記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/2
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
歯ぎしりは一時的なもので、気持ちが満たされないストレスとして起こることがあります。また、噛み合わせの調整としてみられる歯ぎしりは、年齢とともに消失します。そのまま様子をみてもいてよいと思いますが子どもの歯ぎしりは、歯並びに問題があったり、歯が過度にすり減ったり、あごを痛がったりすることがあります。早めに小児歯科医に相談してください。
歯ぎしりとは、歯を意識的または無意識にきしませることで、子どもにみられることが多く、睡眠中に聞いたことがあるかもしれません。子どもの約20〜30%が睡眠中に歯ぎしりをしており、不安になると日中でも歯ぎしりをすることがあります。ほとんどの子どもは、永久歯が生える頃には、歯ぎしりをやめるようです。
歯ぎしりは、歯や顎(あご)に関連しています。特に深刻な症状はありませんが、 歯が摩耗したり欠けたりすることがあります。歯のエナメル質が削られることがあるので、治療せずに放置すると、将来、知覚過敏(ちかくかびん)などの症状が出てきます。
歯ぎしりをする子どもたちは、特に目を覚ましたときに、顎が痛いとよくいいます。また頭痛、耳痛、および顔面の痛みにつながることがあり、 過度の歯ぎしりは顎関節症(がくかんせつしょう;TMJ)を起こすことがあります。
歯ぎしりはまた、以下のような精神的な症状に結びつくこともあります。
・不安
・ストレス
・緊張
・うつ病
・摂食障害
子どもが注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断されたり、脳性麻痺などの障害をかかえていると歯ぎしりをする可能性が高くなります。 ある特定の薬でも歯ぎしりを起こすことがあります。 一部の子どもでは、歯の位置が正しくないために発生します。
歯ぎしりの徴候を見逃すことはないでしょう。 家族が歯ぎしりの音に気づき、医師は磨耗した歯やエナメル質に気づくことで診断されます。また、咀嚼(そしゃく)中の痛みや顔、口の中の痛みを訴えるときに、歯ぎしりと診断することもあります。
就寝時に落ち着いた環境をつくることが、歯ぎしりを防ぐ最初のステップです。 子どもをリラックスさせるには、以下の方法を試してみてください。
・寝る数時間前には、テレビや携帯電話、タブレットPCなどの電子機器を触らない
・落ち着いた音楽を聴かせる
・お風呂でからだを温める
・読書や読み聞かせをする
治療は、夜間にマウスピース(マウスガード)を着用させることから始めます。 マウスガードは子どもの歯に合わせて特別に作られ、スポーツ選手が使用するものに似ています。 マウスガードを装着すると上下の歯が接触することなく、歯ぎしりがなくなります。 歯の位置がずれているために歯ぎしりが発生しているときは、歯科医の診察を受けてください。
ストレスが原因になっているときは精神的に対処することで、症状を緩和することもできます。 たとえば学校や家庭について両親と子どもが話し合うことで、心配や不安が減少するかもしれません。 改善の兆しがないとき、または精神的な問題が深刻であるときは精神科医または小児精神科医に相談して、その後の治療法を検討してください。
歯ぎしりは自分では自覚のない症状ですが、ほとんどの人が日常のストレスの発散運動としているといわれています。子どもだけでなく家族全員が健康な口腔状態を保ち、安らかに眠れるように早めに対処したいですね。