記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2017/6/23 記事改定日: 2019/9/18
記事改定回数:4回
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
下痢になっても、すぐに病院に行くという人はあまり多くないのではないでしょうか。でも、薬で治らない下痢や長く続く下痢には深刻な病気が隠れている可能性があります。
では、どんな下痢のときに病院へ行った方がいいのでしょうか?
下痢の多くはウイルスや細菌感染が原因で起こります。
市販されている下痢の薬は、ウイルスや細菌そのものを排除する効果はなく、腸管の運動を抑えて下痢を止める効果があるのみです。
しかし、下痢は原因となるウイルスや細菌が排出されないと症状が改善しないことが多いため、下痢止めを飲むことでウイルスや細菌の排出を抑えてしまい、結果的に下痢を長引かせてしまう可能性があります。
また、下痢の原因として、まれに膵臓や腸管そのものに不具合がある場合もあります。このような場合、下痢止めは効果がありません。
軽度の下痢であれば病院に行かなくても自然に治りますが、以下に当てはまる場合はすぐに病院に行くことをおすすめします。
下痢をしたときには内科を受診しましょう。
消化器内科があれば消化器内科を受診してほしいですが、近くにない場合は一般的な内科や総合診療科でもかまいません。
検査は検便や血液検査、レントゲンやCTなどの画像検査が必要に応じて行われます。
治療では整腸剤が使われることが多く、細菌が原因の場合には抗生物質が併用されます。また、下痢を繰り返すことで脱水状態になっている場合には、点滴による補液が行われるでしょう。
どうしても病院に行けないときは、脱水に注意しながら様子を見ましょう。
下痢を起こす感染性胃腸炎は、自然に治るものが大半ですから、十分な水分が飲め、極めて衰弱しているような状態でなければ、症状が治まるのを待つのもよい方法です。
ただし、下痢は水分と一緒にナトリウムなどの電解質も失われますから、経口補水液のような電解質成分を含んだ水をたくさん摂るようにしてください。
食事が食べられるようなら、胃腸に負担のかからないお粥やうどん、油分や食物繊維の少ないものを少しずつ食べるようにしましょう。
もし、下痢と同時に嘔吐もみられて水分補給もままならないときや、発熱、血便などが現れたときは、自分で判断せず、必ず病院を受診して適切な治療を受けるようにしてください。
下痢止めは多くの種類のものが市販されていますが、自己判断で服用するのは大変危険です。下痢止めを飲むと、病原体であるウイルスや細菌の排出が遅れ、症状が長引くだけでなく脳炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
少しお腹がゆるいときに飲むぶんには大きな問題はありませんが、水のような下痢が続いているときは、服用を控えましょう。
下痢には様々な原因がありますが、自律神経の乱れによるものも少なくありません。大
腸などの消化管は副交感神経が盛んに働いていると運動が亢進してしまい、結果として下痢を引き起こすことがあるのです。
このような下痢では、体を温めることで副交感神経が更に強く働いて下痢が悪化してしまうこともありますので、下痢だからと言って安易にお腹を温めるのは良くありません。
普段から下痢や便秘を繰り返す人、定期的に下痢になる人、下痢以外の自律神経失調症状がある人などは自律神経の乱れによる下痢の可能性がありますので注意しましょう。
ただし、腹痛が強い下痢の場合はお腹を温めることで血行を良くなり、腹痛が緩和することもあります。様子を見ながら軽く温めてもいいでしょう。
「たかが下痢で病院に行くのもなぁ…」と考える人もいるかと思いますが、下痢が長引いたり、下痢がだんだん悪化したり、血が混じった下痢が出たりする場合は重篤な病気が原因になっているおそれがあります。
このような場合、病院で原因を特定して適切な治療を受ける必要があります。なるべく早く病院を受診しましょう。また、すぐに病院に行けないときは、こまめに水分補給し、脱水症状にならないように気をつけてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。