記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/17 記事改定日: 2020/9/8
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
メンタルヘルスという言葉が身近になりましたが、定義をきちんと理解している人はそこまで多くないかもしれません。この記事では、メンタルヘルスの定義や心の疲れチェックリスト、心の健康を保つための対策などについて紹介しています。
メンタルヘルスは、一般的に「心の健康管理」という意味であり、医学的には精神保健といわれています。世界保健機構(WHO)憲章によれば、「健康とは単に病気がないというだけでなく、肉体的にも、精神的にも、また社会的にもwell-beingな状態」と定義されており、メンタルヘルスは、well-being(ウェルビーイング:良好なこと)な状態を維持向上することを目的としています。
心の病気はだれでもかかり得る病気であるため、メンタルヘルスのケアは身体の健康管理とともに欠かせないものなのです。また、メンタルヘルスは、地域、家庭、職場など様々な場で求められています。
とくに職場に対しては、最近の労働環境が人々の疲労やストレスを高め健康を損ねる一因になっているとし、厚生労働省は2008年に「メンタルヘルスケア指針」を策定し、職場のメンタルヘルスを推進しています。
さて、「心が健康な状態」とはどのような状態なのでしょうか。
厚生労働省は、心の健康を「いきいきと自分らしく生きるための重要な条件」とし、具体的には以下の4点を挙げています。
つまり、これらが満たされている状態が「心が健康な状態」であり「生活の質」に大きく影響するものとしています。
心の健康は、個人の資質や能力の他に、身体状況、社会経済状況、住居や職場の環境、対人関係といった多くの要因が影響し、とくに身体の状態と心の健康は相互に強く関係しているといわれています。
そして、心の健康を保つには、適度な運動や、バランスのとれた栄養・食生活、そして心身の疲労の回復に欠かせない「休養」が必須です。また、十分な睡眠をとり、ストレスと上手につきあうことも心の健康に欠かせない要素となっています。
労働環境が心の健康を損ねる原因になっていると先述したように、現代社会は非常にストレスの多い社会だといわれています。心の病には精神障害としての精神分裂病、躁うつ病、人格障害、薬物依存、認知障害などさまざまなものがあります。
そのなかの一例として、現代のストレス社会ではうつ病が大きな問題になっています。世界の人口のうち3~5%がうつ病であるとの報告もあり、うつ病は多くの人がかかる可能性を持つ精神疾患です。
また、自殺者の多くはこのうつ病が背景にあると考えられているため、うつ病を早期発見し適切に治療することが自殺予防のひとつの大きな鍵になるといえるでしょう。
このように、現代社会において、ストレスにさらされた人々の心の健康を維持するために、心の病気への対応、つまりメンタルヘルスを多くの人が理解し、自分と他者のために取り組むことが求められているのです。
メンタルヘルスにはチェックが欠かせません。セルフチェックはとても重要です。定期的に、そして意識的にセルフチェックすることは心の健康維持に大きく繋がっていきます。下記のような心身の変化がないかチェックしてみてください。
このようなセルフチェックをしてみることで、ストレスがないか、心は元気か常に自分に問いかけ、サインを見逃さないようにすることが大切です。
ラインケアとは、課長や部長など部下を持つ責任者が直属の部下に対して様々な悩みやストレスなどの相談に乗って、事業主などの管理者にその相談内容を基にして職場の環境改善や職員配置などを進言するという取り組みです。
課長や部長などライン責任者はメンタルヘルスに対する正しい知識や対処方法を習得する必要があるため、事業所はこれらの責任者に対して研修や情報提供を行う必要があります。
また責任者は部下からの相談だけでなく、自身が部下一人一人の就業状況や業務内容、休暇取得率などをしっかりと把握し、メンタルヘルスに異常を来たしている可能性のある部下に対して積極的に声掛けを行って、相談しやすい良好な関係を築くことも必要です。
私たちがメンタルヘルスの診断をする方法には、職場と社会機関の2つの方法があります。まず、企業の場合、年に一度のストレスチェックが義務的に行われており、とくに、うつ病に関しては、ラインケアが実施されており管理職も気をつけていると思われます。
さらに、産業保健スタッフに相談し、チェック、援助を得るという方法もあります。社会機関としては、精神科や心療内科などにかかってみるのも一つの手です。より専門的なチェックと指導をしてくれるでしょう。
産業保健スタッフとは、産業保健に携わるスタッフのことを指します。産業医・衛生管理者など「法的に労働安全衛生のために在籍することが定められているスタッフ」以外に、法的な定めのない労働安全衛生担当職員なども含まれます。
産業保健に関わるのは労働安全衛生法によって定められている職種は産業医と衛生管理者のみではありません。保健師や事務職なども選任ではないにせよ産業保健に関わります。
産業保健スタッフは、少しでも産業保健に関わるスタッフの総称のことであり、近年ではチームとして労働者の心身の健康を管理し、生きがいや生産性の向上を目指すことが基本とされています。
メンタルヘルスつまり心の健康管理は、仕事や家庭などさまざまな場面で必要とされています。心と体の健康状態を定期的にチェックし、「心が元気」かどうかを常に確認することが大切です。セルフチェックをしながら、何か変化や不安を感じたときは、最寄の社会機関や精神科、心療内科などの医療機関を訪ねるようにしましょう。