ストレス社会の現代病~心的外傷後ストレス障害(PTSD)

2017/2/1

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

精神的衝撃を受ける心的外傷(トラウマ)体験から起こる心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、非常に強いストレス、恐怖または悲惨なことがらによって起こされる不安障害です。

悪夢やフラッシュバックによってトラウマになった出来事を繰り返し思い出し、孤立感、過敏感、罪悪感、不眠症などのために集中することが困難となり、日常生活に重大な影響を及ぼします。ここでは、PTSDについて解説します。

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PTSDはどんなことで発症しますか?

PTSDは、トラウマ的経験を有する約3人に1人に影響を及ぼすとされていますが、一部の人がなぜ症状を発症し、ほかの人がなぜ発症しないかという理由は定かではありません。PTSDを起こす可能性があるものには、次のようなものがあります。
・重大な交通事故
・性的暴力、強姦、強盗など暴力的な虐待
・長期にわたる性的虐待、暴力、または深刻な虐待(ネグレクト)
・暴力的な死を目撃する
・戦争、人質、テロ攻撃
・洪水、地震、津波などの自然災害
PTSDは、このような酷い出来事を体験した直後、または数週間から数カ月さらには数年後に発症することがあり、突然怖い体験を思い出す、不安や緊張が続く、めまいや頭痛がある、眠れないなどの症状がみられます。

複雑性PTSDとは?

深刻なネグレクト、虐待、暴力などのトラウマ的状況を繰り返し経験する人は、複雑性PTSDと診断されることがあります。PTSDと同様の症状を起こし、トラウマ的状況が何年経過してもなおらないことがあります。
複雑性PTSDは、子どもの発達に影響を与える可能性があり、重症化することがあります。

PTSDの可能性

トラウマ的出来事の後は、だれでも考えが混乱します。ほとんどの人は数週間で自然に改善していくでしょう。しかし、その経験の後4週間たっても問題を抱えているまたは症状がある場合は、医師に相談する必要があります。

PTSDの治療法

PTSDは、トラウマ的出来事の後から数年経っていてもうまく治療することができます。

症状の重篤度、トラウマ的出来事の後どれぐらい後に症状があらわれたかによっても治療法が変わりますが、以下のような治療があります。
・経過観察 (症状が改善されているか、または治療なしで悪化しているかどうかを監視する)
・持続エクスポージャー療法(トラウマとなった場面をイメージしたり、これまで避けていた記憶を呼び起こすきっかけにあえて身を置くようにする)
・認知行動療法(CBT)
・眼球運動脱感作療法(EMDR)
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)をはじめとする抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬抗うつ薬

おわりに:一人で抱え込まないことが大切

とても悲しくショックな出来事は、ほとんどの人が人生で一度は経験のするものですが、PTSDはよりショックの大きい状況に立ち会った場合発症するものです。PTSDを避けるためには、家族や友人、パートナーなど周囲の人に話を聞いてもらい心の拠り所をつくることが大切です。一人で抱え込まないようにしましょう。そして、この記事でご自身に思い当たる箇所がある場合は、速やかに医師に診てもらいましょう。

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