり、肺結核や尿路感染症、皮膚感染症などの感染症にかかりやすくなります。

糖尿病の治療法

1型糖尿病では毎日インスリンの自己注射をしてインスリンを補充することで、症状をコントロールするという治療法を行います。一方、2型糖尿病は食事療法と運動療法によって治療していくのが一般的です。

2型糖尿病の治療について

糖尿病の食事療法は、過食を避け、栄養バランスのとれた規則正しい食事をすることが基本です。
合併症予防のためには塩分やコレステロール、飽和脂肪酸を多く含んだ食べ物は控えるのが望ましいとされています。また、運動療法の目標として、できれば毎日(少なくとも週に3~5回)、全身をつかった中等度の有酸素運動を20~60分程度行うことが推奨されています。
これらの食事療法や運動療法で効果が見られなかった場合は、血糖降下薬などの薬物療法が実施されます。

おわりに:糖尿病の合併症を防ぐためには治療やケアが大切

糖尿病は一度発症すると完全に治るということはありません。しかし、自分の状態に合わせて治療の3本柱である「食事療法」・「運動療法」・「薬物療法」を行えば、健康な人と変わらない生活を送ることも可能です。正しい知識を持ち、上手に糖尿病と付き合っていくことが大切です。

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