記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/26 記事改定日: 2018/6/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
摂食障害とは文字通り、食事を摂る障害、即ち体に対して適切な量を食べられない病気のことです。一般的には食べる量が少なくなりすぎる「拒食」、多くなりすぎる「過食」のことを指します。この記事では、摂食障害が起こる原因について詳しく解説します。
摂食障害とは文字通り、食事を摂る障害、即ち体に対して適切な量を食べられない病気のことです。一般的には食べる量が少なくなりすぎる「拒食」、多くなりすぎる「過食」のことを指します。医学用語では前者は神経性食欲不振症(AN:anorexia nervosa)、後者は神経性過食症(BN: bulimia nervosa)と呼ばれています。
日常生活におけるストレスなどで、たまに食欲がなくなったり、食べ過ぎてしまうことはよくあることです。 ところが、こうした食行動の異常が過度になり、極端に体重が減少しても拒食がやめられない、過食の後に食べたものを全部吐いたり下剤や利尿剤を使って体重増加を避けようとするという異常な行為がみられるようになると、治療を要する摂食障害の疑いが濃くなります。
特に拒食症は、標準体重の60%以下にやせが進むと、低栄養による腎不全や低血糖、電解質異常による不整脈、結核などの感染症など、重い合併症を起こしやすくなります。拒食・過食ともに、アルコールや薬物への依存や抑うつ、怒りっぽい、人格障害などの精神疾患を合併しやすく、万引きや性的に奔放になる、自傷行為や自殺を図るなど衝動的な行動が多くなるといわれています。
摂食障害の90%が女性とされていますが、このような食行動の異常は「認知の歪み」が背景にあることが多いと考えられています。
メディアにやせた人が多く登場するために「やせていることが美しい」という価値観を強く持ってしまう女性は多いと思われます。このような価値観を持つと、やせすぎた体型を目標にしてダイエットを続けてしまうため正常な自己イメージを持つことができず、十分痩せているのに「まだ太っている」と感じて異常な食行動に走ってしまうことがあるのです。
また、ダイエットをきっかけにするのは拒食症だけではありません。太ることへの恐怖を解消するために、「食べ過ぎた後に吐く」という過食症に陥ることも多いです。一般的に10代は拒食症、20代は過食症になることが多いとされ、拒食から過食、過食から拒食へと移り変わることもあります。
強いストレスをやけ食いなどの食行動で解消しようとする習慣がある人は、どんな人でも摂食障害になる可能性があるといえるでしょう。
また、身体醜形恐怖症のように自分の自己イメージを肯定できない場合や、小さい頃に両親が不仲だったり、職場でのハラスメントがあるなど、何かしらの心の傷が引き金となることも少なくありません。その他にもうつ病などが背景にあることもあり、摂食障害の原因は多岐にわたります。食行動の異常があれば、早めに専門家の診断を仰ぎましょう。
摂食障害は、家族環境や社会環境に大きく影響される可能性があります。
特に、親子の接触が少ないことや逆に必要異常な過保護で親離れを阻まれたケースはそれらの要因がない人よりも摂食障害の発症率が高いことが分かっています。
また、近年では「痩せ」や「スリム」が美しさの基準とされることもあり、特に親との関係に問題がある場合には、周りからの注目を浴びたい・褒められたいとの意識から食事を極端に制限して摂食障害の発症につながることが多いとされています。
また、摂食障害には遺伝が関係しているとの説もあります。
もちろん、家族環境や社会環境が摂食障害を発症しやすいものだとしても、全ての人が摂食障害を発症するわけではありません。摂食障害を発症しやすい人は、これらの環境要因があり、ストレスを感じやすい、抑うつ気分に陥りやすいなどの元来の性格も関与しています。
このため、摂食障害は遺伝的な要因も関与していると考えられており、環境要因、遺伝的要因が複雑に絡み合って発症するのです。
しかし、摂食障害になりやすい性格の人が必ず発症するわけでもなく、環境を整えることで発症を予防することも可能です。
摂食障害の発症を防ぐには、環境要因を可能な限り改善することが必要です。
家族環境としては、適度な距離感を保って、決して無関心でもなく過保護でもない関係性が重要です。また、過度な期待をかけられることは、その期待に応えられないという罪悪感を生むことになります。これは摂食障害の発症のリスクを大幅に高めることになりますので、控えるようにしましょう。
また、社会環境に関しては、容姿に対してからかう、批判するなどの行為は控えましょう。また、親自身が必要以上のダイエットを行うことも子供に「痩せ」に対する強迫観念を生むことになりかねませんので、注意が必要です。
自分が摂食障害かどうかは自分自身ではなかなか気づきづらいものであり、明らかに異常な行動をしていても「自分は正常だ」と思っていることも多いです。
過食や拒食は栄養障害を引き起こし、体を衰弱させます。摂食障害を家族など周囲の人間が早めに気づき、病院やカウンセリングでの対人関係療法などを行うことをすすめましょう。もし摂食障害かもしれないと周りの人に言われたときは、自分はそうだと思っていなくても周りの助言に従うようにください。