記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/8/10
記事監修医師
前田 裕斗 先生
お腹の鈍痛や腰の痛みなど、多くの女性が生理(医学的には月経というのが一般的です)痛に頭を悩ませています。ただ、そもそも生理痛はなぜ起きるのでしょうか?原因を知ることを通じて、適切な対処法を学んでいきましょう。
生理痛のメカニズムを理解するには、排卵時に女性の体内で起きていることを知る必要があります。
女性の卵巣では、毎月排卵が終わると2種の女性ホルモン―「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」―が分泌されるのですが、このうちイライラなどの精神症状も含め、多くの症状はプロゲステロンの作用によって引き起こされます。また、妊娠しなかった場合は子宮内膜から分泌される「プロスタグランディン」という局所ホルモンが増加し、子宮を収縮させて出血を促します。この子宮の動きが腹痛や腰痛、吐き気を引き起こす原因と考えられています。
生理痛のほとんどは、上記ホルモンの働きによるものです。ただし、非常に症状が強い場合、その背景に子宮内膜症などの病気が隠れていることがあります。子宮内膜症は20代や30代の若い女性に多く、不妊にもつながるため注意が必要です。
生理時の主な症状は腹部の鈍痛や腰痛です。その他、悪心や嘔吐、貧血、頭痛、食欲不振などが起こる人も少なくありません。
生理時の腹痛は一般的な症状ですが、腹痛があまりにも酷く、日常生活に支障をきたしている場合(仕事ができない、鎮痛薬を飲まずに過ごせないなど)は、「月経困難症」と診断されます。
生理痛を和らげる方法としては、以下のものがあります。
イブプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェンなどの市販の鎮痛薬を服用することで、生理痛の痛みを軽減させることができます。これらの鎮痛薬を内服する上で大切なことは、「痛くなる前に飲む」ことです。前述の「プロスタグランディン」という局所ホルモンが分泌される前に先制攻撃として鎮痛薬を内服しその分泌を抑えることで、より鎮痛効果を得ることができます。
子宮や卵巣に子宮筋腫や内膜症などがないのに引き起こされる強い生理痛(「機能性月経困難症」)は、子宮内膜から分泌されるプロスタグランディンの作用が原因です。つまり、この原因となるプロスタグランディンを分泌する子宮内膜を薄く保つ薬―低用量ピルを服用することで、生理痛が緩和されます。低用量ピルは効果的で安全性も高いため、処方を希望する方は婦人科でぜひ相談してみてください。
生理前は骨盤の血流の流れがうっ滯し、生理痛が悪化しやすくなります。これを改善するためには、適度な運動が有効とされています。生理の1週間くらい前からジョギング、ウォーキング、ヨガなどを行ってみるといいでしょう。全身ストレッチでも、生理痛を軽減する効果が期待できます。
冷えによって生理痛は悪化しやすくなります。温かいお風呂で体を温めましょう。
下記のような症状が見られる場合は、何らかの病気の可能性があるため婦人科を受診することをおすすめします。
・生理痛が年々酷くなっている
・生理が始まってから数日経っても痛みが緩和しない
・夜用ナプキンを一晩で何回も交換するような異常な出血量が続く
・通常の月経周期とは異なるタイミングで出る不正性器出血
・鎮痛薬でも痛みが消えない
生理痛は女性にとって一般的な症状ですが、あまりにも痛みが酷かったり、市販の鎮痛薬を飲んでも痛みが緩和しない場合は、婦人科を受診しましょう。詳しい検査を受けることが、適切な治療への第一歩となります。
【出典: 厚生労働省運営「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」ホームページを編集して作成 http://w-health.jp/monthly/algomenorrhea/】