記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/6/20
記事監修医師
前田 裕斗 先生
女性だけのがんとして、子宮がんがあります。子宮がんには子宮頸がんと子宮内膜がんがありますが、前者は近年、中高年層で減ってきている反面、20代から30代の若年層で発症する人が増加しています。
ここでは、子宮頸がんとその予防に期待できる予防接種に関して知っておきましょう。
ヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸部に感染して起こる子宮頸がんは、性活動が活発な若年層で発症する機会が多いがんです。
最近では特に増えているという報告がなされている子宮頸がん。その予防に期待されているのがHPVワクチン接種です。
ワクチンは安全ですが、特定の基礎疾患があったり重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)を経験したことがある人は、特別な注意を払ったほうがよいかもしれません。
HPVウイルスは、性行為によって感染します。最近では特に若い年齢層で子宮頸がんがみられていることから、性行為を経験する早い段階からHPV感染の危険性から女性を守ろうという動きがあります。
子宮頸がんワクチンは強制ではなく、現在は積極的な接種は勧められていませんが、接種に伴い前がん病変(子宮頸がんへ進展する前の病変)の発症率が低下したなどのデータも出てきていることから、将来的には接種することが日本でも推奨される可能性も示唆されています。(実際に日本以外の多くの国では予防接種を受けることが推奨されています。)勿論、予防接種を受ける際はワクチンの有効性とリスクを十分に理解したうえで、受けるかどうか判断することが重要です。
サーバリックスとガーダシルという2種類のワクチンを使用し、3回の接種が必要です。「予防接種法」で規定された中学1年生となる年度に、以下のように行います。
1回目の接種を行った1カ月後に2回目を、6カ月後に3回目の接種を行う
1回目の接種を行った2カ月後に2回目を、6カ月後に3回目の接種を行う
接種1カ月以内に何らかの予防接種を受けたときは、いつ、どのようなワクチンを接種したか、医師に伝えましょう。
針を刺した直後に強い痛みやしびれが生じたときは、担当の医師にすぐに伝えて針を抜いてもらうなどの対応をしてもらい、その後の対応についても相談してください。
予防接種直後に、以下の症状がみられることがあります。
・注射による痛み
・恐怖、興奮などをきっかけとした失神
接種後は、保護者が付き添い、接種後30分ほどは立ち上がることを避けて待機し、様子をみるようにしてください。
また、予防接種当日は激しい運動は避け、接種部位を清潔に保ち、接種後の体調管理をしっかり行ってください。接種部位の異常や体調の変化、さらに高熱、けいれん、長期間持続する激しい痛みなどの異常な症状を呈した場合は、すぐに医師の診察を受けてください。
約10年間感染を防ぐ効果があることがわかっていますが、専門家はもっと長く効果が持続すると推測しています。
子宮頸がんワクチンは、多くの副作用の報告から接種を見合わせることが多くなっているそうです。しかし、今やそうした副作用はHPVワクチン接種との因果関係があるとは考えられておらず、世界保健機関(WHO)からも同様の声明が出ています。子宮頸がんの好発年齢は、現在最も多くの女性が出産する30歳前後です。そう考えてみると、子宮頸がんから女性を守ることは妊娠・出産というヒトとしての種の繁栄につながる大事なことだと思いませんか?
20歳を過ぎたら「子宮がん検診」とともに考えてみてはいかがでしょう。