記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
蓄膿症(慢性副鼻腔炎)の嫌な臭いは、黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌が鼻の中で増えすぎることなどによって発生します。
蓄膿症特有のイヤな臭いを抑える方法を、この記事で詳しく見ていきましょう。
蓄膿症(副鼻腔炎)の臭いのもとは、黄色ブドウ球菌などの細菌の増殖と、口呼吸の回数が増えて口の中が乾いている状態が続くことです。
蓄膿症になると、細菌と戦った白血球の死骸が副鼻腔のなかに膿としてたまっていきます。
一番の解決法は蓄膿症や副鼻腔炎そのものを治療することですが、鼻うがいで症状が軽減することもあります。鼻うがいは、鼻や鼻腔の中の細菌を洗い出すことで臭いの改善が期待できるといわれています。
生理食塩水を用意し下記のように行いましょう。
①片方の鼻をふさいでもう一方から生理食塩水を吸い込みます。
②吸い込んだ生理食塩水は鼻や口から吐き出してください。
③左右の鼻で上記の工程を3回ほど繰り返します。
④軽く鼻をかんで終了です。
※何度も繰り返すと鼻粘膜を痛めるおそれがあるので気をつけてください。
鼻うがいは、やり方によっては、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。鼻うがいを行う際の注意点について確認しておきましょう。
鼻に食塩水を入れるときに、吸い込みがうまくいかずに上を向いてしまうことがあります。しかし、大きく上を向いてしまうと、食塩水が耳に入り炎症を起こしてしまうことがあります。前かがみの姿勢が基本です。
鼻から水を吸いながら唾液を飲み込むと、食塩水が耳に入ってしまうことがあります。食塩水が耳に入ると中耳炎を引き起こすことがありますから、唾液を飲まないように注意しましょう。
鼻うがいの後に鼻を強くかみすぎると、中耳炎や、鼻の粘膜に炎症が起こってしまうことがあります。軽くかむ程度にしましょう。
鼻に不快感がある人は、鼻うがいに慣れてくると何度も行いたくなるかもしれません。しかし、鼻うがいのやりすぎは粘膜を傷つけてしまいます。1日に1、2回程度にしましょう。炎症がひどすぎるとき、のどの痛みがあるときは、鼻うがいではなく、まずは耳鼻科を受診しましょう。
鼻うがいは簡単にできる一方で、注意点も多い方法です。小さな子供が、きちんと方法を理解せずに行うことは、中耳炎などを招きかねません。耳鼻科を受診して処置をしてもらう他、子供にも適した対処法をアドバイスしてもらいましょう。
イソジン®は、強い殺菌力があり、うがい薬として使用したことがある人もいるかもしれません。実際、そのスッキリ感から、イソジン®を鼻うがいに使うという人もいるといわれています。しかし、イソジン®を鼻うがいに使うことの安全性は示されていません。
そもそもイソジン®は鼻を洗浄することを目的としてはいません。鼻の粘膜は、のどの粘膜に比べて繊細で、イソジン®の作用がかえって刺激となり、炎症を起こすおそれがあるのです。
鼻うがいには、鼻うがいを目的にした洗浄液や、生理食塩水の使用がすすめられています。自己判断でイソジン®を使うことはやめましょう。
家庭で鼻洗浄を行う方法は、人間の体液と同じ濃度の食塩水(生理食塩水)をつくるか、市販の洗浄液を使う方法があります。鼻に真水が入ると「ツーン」という痛みが生じますが、いずれの方法も不快感なく行える方法です。
市販薬のひとつであるハナクリーン®は、耳鼻科の医師と共同開発された鼻洗浄器です。あらかじめ粉が個包装になっていたり、専用の鼻うがい器があるため、鼻うがいが苦手でも、取り組みやすいかもしれません。
ただし、市販薬を使うときは、その薬や洗浄器に合った使い方をすることが大切です。たとえば、洗浄機の洗浄や部品の交換など、定期的なお手入れが必要になります。また、もったいないからと残った洗浄液を使うことも止めましょう。
臭いのもととなる蓄膿症(副鼻腔炎)は、鼻うがいだけで解消されるものではありません。副鼻腔炎や蓄膿症の治療では、状態によって薬物治療や、ネブライザー治療などを行いながら、鼻うがいを補助療法として取り入れていきます。また、規則正しい生活や、食生活など、基本的な生活週間も大切なポイントです。
副鼻腔炎(蓄膿症)は治りにくく、治療をあきらめてしまう人もいるかもしれませんが、根気強く続けていくことが必要です。
副鼻腔炎や蓄膿症で鼻が詰まると、口呼吸が増えて口の中が乾燥(ドライマウス)して口臭が悪化します。
水分を補給する、アメやガムを口に含んで水分量を維持する、歯みがきをする、マウスウォッシュや口臭ケア用品を使うなどの方法で、口の中を潤すことが効果的とされる解決策です。
また、食事は時間をかけてしっかり噛んで食べること、梅干しなど唾液の分泌を促進するものを積極的に食べることも良いでしょう。
副鼻腔炎(蓄膿症)の臭いは人によって様々ですが、通常の鼻水と比べ物にならないほど強烈です。主にくしゃみをしたときに臭いを自覚する人が多いといわれています。しかし、多くの場合、蓄膿症や副鼻腔炎の臭いが他の人に気づかれることは少ないといわれています。これは、臭いを放つ膿が鼻の奥にあるからです。
そのため、体臭と異なり周囲の人にも気づかれる心配はほとんどありませんから、あまり気にしすぎず、コミュニケーションを楽しみましょう。
副鼻腔炎(蓄膿症)の臭いの原因や対処法について見てきましたが、いかがでしたか?
鼻うがいやはすぐに取り組める方法もではありますが、最も有効とされる対処法は副鼻腔炎(蓄膿症)そのものを治すことです。
症状が続くときは我慢せず、早めに病院で治療を受けましょう。