記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/10 記事改定日: 2018/5/17
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食中毒は外食でも家庭の食事でも起きる可能性がありますが、なぜ食中毒は引き起こされるのでしょうか?この記事では、食中毒の症状と対処法、原因について説明しています。
食中毒は誰にでも起こる可能性があるので、いざというときのためにきちんと理解しておきましょう。
食中毒とは、有害な細菌やウイルス、寄生虫などが含まれた食べ物や飲み物を、食べたり飲んだりしたことで発生する感染症もしくは胃腸の炎症です。ほとんどの食中毒は2~3日程度で緩和する急性で軽度のものなので、病院で治療を受けなくても回復します。
しかし、重度の食中毒の場合は、脱水症状や溶血性尿毒症症候群といった深刻な合併症につながることがあるので注意が必要です。
食中毒で現れる症状や重症度は、細菌の種類や数、患者の免疫力によって多少異なりますが、一般的には次のような症状が現れます。
食中毒の多くは下痢や嘔吐などの胃腸炎症状を引き起こします。このため、十分な水分が摂れない場合には脱水状態となり頭痛を生じることがあります。
脱水状態になると、血液量が減少するため、より多くの血流を維持しようとして全身の血管が広がります。頭の血管は周囲に多くの神経が張り巡らされており、血管が拡張することで神経が刺激されて頭痛が生じるのです。
つまり食中毒の病原体自体が頭痛を引き起こすのではなく、食中毒の胃腸症状によって脱水状態となるとその身体反応として頭痛が引き起こされるのです。
症状は細菌で汚染された食品を食べてから1~2日後に始まることがほとんどですが、細菌の潜伏期間によっては食後数時間ですぐ症状が現れたり、逆に数週間経ってから症状が現れたりする場合もあります。
ほとんどの食中毒は、有害な細菌やウイルスを含んだ食品や飲み物を摂取したことが原因で引き起こされます。食中毒を引き起こす細菌やウイルスを含んでいる可能性が高い食品には以下のものがあります。
食中毒を引き起こす食品は様々なものがあります。
腸管出血性大腸菌やサルモネラ、カンピロバクターなどは十分に加熱していない肉類が原因となることが多く、特にひき肉を使用した料理では中心部までしっかりと加熱されていないと食中毒を起こす可能性が高くなります。また、これらの原因菌は、家畜の糞を利用したたい肥にも含まれており、そのたい肥を利用して栽培した野菜が汚染されていることもあります。このため、生野菜のサラダなどから感染することも珍しくはありません。
一方、腸炎ビブリオやノロウイルスは魚介類が原因になることが多く、十分に加熱しないで生の状態で食べると感染する可能性が高くなります。
また、卵や牛乳を始めとした乳製品には家畜の便を介して病原体が付着している可能性があるため、適切な洗浄や加熱、殺菌が必要になります。
その他、最も潜伏期間が短く重篤な胃腸症状を引き起こす黄色ブドウ球菌による食中毒は元は食品に付着しているものではなく化膿した傷がある手などを介して食品に付着し、それを口にすることで感染します。原因となるのは素手で握ったおにぎりが有名です。
食中毒は症状の重症度はそれぞれ異なりますが、基本的には下痢や嘔吐、発熱などの胃腸炎症状が引き起こされます。
細菌性の場合にはそれに適した抗生物質を服用すると回復が早くなりますが、基本的には症状を抑えるための薬は服用せず、症状が治まるのを待つことになります。また、腸管出血性大腸菌などのように抗生物質を使用すると重篤な合併症の発症を促すものもあります。
一般的には、下痢や嘔吐で失われた水分を補充するためにいつもより多めの水分を摂り、消化の良いものを食べて胃腸を休ませれば一週間程度で回復するものがほとんどです。
しかし、吐き気のために十分な水分が摂れないようなときや、下痢だけではなく血便も生じるような場合には病院を受診して点滴などの適切な処置を受けるようにしましょう。
また、下痢止めや吐き気止めなどの市販薬は、細菌やウイルスの排出を妨げ、治りを遅らせることもありますので自己判断で服用するのは控えた方がよいでしょう。
食中毒を引き起こす原因菌は、様々なタイミングで食品を汚染します。以下で、汚染のタイビングや感染防止のための対処法を紹介していきます。
食中毒を引き起こす細菌は、食品を購入した時点ですでに存在している場合があります。例えば大腸菌は動物の排泄物や汚水に含まれていることがあるため、牛や豚の育成環境によっては動物に感染し、加工後も細菌を持った状態で私たちの食卓に運ばれる可能性があります。こうした汚染は育成環境だけでなく、屠殺、保存、運搬といった各工程で起きる恐れもあります。
食中毒菌がついている食品が調理器具に触れた後、調理器具をよく洗わずにほかの食材にも使いまわしてしまうと、細菌が食品から食品へと広がる二次感染が起きることがあります。
まな板に生肉を乗せて包丁で切った後、洗わずにそのまな板や包丁で生野菜を切ってしまうといったことは絶対にやめましょう。野菜や果物など生で食べることの多い食品に食中毒菌がつくと、知らずにそのまま食べてしまい、食中毒に感染するリスクが高くなります。
食品を十分加熱しなかったり、冷蔵庫で保存しなかったりすると、食中毒の原因菌は急激に増殖します(例えば、O157は室温でも15~20分で2倍に増えるといわれています)。冷蔵や冷凍の必要な食品は室温で放置せず、購入後すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。また加熱調理が必要な食品は十分火を通してください。
食中毒を発症している人が触れた食品を食べた場合も、食中毒が起きる可能性があります。また、ノロウイルスなどの特定のウイルスは食品を介さなくても、感染者と接触したり、ドアノブなどのように「感染者が触ったもの」の表面を触れることで感染することもあります。
食中毒の原因菌は、製造工程だけでなく調理や食品保存の際にも食べ物に付着し、増殖する危険性があります。食中毒の多くは軽度のものではありますが、食後に嘔吐や下痢、発熱といった症状が見られたら、重症化する前に早めに病院を受診しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
【 厚生労働省ホームページの情報を編集して作成 】
http://www1.mhlw.go.jp/houdou/0903/h0331-1.html