記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病性網膜症は、糖尿病の合併症として現れる目の病気であり、視力低下だけでなく失明に陥る危険性もあります。この記事では、糖尿病の三大合併症といわれる、糖尿病性網膜症について解説しています。
糖尿病性網膜症は、糖尿病性神経障害と糖尿病性腎症とともに糖尿病三大合併症の一つに数えられるものです。
この病気は目に症状が現れる合併症で、視力の低下を引き起こし、ひどい場合は失明にもつながります。現在の日本における成人後の失明の原因としては、緑内障に次いで二番目に多いものといわれています。
糖尿病性網膜症は、血糖値の高い状態が続くことで網膜の細かい血管が傷つくことで起こります。また、この合併症は糖尿病患者の約40%に見られ、初期には自覚症状がないまま進行していくことから、今後も患者数の増加することが予想されています。
糖尿病性網膜症という病気は、進行段階によって三つの種類に分けられます。
一つ目は初期の段階に見られる単純糖尿病網膜症です。これは小さな点状出血や少し大きめの斑状出血、血管から染み出た血漿成分のタンパク質や脂質が沈着したシミなど網膜に起こるもので、ほとんどの場合まだ自覚症状は出ません。
二つ目はそれより少し進行した前増殖網膜症です。網膜血管の広範囲の閉塞がみられるようになり、網膜に十分な酸素が届かなくなります。不足した酸素を補うために、細くてもろい新生血管を作る準備が行われます。この段階で視力低下はほとんどみられませんが、かすみ目などの自覚症状が現れることもあります。
最終的な段階まで進行したものが、三つ目の増殖網膜症です。これは新生血管が網膜やや硝子体内にまで増殖し、硝子体出血や網膜剥離といった危険な症状が出てきます。視力の低下などの自覚症状が生じるころにはかなり症状が進行してしまっている状態であり、年齢が若いとはやく進行する傾向があります。
初期の単純糖尿病網膜症の段階では、血糖値のコントロールなどの内科的な対処で十分だとされていますが、中期の増殖前網膜症や後期の増殖網膜症の段階になると、糖尿病性網膜症そのものに対する治療が必要になるケースが多くなります。
治療には、網膜光凝固術と硝子体手術の2種類があります。
網膜光凝固術は網膜にレーザーを照射して、糖尿病性網膜症の深刻な症状を引き起こす新生血管の発生を防いだり、出血やシミを改善するという方法です。この治療は、増殖前網膜症の段階で行うとより高い効果が期待できます。
硝子体手術は症状がかなり進行した段階で行われるもので、硝子体の中の出血を吸い取ったり、剥がれた網膜を元の状態へと戻したりします。
糖尿病性網膜症は、視力の低下や失明というという大きな問題が生じる深刻な合併症です。糖尿病になってしまった場合には、この合併症にならないように予防することが重要になります。
予防のためには、やはり血糖値のコントロールが第一といえるでしょう。血糖値のコントロールをしっかりと行うためには、食生活を改善したり、適度な運動を行ったり、医師に処方された薬を指示通りきちんと飲むといったような、日々の積み重ねが非常に重要になってくるでしょう。
また糖尿病性網膜症は、対応がしやすい初期の段階には自覚症状が出ない場合が多いことから、定期的に検診を受けて自分の状態を明らかにすることも予防のためにはとても大切です。
糖尿病性網膜症は自覚症状がないままで進行してしまう合併症です。気づいたときにはかなり深刻な状態になっていることも多いので、できるだけ発症しないように予防するようにしましょう。
また、もし発症後でも初期の段階であれば血糖値のコントロールによって進行を抑えたり、またレーザー治療などによって症状が改善する場合が多いので、早期発見することが重要となります。
定期的な検診を忘れずに行い、日ごろから健康的な生活を心がけ、医師の指示通りに糖尿病の薬を使用しながら、血糖値をコントロールしていきましょう。