記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/21 記事改定日: 2018/7/31
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
育ち盛りのスポーツ少年に起こりやすい疾患であるオスグッド病。動くと痛みが走ったり、再発の可能性もある病気です。子供がスポーツにもっと打ち込めるように、そして、オスグッドからも守ってあげるために、治療法や予防方法についてお伝えします。
「オスグッド病」は「オスグッド・シュラッター病」とも呼ばれ、主に10歳から15歳ぐらいの成長期の子供(主に男子)に多くみられる疾患です。
スポーツ障害のひとつであり、とくに跳躍するなど脚を酷使するバスケットボールや陸上、サッカー、テニスなどで多いといわれていますが、基本的にどのスポーツでも関係なく発症することがあります。
痛みが起こる場所は、膝蓋骨(膝にあるお皿)下部であり、ぽっこりと骨が飛び出たようになります。その原因は、運動などによる使いすぎと疲労の蓄積です。
脛骨結節の上部には膝蓋腱という腱が付着していますが、激しい運動をすると付着部である脛骨結節が強く引っ張られるため、軟骨が隆起したり、剥がれたりすることで起こります。
子供の場合、まだ骨がやわらかく、頑丈な膝蓋腱が引っ張り続けることで、付着部に炎症が起こるのです。
ちなみに、大人になると骨が成長して当該部分もしっかりとするため、オスグッド病は起こりにくくなります。
まずは、オスグッド病かどうかを、X線(レントゲン)検査で診断します。MRI検査で詳しく調べる場合もあります。
オスグッド病と診断されたら治療に入りますが、この疾患は成長期に現れる一過性のもので、時間が経てば治癒することがほとんどです。日常生活の動きにも影響するようになれば手術が選択されることもありますが、ひとまず保存療法を行なうことになります。
手術の必要があるケースとしては、はがれた骨の一部が残ってしまったときに症状が慢性化する恐れが出てくるため、残った骨を取り除く手術を行うことがあります。
また、ステロイド剤の注射という方法もありますが、ステロイドの使用は腱を弱くするという報告などもあるため、医師とよく相談することが大切です。
いずれにしても、ほとんどの場合、手術は必要なく、第一の選択肢としてスポーツの練習をストップし安静にしておく方法がとられます。
他には、オスグッド病専用サポーターやオスグッドバンドの装着をすすめられたり、テーピング法、アイシング、電気治療である干渉波・ドップラー波電療法が試されます。
まず、とるべきケア方法は、「休むこと」です。それによって、炎症部分が回復するのを待ちます。痛みが強い場合は、痛み止めを使用したり、湿布を貼りましょう。
痛みや腫れを抑えるためには、アイシングも効果的です。氷のみで冷やすと、凍傷になる恐れがあり、水が入ることにより接地面積を大きくとれますので、氷と一緒に水も入れてアイシングしましょう。
運動を続ける場合は、患部の様子を見ながら注意深く行なうことが重要です。運動前にはウォーミングアップをし、運動後にはストレッチやアイシングを欠かさず行ないます。
なお、強い痛みが出るときは、必ず運動量を減らすか、一度休むようにしてください。
オスグッド病は成長期の子供に多く見られますが、なかには大人になっても再発を繰り返すこともあり、「オスグッド後遺症」と呼ばれています。
オスグッド後遺症には、成長期に発症したオスグッド病による骨の変形や骨片(膝関節内にできた骨のかけら)などが大人になっても残ることによるものと、成長期にオスグッド病を発症した原因である大腿四頭筋や膝蓋腱の硬さや足首の柔軟性低下などが大人になっても改善せずにオスグッド病と同じような症状を引き起こすものがあります。
骨の変形や骨片による後遺症は膝に強い痛みを引き起こし、場合によっては手術が必要になることもあります。一方、筋肉の硬さなどが原因で生じる後遺症は、成長期より強い外力が原因となるため、より強い炎症を引き起こして痛みや腫れなどを生じます。
これらの後遺症を予防するには大腿四頭筋や膝蓋腱のストレッチ、筋力強化などのリハビリを行うことが必要です。
予防、再発防止のためにも、ストレッチは重要です。
ストレッチは、とくに太腿の前にある大腿筋を念入りに行ないましょう。この部分の柔軟性を高めておくことで、膝蓋腱への負担をかなり減らせます。
他にも、大腿四頭筋、股関節、足首のストレッチもやっておいてください。足首の硬さは、膝にかかる負担に直結しますので、ここも非常に大事な部位といえます。
また、治療期間中や痛みが再発した場合は、痛みが治まるまでは運動後にアイシングするようにしてください。
オスグッド病は、スポーツをがんばっている子供には頻度の高い疾患となります。あなたのお子さんやその周囲にもいるかもしれませんね。もし、発症した場合は、痛みがあるうちは安静にさせましょう。決して子供が無理をしないように、見守ってあげてください。