記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/18 記事改定日: 2018/5/9
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
痔は日本人に多いおしりのトラブルであり、どんな人にも起こる可能性がある身近な病気です。日常生活の習慣やクセが原因になっていますが、具体的にはどのようなことが要因なのでしょうか。
痔の悪化を防ぐには、原因になる習慣を早めに見なおすことが重要です。おしりのトラブル解決のためのヒントにしてください。
痔とは肛門の周りや直腸下部の静脈が膨らみ(静脈瘤)場合によっては炎症を起こしている状態を指します。
便や便座、または排便後の便器に鮮血が見られたり、肛門に痛みやかゆみ、不快感を感じたり、痛みを伴う腫れや血栓(血の塊)ができる・・・などの症状が現れます。
肛門周囲の皮膚の下に見られる外痔核と直腸下部にできやすい内痔核に分かれ、症状は種類によって異なります。いずれの場合も命を脅かすようなことはなく、通常数日以内に症状がなくなりますし、中には症状が出ない人もいます。ただし、内痔核が重度に脱出した場合には治療が必要になります。
痔の主な原因となる「静脈瘤」を引き起こす要因には以下のものがあります。
これらのようなことが原因で、肛門とその近辺における血管の圧力上昇が起こり、直腸にある血管が膨らんだり炎症を起こしてしまう可能性があるのです。
また、妊娠中に腹部が圧迫されることによって肛門直腸や肛門の静脈が拡大し、痔が発症することがあります。しかし、妊娠に起因する痔はほとんどの場合出産後にはなくなります。
痔は肛門周囲の血流が低下することで生じることがあります。
過度なストレスを感じている状態では、交感神経が活発になり血管が収縮することで肛門周囲の血流が悪くなり、痔の発症や悪化を引き起こすことが知られています。
また、ストレスはステロイドホルモンの分泌を促し、免疫力の低下を引き起こします。このため、炎症を起こしやすく、排便時にできたごく小さな肛門周囲の傷が治りにくくなるため、痔が発症・悪化しやすくなる可能性があります。
最近では、シャワートイレが普及しており、排便後には必ずシャワートイレで肛門部を洗浄するという人も多いでしょう。特に痔がある人は、排便後に肛門部を清潔に保つことで症状を緩和させる効果が期待できます。
しかし、過度の洗浄や水圧が強すぎるシャワーを使用すると、逆に肛門周囲の皮膚を傷つけることもあり、痔の発症原因となる可能性もあります。また、軽度な痔に過度な刺激が加わることで痔を悪化させてしまうこともあります。
シャワートイレは痔の改善に役立つものですが、このように痔の発症・悪化の原因となることもありますので適切な使用を心がけましょう。
痔の多くは生活習慣の改善によって改善するといわれています。その中でも、食生活の改善は非常に重要とされていて、食事内容に注意するだけで症状は大幅に改善することが期待できるのです。
便秘は便が硬くなりやすくなるので、痔の大敵です。便通を整えて柔らかい便にするためには三食規則正しく、十分な水分と食物繊維が豊富なメニューを摂るようにしましょう。肉などのようなたんぱく質と油分の多い食事や野菜の少ない食事は便秘になりやすいので避けるように心がけてください。
また、アルコールや唐がらしなどの香辛料は痔を刺激し、症状を悪化させることがありますので、なるべく控えた方が無難です。
痔は肛門の病気の中では一般的なものですが、肛門のトラブルは痔以外のものでも起こります。
たとえば内痔核にも見られる「直腸からの出血」は、クローン病や潰瘍性大腸炎、大腸癌のような疾患の徴候の可能性もあります。
症状が出てから1週間以上が経過しても回復の兆しが見えない場合は、医師に診断してもらったほうが良いでしょう。
痔には出血や痛み、腫れなど様々な症状が現れますが、痔と似たような症状を引き起こす病気は多々あります。痔と間違えやすい病気の中には、生命に関わるような重大な病気もあり、注意が必要です。次のような症状が長く続く場合には、痔以外の病気の可能性も考えて、放置せずに必ず病院を受診しましょう。
痔の原因は様々ありますが、排便習慣や生活習慣、食習慣などの影響が大きく関係しています。思い当たる習慣やクセがある場合は、早めに見なおして予防するようにしましょう。
また、おしりからの出血などの症状は、痔以外の病気が隠れていることがあります。おしりのトラブルは放置せず、早めに病院で検査してもらいましょう。