ダウン症の赤ちゃんの特徴と出生前診断について

2017/2/2 記事改定日: 2018/3/20
記事改定回数:1回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

ダウン症は生まれつき染色体が1本多いために起こる先天的な症状です。ダウン症を抱えて生まれてきた赤ちゃんは、顔や体に特徴があったり、免疫力が弱いために病気にかかりやすかったり、心臓や目などに先天的な異常があったりします。この記事では、ダウン症の赤ちゃんにみられる症状とともに、出生前にダウン症を抱えているかどうかを診断する方法についてまとめました。

ダウン症の赤ちゃんの特徴とは?

ダウン症の正式名称は、発見者であるダウン医師の名前にちなんで「ダウン症候群」といいます。
本来、細胞内に46本あるはずの染色体が47本あるのが特徴で、21番目の染色体が1本多く存在しているため、「21トリソミー」とも呼ばれます。

ダウン症は、人間の細胞に存在する染色体の数の異常によって起こります。この染色体異常はランダムに発生するため、誰にでも起こる可能性があります。

ダウン症の赤ちゃんには、以下のような身体的な特徴があります。

顔の特徴
  • 頭が小さい
  • 後頭部が平らになっている
  • 顔が平坦である
  • 目じりがつり上がっている
  • 目と目の間隔があいている
  • 耳が小さい
  • 鼻が小さい
  • 唇が小さい
体の特徴
  • 指が短い
  • 体が小さい
  • 体が柔らかい

また、ダウン症の赤ちゃんは心臓や目、耳に先天的な異常があることが多く、個人差はあるものの、健康な赤ちゃんより知的な発達が遅れる場合も多くみられます。

そのほか、ダウン症の赤ちゃんは筋肉量が少ないため

  • 母乳やミルクをうまく吸うことができない
  • 空腹に気づきにくい
  • 転がったり、起き上がったり、歩くのが難しい

などの特徴もあります。

ダウン症の赤ちゃんにみられる合併症

ダウン症の赤ちゃんには、以下のような合併症がみられることがあります。

  • 目の異常(先天性白内障、近視、遠視、乱視、斜視など)
  • 難聴
  • 心臓疾患
  • 嚥下(えんげ)困難
  • 腸閉塞

ダウン症の赤ちゃんに見られる、育児中の困りごととは?

ダウン症は様々な合併症を引き起こしやすいことから、育児中もさまざまなトラブルを抱えやすくなります。

ダウン症の特徴的な症状として、筋緊張の低下や関節の弛緩などが挙げられますが、これらの症状は

  • 抱っこしにくい
  • 転倒などで、ケガをしやすい

といったトラブルにつながります。
また、一般的にダウン症児は発育が遅れがちになるため、ご家族が不安を抱く機会が増えるかもしれません。

そして、ダウン症は先天性の心疾患や白血病などの合併症を引き起こしやすいため、風邪をひきやすく体調を崩しがちです。また、視力や聴力に異常を来すことも多いため、定期的な検査や生活上のトレーニングが必要となります。

ダウン症の出生前診断について

赤ちゃんがダウン症を抱えているかどうかは、出生前に調べることができます。
方法としては「ダウン症の確率が高いか調べる検査」と「ダウン症の確定診断する検査」の2種類があることを理解しておきましょう。

なぜ検査方法が2種類あるかというと、確定診断のための検査は破水や流産のリスクを伴うからです。
リスクを避けるために、まずダウン症の可能性が高いかどうかを調べる検査を行い、陽性と出た場合に確定診断のための検査を行うのが一般的です。

もちろん診断を急ぐ場合など、その他の状況に応じてすぐに確定診断のための検査を行う場合もあります。

詳しい検査内容は、以下のようになっています。

ダウン症の確率が高いか調べる検査

エコー検査

妊娠10~15週頃になると、エコー検査でお腹の赤ちゃんのうなじをチェックして、ダウン症を含む、染色体異常の可能性が高いかどうかを調べることができます。
もし、うなじのあたりに分厚い皮のようなものがみられたら、ダウン症の可能性があります。

ただ、赤ちゃんの向きや母体の状況によって確認が難しいこともあり、他の染色体異常や、何もない人でも異常が出ることがあります。
エコー検査だけではダウン症と確定診断することはできません。

母体血清マーカーテスト

母体血清マーカーテストは、妊娠15~21週頃に受けられる検査です。
妊婦さんの血液中の成分を調べることで、胎児に染色体異常があるかどうかを診断します。

他の検査との組み合わせにより診断の確率が上げることはできますが、母体血清マーカーテストで確定診断することはできません。

新型出生前診断(NIPT)

いわゆるNIPTと呼ばれる検査で、この検査も妊婦さんの血液を調べて検査します。

妊婦さんの血液中には一部胎児のDNAが混ざっていると考えられており、このDNAを増幅し、その量を全染色体で比較することで検査していきます。
(例えば21番染色体が3本あれば通常よりも多い量が増幅されます。)

上2つの検査と比較すると診断できる確率が高いですが、年齢が若い場合は偽陽性(本当はダウン症でないのにダウン症陽性と検査に出る)が出ることもあり、日本では高齢や染色体異常のあるカップルにのみ推奨されています。

この検査もあくまで確率を判断する検査で、確定診断はできません。

確定診断のための検査

確定診断のための検査は、赤ちゃんの組織を直接採取して染色体を調べるため、陽性と出ればダウン症と確定診断することができます。

羊水検査

羊水検査は、腹部に注射器を刺して羊水を採取する検査方法で、妊娠15~18週に受けることができます。

ただし、注射器を腹部にさすため、わずかではありますが破水や流産のリスクがあります。

絨毛検査

絨毛検査は、腹部に針を刺して胎盤になる前の組織を採取する検査で、妊娠9~14週と早い時期に検査することができるものです。
この検査も腹部に針を刺すため、こちらも羊水検査と同様に破水や流産リスクがあります。

おわりに:ダウン症の赤ちゃんは病気にかかりやすい。しっかり守ってあげよう

ダウン症を抱えて生まれてきた赤ちゃんは、健康な赤ちゃんと比べて免疫力が弱かったり、先天的に心臓などに異常がみられるため、病気にかかりやすいことが多いです。

赤ちゃんが少しでも元気に過ごせるように、周囲の人の協力も借りながら、できる限りケアやサポートをしてあげましょう。

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