養子を迎える際に大切な医療の情報とは

2017/8/25

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

保護施設に養子として引き取られた子供は、たとえ生後すぐに引き取られた場合でも、トラウマ(精神的外傷)や喪失感を経験している場合があります。養子の中には、身体的、精神的あるいは感情的な問題・障害のために、さまざまな要素を必要とする子供もいます。養子を迎えるときに得ておきたい情報について理解しておきましょう。

養子の健康歴

子供が施設の保護下に入る、あるいは養子縁組を計画している場合には、法律によりその子供の健康状態に関する詳細なアセスメント(査定)が求められます。また、健康状態の報告には、以下の情報が含まれる必要があります。

・その子供の胎児時の妊娠期間、生誕および初期発育について
・その子供が生まれた家系の病歴・治療歴について
・その子供自身の病歴・治療歴について(虐待及びネグレクト(育児放棄)の経験、免疫・負傷および病気にに関する年表を含む)
・その子供の現在の身体的健康状態について(視力、聴力、歯科医療などを含む)
・その子供の精神的健康状態および行動について(トラウマ(精神的外傷)および喪失を含む)

しかし、これら全ての情報を得ることが困難な場合もあります。例えば、立てられた養子縁組の計画に不満がある場合には、その子供の肉親は、子供についての情報を共有することを拒むこともあります。また、肉親の行方がわからなかったり、実父が誰であるか分からないようなケースもあります。健康状態に関する情報を完全に集めきることができないと、その子供の抱える問題点を理解し、将来に起こり得る事態を事前に防ぐことが難しくなってしまうことがあります。

養子に見られる発育上の遅れ

子供が施設の保護下に置かれるようになると、その発育の遅れの程度に大きな触れ幅が生まれてしまうことがあります。発育の遅れは、身体的なもの、感情的なもの、あるいはその両方であることもあります。

自身の年齢にそぐわない幼い振る舞いをしたり、あるいは同じ年齢の子供のほとんどが出来ることが出来なかったりするといったことが起こります。また、発育の遅れは、喋る能力など、特定の面に関連する場合もあります。
施設の保護下にある子供および引き取られた養子に見られる発育上の遅れは、以下のような要素によって引き起こされると考えられています。

母親の妊娠時に使用したアルコールや薬物等の「何か」

この場合、生まれてきた子供が胎児アルコール症候群(FAS)または胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)と診断される可能性があります。

妊娠期間中の過度、または長期間のストレス・不安

この場合、胎児に脳の発育面で悪影響を与えてしまうことがわかっています。

虐待またはネグレクト(育児放棄)またはその両方による発育上のトラウマ

子供が適切な保護と刺激を享受できていない場合は、それが子供の脳の特定部の成長・発育に影響し、感情面での発育に欠陥を生じさせるケースがあることが報告されていて、この障害のことを「愛着障害」と呼ぶことがあります。

ダウン症など、遺伝子性の疾患

子宮内や生誕後に、虐待・ネグレクトによってもたらされたトラウマが引き起こす発育的遅れに対する回復力の程度は、子供によってさまざまです。また、このトラウマを克服し、発育的に「追いつく」ことができる能力についても、それぞれ事情が変わってきます。
これらの発達上の遅れによる長期的な影響を予測するのは困難なことが多く、子供を養子として引き取るつもりの人は、その養子が将来専門家によるサポート・サービスが必要となることを覚悟しなくてはいけません。子供が自身の持つ困難を乗り越えられるよう手助けをするのには、大変な辛抱と強い決心が親に求められますが、養子縁組後のサポートをしている団体もあるので、悩みがあるときは相談してもいいでしょう。

養子となる子供が複雑な疾患を抱えている場合

養子として引き取ってくれる家族を必要としている子供の中には、複雑な疾患を抱えている子供もいます。
・脳性小児まひ
・嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう、日本では稀です)
・ダウン症、または胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)
これらを抱える子供の場合には、その子供を養子として引き取る親は、子供に必要な要素をきちんと満たすことが出来ること、また子供が必要とするサービスを確実に受けることが出来るよう子供の「代弁者」として効果的な行動を取ることが求められます。
また、身体的・医学的な困難のほか、ネグレクトや虐待によって引き起こされたトラウマを経験している子供もいますし、子供の中には、鬱病や不安感など、遺伝で生じる可能性のある精神疾患に対し、耐性がないものもいます。

医師にかかるとき

入手した健康情報を解釈できないときは、養子縁組と養護養子縁組の経験を持つ医師に相談しましょう。他の国から養子を取った場合は、提供者がそのような背景の子供たちを扱った経験があることを確認してください。
写真やビデオを手に入れることができれば、医師は子供の大きさ、成長パターン、および胎児アルコール症候群の兆候を見つけられますし、 動画は言語発達の評価にも役立ちます。
養護養子縁組で時間を過ごした子供を養子にする場合は、健康記録を入手するために、その子が世話を受けた場所を代理店が教えてくれるかどうか確認しましょう。

子供が家に来たら、次のようにします。

1.改めて検査を受ける

はじめに、あなたの子供はあらゆる感染症や病気がないか検査が必要です。 また、出生前に薬物やアルコールに暴露されていないかどうかを確認する必要があります。子供が外国から来た場合、母国で健康診断を受ける必要がありますが、その子が到着した時点で検査をすることも重要です。国によっては、検査の信頼性が乏しいところもあります。また、可能性のある障害や病気については、病院でスクリーニング検査を受けるようにしましょう。

2.必要な予防接種をすべて受けているかどうか確認する

医師は、子供が本当に予防接種を受けていることを確認するために血液検査をする場合があります。 注射を受けた国によっては、再度注射を受ける必要があるかもしれません。

 3.子供の発達能力を評価する

適切なケアを受けていない子供は、成長や発達の遅れ、精神障害のリスクが高くなります。心配なことがある場合は、些細なことであっても医師に相談しましょう。 医師は一般的な発達評価を行い、必要に応じて、言語療法士、理学療法士、または作業療法士を紹介することができます。子供が早く治療を受けるほど、その子の成長は追いつくでしょう。

おわりに:養子を迎えた場合の医療上の問題

養子を迎え、育てていくことは、感情のアップダウンの連続です。家族が増えるのですから、わくわくすることも多いでしょう。
しかし、ときにはストレスを多く伴います。この子はどこから来たのだろうか? この子には私が知らない問題があるだろうか? なぜこの子は養子縁組に出されたのだろうか?と、自問自答する日もあるかもしれません。
しかし、すべての答えを得ることは不可能です。 子供はあらゆる理由で養子にされます。10代の妊娠、親の虐待、薬物やアルコールの乱用、国の法的規制など、さまざまです。
しかし、養子に迎える子供に、より良いケアをしてあげるためにも、子供の医療の情報だけは出来る限り入手したいものです。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

子供(200) 養子(4) 医療(5)