記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士 呼吸器内科専門医
山本 康博 先生
2017/8/23 記事改定日: 2019/10/15
記事改定回数:2回
寒冷前線と温暖前線が停滞しがちな梅雨どきや台風が接近しているとき、飛行機に乗っているときなど・・・気圧が低い状態になると、頭痛が起こるという方は少なくありません。
今回は気圧が頭痛を引き起こす原因や対処法を紹介します。
気圧の変化の中でも頭痛が起こりやすいのは気圧が低下する「低気圧」のときで、その頭痛の多くは脳の血管が拡張するために起こる「片頭痛」です。
気圧が低くなると頭痛が起こる主な原因は、気圧の低下によって空気中の酸素濃度が低くなり、以下のようなしくみによって頭痛が引き起こされると考えられています。
低気圧そのものを防ぐことができないので、低気圧時の頭痛を完全になくすことはできません。
しかし、頭痛の要因を防ぐことで対処することは可能です。
以下の点に気をつけ、低気圧による頭痛を和らげましょう。
空腹になると血糖値が下がって片頭痛が起こりやすくなってしまいます。1日3回、きちんと食事を摂って血糖値が極端に低くならないように気をつけましょう。
低気圧時に多い湿気が多くジメジメとした環境では食欲があまりないということもあるでしょうが、食欲が無ければ、キャラメルやハチミツ入り牛乳などで糖分を補給しましょう。
体を冷やさないことも大切なポイントです。
蒸し蒸しした日や暑い日は冷房をつけたいところですが、冷房はしばしば頭痛の原因になります。
さらに、低気圧下では血圧が下がる傾向があるので血行が悪くなりやすく、血行不良による首や肩の凝りを引き起こして緊張型頭痛を招いてしまう可能性もあります。
設定温度に気をつけながら冷房を効かせすぎないように注意し、蒸し暑さは除湿モードも使いながら対処していきましょう。
上の項目でも説明したように、気圧の低下による頭痛の多くは脳の血管が拡張するために起こる片頭痛です。対処法は一般的な片頭痛と同じで問題ありません。
広がった血管付近を冷やすことで、血流が穏やかになって痛みが和らぎます。
また、片頭痛時は光や音にも敏感に反応してしまうため、できるだけ暗く静かな場所で安静にして過ごすようにしましょう。
飛行機頭痛は飛行機に搭乗しているときに起こる頭痛です。
突き刺すような、または殴られたようなと例えられるくらい激しい痛みが、片側の眼の奥から前頭部にかけて突然あらわれるという特徴があります。
飛行機頭痛は飛行機の上昇・下降に伴う機内の気圧の変化が関係しており、主に下降している時にあらわれます。個人差はありますが、頭痛は発症から約30分以内に改善することが多いです。
はっきりとした原因はわかっていませんが、飛行機頭痛には副鼻腔が関係していると考えられています。副鼻腔は鼻腔に隣接した骨の中にある空洞で、前頭洞、篩骨洞(シコツ洞)、上顎洞、蝶形骨洞の4つがあります。
飛行機が離陸すると次第に機内の気圧が下がり始め、上空にいる間は機内も副鼻腔内も気圧が低い状態になっています。そして、飛行機が着陸に向けて下降するとともに機内の気圧は上昇します。
このとき、通常は外気の変化に応じて副鼻腔内の気圧も上昇しますが、鼻炎や副鼻腔炎などがある場合は気圧の上昇がスムーズに行なわれません。
そのため、気圧の低い状態の副鼻腔に空気が急に入りこみ、その部分の感覚神経が刺激されて激しい痛みを発するのではないかと考えられます。
飛行機頭痛を予防するには下記のような方法を試してみましょう。
ただし、風邪や花粉症による鼻づまりがあるときは耳抜きをしにくいため、離陸前に風邪薬や鼻炎予防薬などを服用しておくと安心です。
気圧が関係する頭痛を抑えるためには、ロキソニン®やバファリン®などの一般的な頭痛薬を服用するとよくなることがあります。
一方、鼻づまりなど副鼻腔炎や鼻炎などが原因の場合にはそれらを改善するための薬が必要になることがあり、鼻づまりを改善する点鼻薬などが速効性に優れているためおすすめです。
気圧に関係する頭痛を繰り返す人は、抗めまい薬や五苓散を始めとした漢方薬が有用な場合があります。
漢方薬はドラッグストアなどで購入することもできますが、安易に自己判断で服用せず、まずは病院を受診して医師の診察を受けた上で処方してもらうようにしましょう。
低気圧や台風など気候の変化をきっかけに頭痛が起こる人の多くは、一時的なものであるため市販の頭痛薬などを用いて対処している人がほとんどでしょう。
しかし、次のような症状に当てはまる場合は、日常生活に支障を来すこともあり、なかには思わぬ病気が背景にあることも考えられます。頭痛がしたら放置せずに病院で診察を受けるようにしましょう。
気圧の変化そのものは防ぐことはできませんが、気圧の変化による頭痛に悩まされている場合は今回ご紹介した対処法を試してみてください。
また、気圧の変化によって起こる頭痛は慢性的に続くことはあまりないですが、痛みがひどい・痛みが治まらないなど日常生活に影響を及ぼすような場合には、我慢せずに病院で診察を受けてください。