記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/21 記事改定日: 2018/3/19
記事改定回数:1回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
国民の多くがかかっているといわれる花粉症は、花粉に対して体が起こすアレルギー反応で、花粉を外に出そうとくしゃみ、鼻水、涙などが起こります。花粉症の予防には、花粉が飛散し始める前からの対策が必要ですが、薬である程度症状が予防できることをご存知ですか?ここでは、薬や食事での予防法などをお伝えしていきます。
一般的な薬は症状が出た後に服薬するものなので、予防のために服薬はしません。しかし花粉症の場合は、毎年症状が現れる時期が大体決まっており、原因も特定できているため、処方薬による予防が認められています。基本的に、花粉症のシーズンが始まる2週間くらい前から服薬を始めると、高い予防効果が見込めます。
具体的な予防薬としては、鼻水やくしゃみなどの症状が予測される患者さんにはアレグラ®、エバステル®、アレジオン®、アレロック®などの内服薬、目のかゆみが強く出ることが予測される患者さんにはパタノール®やザジデン®などの点眼薬、鼻づまりなどの鼻炎症状が予測される患者さんにはフルナーゼ®などの点鼻薬が処方されます。なお、点鼻薬は内服薬よりも直接粘膜に作用するため、眠気が少なくて済むというメリットがあります。
漢方薬は、花粉症の症状の緩和だけでなく体質改善にもつながる薬のため、予防薬としても活躍が期待できます。また、漢方薬には眠くなる成分が入っていないのも大きなメリットです。花粉症の予防効果がある漢方薬としては、具体的に下記のものが挙げられます。
鼻の冷えを改善し、水分の循環を促しながら余分な水分を排出させることで、鼻水やくしゃみなどの鼻炎症状を緩和する効果があるとされます。服用は1〜2月ごろから始めるのが理想的で、症状が強くなる前に飲むのがポイントです。
風邪薬として有名な葛根湯に生薬を加え、鼻づまりを緩和しやすくした漢方薬です。鼻づまりが毎年ひどい方におすすめです。
予防薬だけでなく、食事を工夫することによっても花粉症をある程度予防できるとする説もあります。具体的には、以下の食べ物や飲み物が花粉症予防効果があると言われています。
玄米に含まれるマグネシウムやナイアシンは、花粉症などのアレルギー症状や体質改善に効果があると言われています。
レンコンなどの根菜に含まれるタンニンには、喉の痛みの緩和などアレルギー症状を抑制する効果があると言われています。また、タマネギは鼻や喉の粘膜を強くする作用があるとされます。
ヨーグルトや味噌、醤油、糠漬けなどの発酵食品は、腸の善玉菌を増やし、腸内環境を整える作用があると言われています。花粉症の原因であるIgE抗体は、善玉菌の増加によって活動が抑制されると考えられているので、これらの食べ物を積極的に摂ることがおすすめです。
緑茶に含まれるカテキンには、粘膜を保護する作用があると言われています。なお、熱湯で淹れたお茶を温かいうちに飲んだ方がカテキンの吸収率が高まるとされているので、冷めないうちに飲みましょう。
雨が降ると、空気中の花粉を洗い流してくれるため、花粉症の症状は和らぎます。また、暖かくて日差しの出ている日よりは、涼しくて曇りの日のほうが花粉の飛散量は少ない傾向にあります。
最近では、地球温暖化などの気候変動に伴って暖かい時期が増えたため、花粉症のシーズンも長くなり、多くの人がより長いあいだ花粉症の症状に苦しむようになってしまいました。また沿岸部では、風が海から陸の方向に吹くときは、海からの湿った空気が流れるため症状はさほど出ません。逆に、風が陸から沖に向かって吹いているときは花粉の飛散量は増えることがわかっています。
そこで、花粉症をコントロールするには、天気予報をよくチェックすることも大切です。
花粉は、早朝に飛散します。空気が暖かくなってくると人間の背丈くらいの高さまで舞い上がります。夜になって空気が冷えると、再び花粉は下に落ちます。このことから、症状は朝と夜の早い時間帯に最も出やすいことがわかります。特に、暖かくて日差しある日は花粉の飛散も活発です。天気予報をチェックして飛散量が多い日は、花粉を避けるための工夫をするようにしましょう。花粉症の症状を最小限に抑えるためには、花粉に触れる機会を少なくすることです。
花粉症を予防するには、花粉との接触をなるべく避けることが大切です。以下のことを心がけてください。
・夜間は窓を閉め、花粉が室内に入ってこないようにする
・花粉を除けるための特殊な眼鏡(花粉メガネ)やマスク(花粉マスク)をかけ、目や鼻に花粉が入らないようする
・鼻の穴のまわりにワセリンなどの石油系の塗布剤や、花粉の侵入を防止する特別な薬を塗る
・帰宅したら髪の毛、手、顔をよく洗い、着替える
・洗濯物を外で干さないで部屋干しにする(外に干すときはたたいて花粉を落としてから部屋にいれましょう)
・家の中で舞っている花粉を除去するため、空気清浄機を使う
・車に乗っているときは窓を閉める
・暖かい日は、庭の草むしりなどのガーデニング作業はしない
・緑の多い広場などに行くのを避ける
花粉症は一度かかってしまうと長く付き合っていかなければならない疾患です。しかし、シーズン前に薬を服用したり、日頃から食事を工夫したりすることで、ある程度症状の悪化は予防できると考えられています。花粉症でお悩みの方も、花粉症になりたくない方も、ぜひ参考にしてみてください。