記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
さまざまな要因によってつくられてしまう血栓。血液の流れを止めてしまうことで、心筋梗塞や脳梗塞などを起こしてしまう怖い症状です。さらに、日常生活のちょっとした乱れからできてしまうものでもあるので、ここでは、血栓症の概要や予防方法について知っておきましょう。
血栓とは、なんらかの原因によって血管の中にできる固まった血液の塊のことです。血栓が血管をふさいでしまうと血液がスムーズに流れなくなるため、肺や心臓、あるいは脳などの重要な臓器に酸素や栄養が届かなくなり、心筋梗塞や脳梗塞など、重篤な病気を引き起こすことになります。
ちなみに、よくテレビのニュースなどでも聞くことのある「エコノミー症候群(ロングフライト症候群)」は、この血栓症の一種です。エコノミー症候群は、飛行機や自動車などに長時間座っていることによって血管が圧迫され、足の静脈にできた血栓が血管を通って移動し、肺の動脈をふさいでしまう肺塞栓症のことを言います。
なお、足の静脈にできる血栓は、産婦人科や整形外科で行なわれた大きな手術が原因となることもあります。
血栓の原因となる物質はいくつかありますが、代表的なものが「フィブリン(Fibrin)」です。
フィブリンの役割は、人の体が傷ついたときに固まって止血することですが、フィブリンが固まる際に網目状になることがあり、この固まり方をしたときに血栓ができます。血栓を電子顕微鏡で見ると、網目状の塊が赤血球や白血球など、他の血液の成分たちをからめとっているのが観察できます。
この血栓が大きくなっていき、血管をふさいだり、血管から剥がれ落ちて細い血管に移動したときにつまってしまい、血栓症を起こします。
血栓ができる原因としては、たとえば、糖尿病になると血管が傷つきやすくなりますが、その傷を繰り返し治そうとすることが血栓ができやすく原因のひとつと考えられます。他にも、動脈硬化、心臓弁膜症、不整脈、腫瘍などの病気による血流障害も血栓の原因となる場合があります。
さらに、喫煙によるニコチンの摂取は血管の炎症を起こしやすくするので、血栓の原因となりますし、ストレスや疲労も自律神経の働きを乱して血流を悪くすることで血栓ができやすくなります。
以下のような治療の方法があります。
脳梗塞の治療に使用する「t-PA(tissue plasminogen activator)」という、血栓を溶かす薬を使用します。比較的速やかに血栓を溶かす必要がある場合に検討します。ただし、出血を起こすリスクがあります。
血管にカテーテルを入れて血栓を除去する方法です。これには2種類あり、ステント型は、脚の付け根からカテーテルを挿入し、ステント(筒状の網)にからめて血栓を回収します。吸引型は、器具の先端で血栓を吸い取り、カテーテルの中に回収します。
血液をサラサラにする作用がある薬「ヘパリン」を注射したり、内服薬の抗凝固薬(ワーファリンなど)を服用します。
日頃の生活習慣の見直しや適度な運動が、血栓症の予防となります。そして、血栓症予防のために改善された生活習慣は、動脈硬化やその原因となる肥満、糖尿病を予防することにもつながるのです。
また、仕事でずっと座っているなど、長時間、同じ体制をとらなければいけない人は血栓症になりやすいと言えます。途中で立って、少し体を動かしましょう。
水分補給も大切です。体に水分が少なくなると、血がドロドロになっていきます。意識的に水分を補給しましょう。なお、紅茶やお酒などの利尿作用のある飲み物は避けるようにしてください。
あと、血流の低下や血管の収縮を起こさないために、室温や摂取する水分の温度に注意し、体を冷やさないようにすることも大切です。
血栓症の予防のために始めることは、さまざまな生活習慣病の予防にもつながります。タバコをやめ、健康的な食事、そして適度な運動を心がけましょう。習慣にするには少し時間がかかるかもしれませんが、突然、重篤な病気を発症しないための日頃の努力が大切です。