赤ちゃんの病気、クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)とは

2017/10/17

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「甲状腺機能低下症」というと、大人が発生する病気というイメージが強いかもしれませんが、実は赤ちゃんが生まれつき発症してしまうこともあります。今回の記事では、そんな「クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)」について解説していきます。

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クレチン症ってどんな病気?


クレチン症は正式名称を先天性甲状腺機能低下症といい、生まれつき甲状腺の働きが弱い病気のことをいいます。通常、咽喉の下にある甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌されますが、クレチン症になると、甲状腺ホルモンの分泌が不足している状態になります。甲状腺ホルモンは体の発育や知能の発達に欠かせないホルモンのため、クレチン症の治療を行わずにそのまま放置してしまうと、知能に遅れが出たり、低身長になってしまうことがあります。

クレチン症の原因は、はっきりとは解明されていません。ただ、クレチン症は早期に発見して適切な治療を受けることができれば、大きな改善が見込まれる病気です。早期発見して早期治療を開始することが重要になります。

どんな症状がみられると、クレチン症の可能性がある?


クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)の症状は、主に新生児の時期から現れます。主な症状は、皮膚や目の色が黄色くなる新生児黄疸が長引いてなかなかとれないことです。黄疸は新生児の赤ちゃんによく見られる症状ですが、通常は1週間から2週間程度で消えていくものです。ただ、2週間以上経っても黄疸が消えない場合には、クレチン症の可能性があります。

また、赤ちゃんが母乳やミルクをあまり飲まなかったり、元気がなかったりといった症状もあります。出生時の体重は正常ですが、体重が増えにくいといった症状が出てきます。ほかに身体的な特徴もあります。皮膚が乾燥していたり、まぶたが腫れぼったい、口を開けて大きな舌を出しているのがクレチン症の特徴です。

クレチン症かどうかはどうすればわかる?


日本では生まれたばかりの赤ちゃんに対して、クレチン症かどうかを判定する新生児マススクリーニング検査が行われています。新生児マススクリーニング検査とは、赤ちゃんからごく少量の血液を採取して、検査センターなどで甲状腺ホルモンの値を調べる検査です。

新生児マススクリーニング検査で異常値が示された場合には、精密検査が行われることになります。結果、甲状腺刺激ホルモン値の血中濃度が高いとクレチン症と判断されます。新生児マススクリーニング検査が導入されたことにより、日本では生後まもなく発見される場合がほとんどとなりました。

クレチン症は治る? 治療法は?


クレチン症は甲状腺ホルモンの不足が原因で起こる病気なので、甲状腺ホルモンの内服薬を用い、不足分を補う治療法が一般的です。これにより、多くの場合通常と変わらない生活を送ることができます。甲状腺ホルモンの低下が一過性のものであれば、服用が必要なくなる場合もありますが、甲状腺が元々ないといった場合など完治することが難しい時には、甲状腺ホルモンの服用はずっと継続する必要があります。

薬の内服量は、検査結果などによって変える必要があります。特に赤ちゃんが誕生してからの数か月間は、甲状腺ホルモンの働きが重要な時期とされているため、早めに治療を開始することが、赤ちゃんの健やかな発達へとつながります。

おわりに:クレチン症を放置すると発達に遅れがでることも

クレチン症は未治療のまま放置すると、赤ちゃんの体や知能の発達に悪影響を及ぼす可能性のある病気です。赤ちゃんの黄疸が長引いていたり、元気がなかったりといった症状がみられたら、すぐに病院に連れていきましょう。

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