記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/21 記事改定日: 2018/5/14
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
髄膜炎と聞くと子供の病気という印象を持つ人もかもしれませんが、実は大人も感染することがあり、命を脅かす可能性もあります。
この記事で、大人が髄膜炎になる原因や治療法、予防対策を見ていきましょう。
髄膜炎は脳と脊髄を保護している髄膜(ずいまく)に炎症が起こる感染症のことです。
発熱、悪寒、激しい頭痛など風邪に似た症状に加え、首の後ろが硬直するという特徴があります。
進行すると痙攣や意識障害が起こり、後遺症が残ったり、最悪の場合死に至る可能性もある重篤な病気です。
大人の場合は体の抵抗力が弱まっているときや免疫力が低下しているときに感染することが多く、臓器移植などで免疫抑制剤を使用している場合に合併症として生じることもあります。
髄膜炎は原因微生物によって種類が分かれていますが、大人が感染しやすい髄膜炎は細菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)があり、比較的少数ですが髄膜炎菌性髄膜炎となる可能性もあります。
共通する症状は“発熱、悪寒、激しい頭痛、首の後ろが硬直する”で、その他に現われる症状は感染した髄膜炎の種類によって異なります。
髄膜炎菌の感染により起こる髄膜炎です。
大規模感染の危険性があるため、流行性髄膜炎とも呼ばれています。
発熱、悪寒、激しい頭痛、首の後ろの硬直に加え、皮膚に赤い斑点や丘疹(小さなブツブツ)、腰痛、下痢などの症状が見られるのが特徴です。
感染力が強いため赤ちゃんや高齢者は死の危険が伴い、回復しても知的障害などの後遺症が残る可能性もあります。比較的頻度は低いですが、感染力が強いため流行した場合は注意が必要です。
悪寒や激しい頭痛の他に吐き気や嘔吐も見られ、首を曲げようとしても曲がらずに硬直してしまう状態になります。
症状が悪化すると痙攣や意識の低下が起こり危険な状態です。
細菌性髄膜炎は肺炎球菌、インフルエンザ菌、ブドウ菌、大腸菌などの細菌が髄膜に感染して炎症を起こすことで発症します。
まずは発熱、悪寒、頭痛、吐き気などが現われ、その後に首の後部が硬直します。
風邪と間違いやすいので注意が必要ですが、症状が軽いため比較的治療が容易です。
まずは髄膜炎かどうかを調べるために髄液検査を行ないます。
最も一般的なのは、腰に針を刺して髄液を採取し、髄液中の白血球の数や糖・蛋白の濃度を測定する方法です。
さらに、その髄液を数日~数週間培養して細菌を観察することで、細菌性かウイルス性かを確かめます。
細菌性の場合は原因菌に適した抗生物質を使って治療し、ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)の場合は比較的症状が軽い傾向があるため、現われている症状に対処することが多いです。
成人が髄膜炎を発症した場合、多くは小児よりも軽症であり、意識障害などが生じてもそれが原因で死亡することは少ないとされています。
治療にかかる一般的な期間は、細菌性は適切な抗生物質を使用することで一週間~10日ほどで治るのに対し、ウイルス性は抗ウイルス薬が存在しないことも多く対症療法が治療の中心となるため、治療は細菌性よりも長くかかり数週間を要するのが一般的です。
しかし、治療期間は患者の元からの全身状態や併発する病気によって大きく異なり、特に症状もなく治療も必要ないケーズもあれば、治療に数か月をようすることもあります。
髄膜炎菌によって感染する髄膜炎の予防にはワクチン接種が有効とされます。
日本国内ではメナクトラ®というワクチンが承認されており、2歳以上から摂取可能です。
無菌性髄膜炎の場合は原因が多岐に渡るためワクチン接種をしていても感染のリスクが無くなるとは言えませんが、効果が期待できるのは風邪やインフルエンザなどの感染症と同じ以下のような予防法です。
成人の髄膜炎の中でも特に細菌性のものは、中耳炎や副鼻腔炎、頭部手術、腫瘍などが原因となって細菌感染が髄液に波及することが多いです。このため、成人の髄膜炎は適切な治療によって一度完治しても、原因となる病態が改善されない限りは感染を再発する可能性が高く、飛沫感染や接触感染で生じる子供の髄膜炎よりも再発率は高い傾向にあります。
再発予防のためには、中耳炎や副鼻腔炎などの原因となる病変をしっかりと治療し、髄液への感染を引き起こしづらくする必要があります。
髄膜炎の初期症状は発熱、寒気がする、頭痛など風邪に似ているため最初から気がつくことは難しいでしょう。
ただし、首の後ろに違和感や硬さを感じた場合は髄膜炎である可能性がかなり高いです。
「もしかしたら髄膜炎かも・・・」と思ったら、すぐに内科や神経科で診断を受けてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。