記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/14 記事改定日: 2019/6/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
B型肝炎ウイルスの感染で発症することが多い急性肝炎は、重症化すると劇症肝炎という重篤な病気を発症する場合があります。今回の記事では、劇症肝炎について症状や治療法などを解説します。
劇症肝炎とは、肝炎によって肝細胞が急激に、かつ大量に破壊されることで、身体が必要とする物質の合成と、身体に有害となる物質の解毒や排泄などの肝臓の機能が著しく障害された状態です。
有害物質が蓄積して脳にまで影響を及ぼし、肝性脳症といわれる意識障害が現れます。これは、新生児から高齢者まで年齢を問わず発症する可能性があるため注意が必要です。
健康上の問題がない人に倦怠感や吐き気、食欲不振など、急性肝炎と同様の症状が起こったあと、8週間以内に肝性脳症が現れ、血液検査で血中の凝固因子(プロトロンビン)の著しい低下がみられた場合は劇症肝炎と診断されます。
急性肝炎であれば、ほとんどの場合、壊れた肝細胞は肝再生により自然治癒しますが、劇症肝炎の場合は、幹細胞の破壊が広範囲におよぶため自然治癒が難しく、適切な治療がされないと死にいたる恐れがあります。
急性肝炎の初期症状は、発熱や筋肉痛などの風邪と似た症状や食欲不振、倦怠感などが現れたあと、尿が濃褐色になり黄疸が出ます。
大抵は、この時点(急性肝炎の状態)で病気に気づきますが、さらに症状が進行し劇症肝炎になると、これまでの症状が持続、または悪化し、やがて肝性脳症が起ります。肝性脳症の症状には以下のものがあります。
また、劇症肝炎では、腎臓、肺、心臓、消化管などの全身の臓器障害、血液凝固、細菌の感染などが起こるため、以下の症状があらわれます。
劇症肝炎の原因は、肝炎ウイルスの感染、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎などが多いとされていますが、原因不明のものが近年増加しています。
最も多い原因とされているのが、B型肝炎ウイルスの感染によるもので、B型肝炎ウイルスのキャリア(肝炎ウイルスの感染が持続している状態の人)が発症する場合と、キャリアとセックスなどを介して感染し、発症する場合があります。
劇症肝炎の治療法は以下のとおりです。
原因がB型肝炎ウイルスであれば、エンテカビルなどの核酸アナログ製剤やインターフェロンを用いた抗ウイルス療法が最も有効とされています。
また、自己免疫性肝炎や薬物性肝障害により発症しているケースでは、副腎皮質ステロイドを大量に点滴静注し治療する場合もあります。
肝性脳症を発症する前に治療を行うことで、劇症肝炎への移行を防げる可能性があります。
劇症肝炎を発症した場合、その原因にかかわらず、身体に必要な物質を補充し、有害な物質を取り除くために人工肝補助療法を行います。
人工肝補助療法には2種類の方法があり、1つは患者さんと健康な人の血漿(血球以外の成分)を交換する血漿交換、もう1つは腎臓疾患の人に行われる血液透析を応用した血液濾過透析で、通常は両方が併用されます。
先述した治療を行っても、肝臓の機能が回復しないことがあります。その際は、肝移植を行うことになります。これには、近親者の肝臓の一部分を移植する方法(生体部分肝移植)と、脳死者からの肝臓を移植する方法があります。
日本では、以前は生体部分肝移植が一般的に行われてきましたが、平成22年の法律の改正に伴い、脳死肝移植の実施数が増え、劇症肝炎でも脳死肝移植を受けることが増えてきています。
肝炎は次のような初期症状が見られます。思い当たる症状や身体の変化が現れたときは、放置せずにできるだけ早く病院を受診しましょう。
また、中にはウイルス性肝炎が劇症化するケースもありますので、一度は肝炎ウイルス検査を受けて、感染していることが分かった場合は医師の指示に従って治療・経過観察を行うようにしましょう。
B型肝炎の疑いがある場合、急性肝炎や劇症肝炎を発症する可能性があります。今回の記事で挙げた症状がみられたら、すぐに病院で検査を受けるようにしてください。
劇症肝炎は劇症化するまえに治療を始めることが大切です、肝臓の数値が悪い人や肝炎ウイルスのキャリアの人は定期的に肝臓のチェックをしましょう。