記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2025/5/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
育ち盛りのスポーツ少年に起こりやすい疾患であるオスグッド病。動くと痛みが走ったり、再発の可能性もある病気です。子供がスポーツにもっと打ち込めるように、そして、オスグッドからも守ってあげるために、治療法や予防方法についてお伝えします。
オスグッド病はオスグッド・シュラッター病ともいい、10歳から15歳ぐらいの成長期の子ども(とくに男子)に多くみられます。オスグッド病はスポーツ障害のひとつであり、バスケットボール・陸上・サッカー・テニスなど、脚を多く使うスポーツに取り組む子どもに起こりやすいですが、基本的にどのスポーツに取り組む子どもにも発症する可能性があります。オスグッド病では、膝蓋骨(膝にあるお皿)下部の脛骨結節(脛骨粗面)がある部位がぽっこりと骨が飛び出たようなり、痛みが起こります。
オスグッド病の原因は、運動などによる負担と疲労の蓄積です。脛骨粗面の上部には、膝蓋腱という腱が付着しています。激しい運動をすると、膝蓋腱を介して付着部の軟骨が強く引っ張られ、その部位の軟骨が隆起したり、剥がれたりすることで炎症が起こり、痛みが発症します。オスグッド病が子どもに多いのは、子どもの骨が成長の過程にあり、やわらかいためです。大人になると骨が成長して脛骨粗面の骨も丈夫なるため、オスグッド病は起こりにくくなります。
オスグッド病が疑われる場合は、X線検査・MRI検査を行います。オスグッド病と診断された場合は治療を開始しますが、オスグッド病は成長期に現れる一過性の疾患であり、時間の経過とともに治癒していきます。日常生活に影響する場合は手術が検討される可能性もありますが、まずは保存療法から始めることが一般的です。ただし、剥がれた骨の一部が残っている場合は症状が慢性化するリスクがあるため、残った骨を取り除く手術を行う可能性があります。
ステロイド注射で治療する場合もありますが、ステロイドの使用は腱を弱くするという報告もあるため、医師と相談し、メリット・デメリットについて十分理解した上で治療を受けるようにしてください。いずれにしても、基本的には手術の必要はなく、スポーツの練習をお休みして安静に過ごす方法が取られます。なお、治療期間中には、オスグッド病専用サポーター・オスグッド病ベルト(バンド)の装着、テーピング・アイシング、干渉波治療・電気治療などが施されます。
オスグッド病で痛みがあるとき、まず必要になることは「休息」です。安静にして休息をとり、炎症部分の回復を待ちます。痛みが強い場合は、医師と相談し、鎮痛薬や湿布薬を使用しましょう。また、痛みや腫れを抑えるためには、アイシングもおすすめです。氷嚢やアイスパックなどを使用し、適切にアイシングを行いましょう。
運動を続ける場合は、患部の様子を見ながら注意深く行ないましょう。運動前のウォーミングアップと運動後のストレッチ・アイシングを欠かさず行ない、痛みの状態もその都度確認するようにしてください。痛みがある場合、悪化している場合は、運動量を減らす・運動を休むなどして対応し、不安がある場合は医師に相談することをおすすめします。
オスグッド後遺症とは、オスグッド病の発症部位の痛みを、大人になっても再発を繰り返す病態です。オスグッド後遺症には、オスグッド病による骨の変形や骨片(膝関節内にできた骨のかけら)などが大人になっても残ったことで発症するものと、オスグッド病発症の原因になった大腿四頭筋や膝蓋腱の硬さ・足首の柔軟性低下などが大人になっても改善せず、同じような症状を引き起こすものがあります。
骨の変形や骨片による後遺症は膝に強い痛みを引き起こし、場合によっては手術が必要になることもあります。一方、筋肉の硬さなどが原因で生じる後遺症は、成長期より強い外力が原因となるため、より強い炎症を引き起こして痛みや腫れなどを生じます。
オスグッド病は、成長期の子どもに起こるスポーツ障害です。強い痛みが起こる場合もありますが、基本的には時間の経過とともに治癒していくため、一般的には保存療法で治療が進められます。ただし、重症化したり、何度も繰り返したりした場合は、痛みが長期化・悪化する可能性があり、大人になってオスグッド後遺症を発症する可能性もあります。必ず医療機関を受診し、医師の指導通りに治療を進めていきましょう。