ぎっくり腰の治療方法とは ~ 自分で治す方法ってあるの?

2017/9/13 記事改定日: 2018/4/2
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

近年、ぎっくり腰は、長期間の安静が逆効果だという声もあがっていますが、これは本当でしょうか?また、セルフケアでぎっくり腰を改善することはできるのでしょうか?今回は、ぎっくり腰の治療と原因、セルフケアについて解説します。

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ぎっくり腰とは

ぎっくり腰は、正式には急性腰痛症または非特異的腰痛といい、医療機関では腰痛捻挫または腰部挫傷といわれることもあります。少し前かがみになったり、重い物を持ち上げようとしたときに関節や筋肉、筋膜が損傷して炎症が起こり、腰に激痛が現れます。これはほんの少し姿勢を変えただけでも起こる可能性があるので注意が必要です。

【厚生労働省ホームページの情報をもとに編集して作成 】

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d.pdf

ぎっくり腰の治療 ― 病院の検査の重要性

ぎっくり腰は原因や痛みの部位を正確に判断することができないという特徴があります。、骨折や脊柱管狭窄症、変性すべり症や分離すべり症などが原因で急に腰痛が起こるケースや、腫瘍や尿路結石などで腰に痛みが起こることもありますし、これらの既往歴がなくても起こることがあります。もしも、疾患による腰痛であればぎっくり腰とは異なるため、病院での検査や処置が必要になるでしょう。

ぎっくり腰になったときは、病院を受診し専門的な治療が必要かどうかを確認することが重要です。初期治療を怠らなければ短期間での症状改善が期待できます。
自己判断でケアを始める前に、必ず整形外科で検査してもらいましょう。特に何度もぎっくり腰を繰り返している人は注意が必要です。

【厚生労働省ホームページの情報をもとに編集して作成 】

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d.pdf

治療期間の過ごし方

治療は痛みの原因を特定することから始まります。
検査で重篤な問題がないと診断されたら、痛みが出現したばかりである急性期は楽な姿勢での安静、そして熱感や腫れがある場合はアイシングも必要です。

仰向けで寝ると痛みがでるときは、膝を曲げて横向きになり、わきの下に毛布などを入れ腰に負担がかからない姿勢をとってください。処方された鎮痛剤(NSAIDsやアセトアミノフェンなど)の服用や鎮痛作用のある湿布剤などを使ってもかまいませんが、医師から指示があった場合は必ずその指示に従いましょう。

通常は2~3日程度で次第に痛みが改善していきますが、痛みの程度が全く変わらない場合や症状がさらに悪化している場合、夜中でも痛みが続き眠れないという場合は再度病院を受診するようにしてください。

ペインクリニックの治療 ― ブロック注射について

ペインクリニックとは痛みを取り除くことによって病期と上手に付き合っていくことをサポートする役割があります。ぎっくり腰の痛みに対してペインクリニックで行われる治療は主にブロック注射となります。ブロック注射とは傷む神経の周りあるいは神経そのものに痛みを止めるあるいは和らげるための局所麻酔の薬液を注入することによって痛みを止めます。
痛みがあると、痛みの反射で筋肉や血管が収縮し、筋肉内の血流が少なくなることで筋肉内が酸素不足となります。そうすると痛みを起こす物質が滞って、神経を刺激して痛みが持続します。痛む神経に直接濃度の濃い薬液を注入できることから1回の治療で痛みが改善される場合も多く、早期に痛みを止めて社会復帰できる治療法として取り入れられています。

自力で治すことはできる?

ぎっくり腰が重篤な病気や外傷によるものでなければ、自分でケアをしたり、発症を予防することができます。

ぎっくり腰のケアで大切なことは、「急性期には安静にして患部を冷すこと」と「急性期を過ぎたら患部を温め、無理のない範囲で体を動かすこと」です。

同じ姿勢で長期間過ごしていると同じ筋肉に負担がかかります。また、寝て過ごしてばかりいると、腰を支える筋肉が弱くなり腰痛を引き起こす原因となってしまう可能性もあるのです。急性期を過ぎ痛みが治まってきたら、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。そして痛みが完全に治まったら、可動域を広げるためにヨガやストレッチをしたり、筋力を鍛えるためにウォーキングや水泳を始めることをおすすめします。

ぎっくり腰の原因

ぎっくり腰は、筋・筋膜の損傷が原因になっていることが多く、転んだりぶつかったりといった明らかな外傷や重労働だけでなく、顔を洗っているときや椅子から立とうとしたときなど日常の何気ない動作で起こることもあります。

これは、長期間の負荷が筋肉にかかり続けてダメージが蓄積したことで、軽い力がかかっただけでも筋肉が損傷してしまうからだと考えられています。腰の筋肉に長期的な負荷がかかってしまう原因として、デスクワークなどの「長時間同じ姿勢」でいることが挙げられるでしょう。

座ったままの状態でも、筋肉は姿勢を維持するため常に収縮と伸張を繰り返しています。つまり、座りっぱなしや立ちっぱなしのように長時間同じ姿勢でいるということは、同じ筋肉が長時間同じ動きを続けているということです。この持続的な筋肉への負担が、ぎっくり腰を引き起こす要因になっている可能性があると考えられます。

ぎっくり腰の再発を防ぐ運動やストレッチ

ぎっくり腰の再発を予防する運動やストレッチをいくつかご紹介しましょう。

まず1つ目のストレッチとして、立膝の状態から片方の足を前に出し、膝を90度に曲げ、前に出した足のつま先を立てて10秒ゆっくりと深呼吸をする方法があります。

2つ目は仰向けになって両手で両ひざを抱えながら10秒ほど深呼吸する方法、3つ目に椅子に座って足首を膝に乗せた状態から体を前に倒して10秒深呼吸する方法があります。
運動には、大股で歩くことがおすすめです。

さらにぎっくり腰の再発を防ぐ運動にマッケンジー法というものがあります。マッケンジー法とは1950年代にニュージーランドの理学療法士、ロビン・マッケンジー氏が開発、発展させてきた骨関節の疾患に対する運動療法です。
自分の中で良い座位姿勢をとり、腰を反らす運動を1時間又は2時間おきに行うものです。
しかし、この運動は良い剤姿勢をとることが重要となるため希望者は整形外科などで相談することをおすすめます。

おわりに:何度もくりかえすものや症状が長引く場合は整形外科へ

ぎっくり腰は、重篤な病気や外傷から起こっているものでなければ、セルフケアでも治すことができると考えられています。そのためには、「重篤な病気や外傷がない」ことを確認してもらう必要があるでしょう。ぎっくり腰になったときは、早めに整形外科を受診するようにしてください。また、痛みが長期間続いたり何度も繰り返す場合も必ず病院を受診しましょう。

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