記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/15 記事改定日: 2017/9/11
記事改定回数:2回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
風邪をきっかけに発症する子どもの中耳炎。
鼓膜の奥にウイルスが入り、うみがたまる症状です。数日で治るケースもあれば、通院が数ヶ月に及んだり、治ったと思ったのも束の間、再発したりもします。
子どもの中耳炎とはどのような病気で、どのように治療し、また、気をつけるべき点はどこでしょうか?
これから、その中耳炎について紹介します。
中耳炎は、子どもがよくかかる病気のひとつです。耳の痛みで子どもが泣き続けることもあり、親にとっては印象的な病気だと思います。特に2歳以下の子どもに多く、その後は成長するにつれて中耳炎の頻度は減ってきます。
中耳炎は多くの場合、上気道炎にかかった後、ウイルスや細菌が鼻の奥から耳管(鼻と耳をつなぐ通路)を通じて侵入して、感染することで発症します。
まず急性中耳炎になり、悪化して膿がたまると滲出性中耳炎と呼びます。数週間以上治らず長引いている場合は、慢性中耳炎と呼びます。
近年は急性中耳炎の治療は見直されてきています。以前でしたらすぐに抗生剤を使ったり、鼓膜切開をしたりしていましたが、それほど効果は高くなく、また急性中耳炎の多くは自然に治ることが分かってきました。現在は過剰な治療を避けるようになってきています。
まず喉の痛みや咳、鼻水、鼻づまりなど普通の風邪の症状があり、その後耳の痛みが起きます。悪化すると高熱や耳の聞こえが悪くなってきます。
乳幼児の場合は症状を伝えることが難しいです。高熱が出る、泣き止まない、不機嫌であるといった徴候を見つけたら、早めに医療機関に行くようにしましょう。
また中耳炎によって中耳に膿が溜まり、鼓膜が破れる(鼓膜穿孔)と、耳からじゅくじゅくとした液体がもれてくるようになります。鼓膜が破れると、高くなっていた中耳の圧力が少なくなるため、痛みが軽くなり、泣いていた子どもが泣き止むこともあります。
中耳炎は多くの場合、上気道炎にかかった後、ウイルスや細菌が鼻の奥から耳管(鼻と耳をつなぐ通路)を通じて侵入して、感染することで発症します。ウイルスと細菌が混合感染している場合が多いです。
特に中耳炎の原因菌として多いのは、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌です。
医師は、耳鏡と呼ばれる小さなスコープを使って感染をチェックします。鼓膜の様子や、鼓膜を通じて中耳を観察します。その他には感染している菌の種類を調べるための細菌検査や聴力検査、血液検査が行われることもあります。
中耳炎はを予防するために下記のようなことができます。
・肺炎球菌ワクチンの予防接種を受ける
・手を洗うことを習慣化させ、食べ物や飲み物の共有を避けさせる
・保育園や学校など集団生活での感染に気をつける
・受動喫煙を避ける
・最初の6ヶ月間は母乳で授乳し、少なくとも1年間、授乳で栄養をあたえる
・鼻水、鼻づまりがあるときは、自宅で吸引する。耳鼻科で吸引する処置をしてもらう
中耳炎は自然に治ることが多いため、まずは抗生剤や鼓膜切開をせずに様子をみることが多いです。
最近のガイドラインでは、軽症の場合は3日間抗生剤を投与せずに様子を見ます。それでも全然改善しない場合や、症状が強い場合には抗生剤を使います。まだ改善しない場合は、状況に応じて鼓膜切開も検討します。
上記が最も大切な治療ですが、それ以外に大切な治療として、
・鼻水を吸引する(自宅や耳鼻科で吸引できる)
・耳の痛みに対して、解熱鎮痛薬(カロナール®など)を使う
もあります。
単なる風邪だと思っていたら、いつの間にか中耳炎になって子どもが耳の痛みで泣き続けていた、ということが多数あります。子どもにとって中耳炎はごく身近な病気の一つです。子どもが熱を出した場合、特に2才未満で耳の痛みを訴えるようなら、早めに医師の診察を受けてください。