記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
ASD(自閉症スペクトラム障害)の患者には、子供のときにその特徴が現れているケースもありますが、その一方で、ASDと診断されることのないまま大人になるケースも見られます。今回は大人のASDについて解説します。
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder; ASD)の主な特徴は、社会的コミュニケーションと相互作用の問題です。ASDの人の中には症状が認められないまま成長する人もいます。その中には、ASDと診断されることで、レッテルを貼られ他人から期待されなくなることを恐れるばかり、医師に相談することを躊躇している人もいるでしょう。しかし、診断を受けることには利点もあります。
自分自身がASDの症状を深く理解することや、家族にASDを理解してもらうことは、どのようなサポートが必要かを決めることに役立ちます。また、診断を受けることで自閉症特有のサービスを利用しやすくなる場合や、手当を請求しやすくなることも利点といえるでしょう。このように 、ASDの診断を受ける利点はいくつかあるので、ASDかもしれないと思っている人は、医師に相談し、精神科医または臨床心理学者を紹介してもらいましょう。
適切な診断を受けている場合には、ASDの大人は自治体の自閉症支援サービスを利用できる可能性があります。 また、ASDの診断を受けることで、医療従事者から利用可能なケアやサポートサービスに関するより多くの情報とアドバイスを受けられます。 地域で利用可能なプログラムの例は以下のとおりです。
社会的状況で対応するのに役立ちます。
ゲームや運動などのレジャー活動に参加したり、グループで映画館や劇場に行きます。
食事や洗濯などの日常生活に支障がある場合に役立ちます。
ASDの子供に提供される治療がASDの大人に有効なこともあります。
ASDの大人が住む場所は様々です。宿泊を伴う施設で暮らすのがいい人もいれば、自宅で生活して在宅サービスを受けるのがいい人もいます。ASDの人の中には、完全に自立している人もいます。 ASDの大人が必要とする支援のレベルは、地方自治体の査定後に決定され、本人と介護者は同意します。
ASDの大人の多くは自分が生まれた家族のもとで暮らし続け、ずっと家族に世話をしてもらう人もいます。障害を持つ人の世話は大変であり、保護者に追加的支援が必要な場合もあります。 ASDの大人の世話をしている人の中には、レスパイトケアを検討することもあるでしょう。これは、家庭内または家庭外で提供される短期ケアであり、ASD患者の家族や介護者を日常の世話から解放し、休息をとれるようにくれるものです。
ASD患者は、自閉症を専門とする数多くのサービスを利用することが可能です。これらのサービスは、ASDと診断された成人に対し、独立した生活を営み、その人自身の能力やスキルに適した仕事を見つけることができるよう、サポートしてくれます。ASDと診断されることに不安はある人もいるでしょうが、早めに診断してもらい自分自身や家族の負担を少なくするようにしましょう。