記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/9/7 記事改定日: 2018/7/12
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
「生理(月経)がくる時期がバラバラ」「次の生理がくるまで2ヵ月かかることがある」といった、生理(医学的には月経というのが一般的です)不順の悩みを抱える女性は少なくありません。この記事では、生理不順(月経不順)が起きてしまう原因や対処法をご紹介していきます。
生理周期は25~38日であれば正常の範囲内ですが、これに該当しない場合は生理不順とされます。生理不順の種類としては、生理周期が39日以上続く「稀発月経」、24日以内に次の生理がきてしまう「頻発月経」があります。なお、18歳以降になっても一度も生理がこなかったり、妊娠以外の理由で3ヵ月以上生理がこなかったりする場合は「無月経」に該当します。
生理不順は珍しい症状ではなく、健康な女性でも一時的に発症することがあります。主な原因として考えられるのがストレスや疲労、過度のダイエットなどによるホルモンバランスの乱れです。ほかにも、うつ病などの精神疾患を抱える女性が、精神安定剤や睡眠薬を長期的に服用したことでホルモンバランスを崩し、生理不順を起こしてしまうケースもあります。
また、40代のいわゆるプレ更年期の女性も、卵巣の機能低下に伴うホルモンバランスの変化によって、生理不順になるケースも少なくありません。
生理不順を改善するには、「栄養バランスのとれた規則正しい食事をとる」「しっかり睡眠をとる」「基礎体温を記録する」といったセルフケアを行うことと、年齢や原因、妊娠を希望するかどうかに応じた適切な治療法を行っていくことが大切です。病院で受けられる具体的な治療法は以下のとおりです。
思春期の間は排卵が不定期なことも少なくないため、年に3~4回生理がくるようであれば、成長を待ってから治療を始めることが多いです。
閉経まで経過観察をしつつ、定期的に婦人科がん検診を行います。更年期障害のような症状がみられる場合は、低用量ピルや漢方薬の服用を通じて、症状の緩和とホルモンバランスの安定化をはかります。
生理不順の原因が、薬(精神安定剤や胃腸薬など)による高プロラクチン血症の場合は、その病気の治療と同時にプロラクチン降下薬を処方します。
ホルモン補充療法とカウンセリングを通じて治療を行います。
排卵誘発剤の投与を行い、生理周期を整えていきます。
ホルモン剤を用いて一時的に人工的な周期に戻してから、自然の周期に戻るかどうか経過観察をするのが一般的です。
生理不順では、主に次のような治療薬が使用されます。
妊娠を希望する人や無排卵性月経の人に用いられます。最もよく使用されるのは、クロミッド®という内服薬で、脳の下垂体を刺激して排卵に必要な女性ホルモンの分泌を促す効果があります。
クロミッド®は比較的安全で副作用が少ないことが知られていますが、中には子宮内膜の成熟不良や一度の排卵で複数の卵子が放出されることもあるため、妊娠した場合には多胎妊娠となる可能性が高くなります。
また、排卵誘発剤にはHMG製剤などの注射薬もあり、クロミッド®が効かない排卵障害のある人に使用されます。HMG製剤を使用すると90%以上で排卵が認められますが、卵巣を過度に刺激して卵巣の腫れや出血などの症状が現れることもあります。
妊娠を希望しない人や、ホルモンバランスの乱れが著しい人に用いられます。
ホルモン療法には、低用量ピルにはよる治療とプロゲステロンとエストロゲンを組み合わせて服用するカウフマン療法があります。
低用量ピルは、プロゲステロンとエストロゲンが一錠に含まれた薬であり、排卵は生じませんが三週間飲み続けた後に月経様の出血が生じます。また、カウフマン療法は月経周期前半には低温期を司るエストロゲン、後半には高温期を司るプロゲステロンを服用し、自然なホルモンバランスを整える治療法です。カウフマン療法を数周期行うと、排卵機能や月経周期が正常になるとされており、妊娠を望む人に行われることもあります。
これらのホルモン剤には、吐き気やめまい、頭痛などの副作用があり、服用し始めの頃には不正出血が生じることも少なくありません。
また、低用量ピルは服用を続けると血栓ができやすくなるため、肥満や喫煙中の人は服用することができませんので注意しましょう。
生理不順のよくある原因は、ストレスや疲労による女性ホルモンのバランスの乱れです。日頃から体の状態をしっかり整え、それでも改善されない場合は、専門の医療機関で適切な治療を受けるようにしてください。
【出典: 厚生労働省運営「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」ホームページを編集して作成】