記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/10 記事改定日: 2018/3/13
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「牡蠣フライや生牡蠣が大好物!」という方は少なくないと思いますが、そんな牡蠣好きにとっての大きな懸念点が「ノロウイルス」ではないでしょうか。今回の記事では、ノロウイルスにかからないための牡蠣の加熱の目安や安全な調理方法、予防法などについてご紹介していきます。
牡蠣が含んでいる可能性のあるノロウイルスは、食品の中心部を85〜90℃で90秒間以上の加熱をすれば、感染性がなくなると言われています。 牡蠣には色々な食べ方がありますが、まず生の牡蠣は要注意です。蒸し牡蠣や湯通しした牡蠣に関しても、まだウイルスが残っている危険性があります。強火で5分、中火で4分、合計9分間は蒸して加熱するようにしてください。
またカキフライは「油で揚げているから大丈夫」と思っている方も少なくないですが、調理時間によっては芯まで熱が通っていないこともあります。目安として、カキフライの場合は5分以上加熱するようにしてください。
そして、電子レンジで加熱した場合についてですが、加熱ムラがあるとノロウイルスが残っている恐れがあります。電子レンジの加熱が期待できるのは、食品の表面から数cm程度であり、奥までマイクロ波が入りこめない場合、加熱にムラができてしまいます。内臓部分まで十分に加熱することが大切です(十分加熱すると身が縮み、ウイルスがいる茶色や黒色の内臓部分が固まります)。一つの目安として、800Wの電子レンジで6分は加熱するようにしてください。
ノロウイルスは、牡蠣などの二枚貝の内臓に存在しているため、表面を洗うだけで除去できるものではありません。また、牡蠣を殻から出したときに貝についている水が飛散し、包丁やまな板などの調理器具がウイルスに汚染される恐れがあります。包丁やまな板は洗剤などでしっかり洗い、熱湯消毒するか、食器用漂白剤を250倍に希釈したものに浸けて消毒を行ってください。
しっかり煮えていない状態の牡蠣を食べれば、鍋であってもノロウイルスに感染することはあります。牡蠣鍋の作り方のコツとして、牡蠣以外の食材(野菜など)を先に煮てください。そして沸騰したお湯の中に、最後に牡蠣を投入し、8分間加熱します(大きい牡蠣であれば9分間)。
なお、鍋を煮ている途中で具材を足す方もいますが、鍋の温度が下がって牡蠣の加熱が不十分になる恐れがあるため、途中で具材を足すのはやめてください。
牡蠣による食中毒の多くは、牡蠣が保有するノロウイルスによって引き起こされます。ノロウイルスとは、牡蠣などの二枚貝や不衛生な下水に含まれている可能性のあるウイルスで、牡蠣が旬の冬季に猛威をふるいます。ノロウイルスの主な感染ルートは以下のとおりです。
1.患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や嘔吐物からの感染
2.家庭や共同生活施設などでの飛沫感染や接触感染
ノロウイルスは非常に高い感染力を持つため、学校や職場などで続々と感染者が増えていく傾向にあります。
3.ノロウイルスに感染した人が扱った食品を食べた
4.ノロウイルスを保有する二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた
5.ノロウイルスに汚染された井戸水などを消毒不十分で摂取した
ノロウイルス食中毒は非常に感染力の高いウイルスではありますが、適切に対応すれば感染を最小限に抑えることができます。以下の予防法を実践してください。
調理を行う前(食事を提供する前も)、食事の前は必ず手を洗ってください。手洗いは、手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。常に爪を短く切って、指輪などもはずし、石けんを十分泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。温水による流水で十分すすぎを行い、清潔なタオルやペーパータオルで拭いてください。
一般にウイルスは熱に弱く、加熱処理はウイルスの活性を失わせる手段として有効です。先述の通り、牡蠣などの二枚貝は、中心部が85℃~90℃で90秒以上加熱するようにしましょう。
調理時と同様、感染者の汚物処理を行った後は、たとえ手袋をして直接触れないようにしていても、必ず手洗いを行いましょう。
なお、排出物が床に飛び散ってしまった場合は、使い捨てのエプロン、マスク、手袋を着用し、汚物中のウイルスが飛び散らないように糞便、嘔吐物をペーパータオルなど(市販される凝固剤等を使用してもよいです)で静かに拭き取ってください。拭き取った後は次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)で浸すように床を拭き取り、水拭きをします。おむつは、速やかに閉じて糞便を包み込んでください。この際使用したペーパータオルはビニール袋に密閉して廃棄しましょう。
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入ると感染することがあります。嘔吐物や糞便は乾燥しないうちに床に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出ていくよう、十分に換気を行うことが大切です。
牡蠣によるノロウイルスの症状は、激しい吐き気や嘔吐、腹部のけいれん、下痢、発熱、頭痛などです。牡蠣を食べてから12~48時間の潜伏期間を経て、これらの症状を発症します。症状は1~3日で改善する場合がほとんどです。
嘔吐や下痢等の症状が出ている場合は、水分をたくさん摂取して脱水症状を起こさないようにすることが重要です。小さな子供や高齢者は特に脱水症状に陥る危険性が高いので注意してください。薬局などで購入できる経口補水液を飲むことで、脱水症のリスクを軽減させることができます。
ノロウイルスは小さい子供や高齢者など、免疫力の弱い人が感染した場合、重症化しやすい傾向にあります。体調がすぐれないときはノロウイルスに感染しやすくなるだけでなく、症状が重くなる恐れもあるので、体調不良の間は牡蠣を食べるのを控えることをおすすめします。