記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/23
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
糖尿病は血液中の糖(グルコース)の量が高すぎる糖代謝異常のことですが、妊娠によって高血糖になることを「妊娠糖尿病」といいます。妊娠前から糖尿病と診断されている場合や、妊娠後に糖尿病と診断された場合は、妊娠糖尿病には含めません。
妊娠糖尿病は、妊娠時にのみ発症し、赤ちゃんが生まれたら元に戻ります。妊婦の約7~9%が妊娠糖尿病を発症するとされています。
妊娠中に高血糖になると、母体や胎児に以下のようなさまざまな合併症が起こります。
母体:妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症、腎症、流産など
胎児:巨大児や心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡など
妊娠中は、血糖値をより頻繁にチェックするようにしてください。血糖値が高いときは、ブドウ糖負荷試験で診断します。妊娠初期に血糖値は正常範囲であっても妊娠が進むにつれて血糖を下げるインスリンが効きにくくなるため、妊娠中期(24〜28週)にもう一度血糖値をチェックする必要があります。
また、肥満や糖尿病の家族歴、高年齢妊娠、巨大児出産の既往歴などは妊娠糖尿病になる危険性が高いので注意が必要です。
妊娠中の糖尿病管理の詳細は、日本糖尿病・妊娠学会の診断基準を参照してください。
(参考:http://www.dm-net.co.jp/jsdp/information/024273.php)
特に妊娠中は重度の目の障害のリスクが高いため、糖尿病性網膜症を含む糖尿病性眼疾患の徴候をみつけるために、妊娠中に糖尿病治療を受けているときは目のスクリーニング検査は重要です。特に糖尿病性網膜症は早期に発見された場合は治療可能です。
出産後2〜4時間後は、血糖値が低すぎるかどうかを確認するために踵(かかと)に針を刺して血液検査をします。新生児の血糖値を安全なレベルに保つために生後30分以内にできるだけ早く授乳を開始してください。血糖値を安全なレベルに保てないときは、新生児には血糖値を上げるための点滴が施されます。
妊娠によって女性のからだは大きく変化します。無事に出産し、健康な赤ちゃんを産むために今まで以上に健康状態に気をつけることが重要です。妊娠糖尿病で治療を受けても、出産後はすべての治療を中止することができます。退院時と出産後の1カ月健診で血糖値をチェックする検査を受けてください。また、体重を落とすためのダイエットや運動についてもアドバイスを受けることをおすすめします。お母さんの健康は、赤ちゃんの健康につながります。