記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/8/21 記事改定日: 2020/6/8
記事改定回数:3回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
皮膚上や臓器の粘膜上にできる突起物は、「ポリープ」もしくは「腫瘍」と呼ばれますが、この2つの違いは何なのでしょうか? この記事では、良性ポリープが悪性に変わることはあるのかを解説します。胃の隆起性医病変、陥凹性病変についてもわかりやすく紹介します。
「腫瘍」というと悪いものをイメージしがちですが、実際は単に「腫れもの」という意味です。具体的には、体の中や表面で細胞が過剰に増殖し固まりになったものを腫瘍といい、良性腫瘍と悪性腫瘍に分かれます。
良性腫瘍の場合、基本的には治療を行なう必要はありません。少しずつ大きくはなりますが、放っておいても大きな問題になることはほとんどありません。
ただし、腫瘍が大きくなって痛みを伴う、神経を圧迫する、もしくは脳にできるなど重要な臓器を侵食している場合は、外科手術で切除を行なうことがあります。一度切除すれば、再発の可能性はほとんどありません。仮に再発しても、新しい良性腫瘍ができることになります。
通常、悪性腫瘍は「がん」と呼ばれます。外科手術で腫瘍を切除しても、体に影響を与えます。わずかに残った細胞から再発したり、周囲の細胞を壊したり、リンパや血管を通って体のあちこちに転移してその場で大きくなったりするのが特徴です。その場合、手術を繰り返してもすべて取り切れないことがあり、完治させるのが大変難しい状態となります。
さらに、他の正常な細胞が摂るべき栄養分をがんが奪ってしまうことで、体がどんどん衰弱していく「悪液質」が起こります。
ポリープとは、おできやイボなどと同じく腫瘍の一種ですが、良性腫瘍です。ポリープには医学的に明確な定義はなく、おできやイボ、タコなど肌表面にできる突起物、胃の粘膜上など臓器できる突起物を指します。いずれにしても隆起性病変、突起のように飛び出している病変で、悪性でないものを「ポリープ」と呼びます。
ポリープの多くは良性のため、ある程度の大きさになれば成長が止まります。成長が止まってしまえば心配はいりません。しかし、時間の経過とともに悪性化するポリープもあります。悪性化した場合は、どんどん成長して大きくなったポリープがねじれたり炎症を起こすなどして自覚症状があらわれ、発見されることが多いようです。
たとえば腫瘍性の大腸ポリープは良性と悪性に分けられ、悪性のものはがんです。そして、良性のものは「腺腫」と呼ばれます。大腸ポリープの約8割が腺腫で良性ですが、この腺腫は何らかのきっかけを受けて、がん化する可能性があるのです。
一方、非腫瘍性の大腸ポリープには、炎症性ポリープと加齢を原因とする過形成性ポリープなどがありますが、ほとんどがん化することはないとされています。
脳にできる良性腫瘍で悪性に変わることがないものもあります。しかし良性でも腫瘍が大きくなることで脳幹を圧迫し、命をおびやかすこともあるため注意が必要です。
その他にも、良性腫瘍は発生部位によっては治療が必要になるものもあります。
例えば肝臓に発生する良性腫瘍では、腫瘍が大きくなって胆のうや胆管を圧迫し、閉塞性黄疸や胆管炎などを引き起こすものもあります。また、胃や大腸に発生する良性腫瘍の中には腫瘍の表面がダメージを受けて出血を起こすと貧血や血便などの症状を引き起こすタイプのものもあります。さらに、
子宮に発生する子宮筋腫も良性腫瘍の一つですが、サイズが大きくなったりいくつも発生したりすると腹痛や月経過多による貧血、不妊などを引き起こすことが知られています。
良性腫瘍だからといって必ずしも安全なわけではありませんので、発見された場合は定期的な経過観察を怠らないようにしましょう。
胃にはさまざまな病変ができます。これらの病変は、内視鏡検査で直接確認することができます。ただし、一般的な健康診断で用いられるバリウム検査は、胃粘膜に行き渡ったバリウムの像を映し出す検査であるため、病変の形状によって写り方が異なります。
胃の検査で発見される病気のうち、胃の隆起性病変と胃陥凹性病変(いかんおうせいびょうへん)があります。
バリウム検査でこれらの病変が指摘された場合は、がんの可能性がありますのでなるべく早めに内視鏡検査での精密検査を受けるようにしましょう。
良性のポリープや腫瘍であれば、基本的には治療をしなくても問題ありません。しかし悪性に変わる可能性や、脳腫瘍のように良性でも命に関わるものがあります。健康診断でポリープや腫瘍が見つかったら、早めに精密検査を受けてください。
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