強迫性人格障害の原因と治療法について

2017/10/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

強迫性人格障害は、完璧主義や完全主義の人に多く、非常によく見られるタイプの人格障害です。強い不安やこだわりを持つため、極端に融通が利かないようになってしまいます。この記事では強迫性人格障害の症状や原因について詳しく解説しています。

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強迫性人格障害について


強迫性人格障害は、強い不安やこだわりによって日常生活に支障が生じる病気です。

患者の多くは完璧主義・完全主義で、社会規範や秩序を守ることに異常なこだわりを示し、融通が利かないということが特徴です。具体的な症状の一例として、トイレのたびに「手の汚れ」を強く感じる、手洗いを繰り返す、犯罪や火事を危惧して外出前に施錠やガス栓の確認を際限なく行ったりすることなどが挙げられます。

強迫性人格障害は、最もよく見られる人格障害の一つであり、現在のところ日本の人口に占める患者の割合などは明らかになっていませんが、欧米と同様おおむね1-2%程度、すなわち50-100人に1人、総計100万人強の患者がおり、男性の発症率は女性の約2倍と推定されていて、世界保健機関(World Health Organization:WHO)により、生活上の機能障害をひきおこす10大疾患のひとつに挙げられています。

原因は?

発症の原因は、まだ特定されていません。
しかし、経済の不況や犯罪の多発や自然災害の連続など、先行きが見えない現代社会にあって「自分で自分を守る」という考え方から過度の自己防衛本能が働き、強迫観念や行動がもたらされている可能性があることが示唆され、多くの患者にとっては人間関係のつまづきや仕事のストレス、妊娠・出産なども発症のきっかけとなると考えられています。

また、とくに若年の場合には家族間や遺伝的関連性が推定されています。
例えば、幼少期の「完璧になしとげなければ、両親からの愛情を得られない」という刷り込みがミスや失敗への不安をもたらし、「完璧主義」へと発展しすることが原因になる可能性があります。

神経免疫機能との間に何らかの関連があることが推定されていますが、常に誘因になるわけではないという報告もあることから今後の研究が期待されます。また、脳の形状の特徴や神経回路、神経化学システムが発症に影響を与えるという見解もあますが研究の余地があるようです。

どんな症状が現れる?


強迫性人格障害の症状は、「強迫観念」と「強迫行為」の2種類に大別されます。

「強迫観念」は頭にこびりついて離れない考えのことで、無意味ないし不合理と自覚し、無視したり抑制したりしようとしても払拭できない思考や衝動です。
「強迫行為」は、おもに「強迫観念」に伴って高まる不安を緩和および打ち消すためのもので、その荒唐無稽さや過剰さを認識していますが、やめたいと思いつつも駆り立てられるようにその行為を行ってしまうことです。

なお、初診時の強迫性障害患者は「強迫症状」に強い苦痛を感じているケースが大半であり、無視したり止めようと努力する意思があっても、強い不安から制御や抵抗が難しい状態にあるといわれています。または抵抗しようと思う余裕すらない状態に陥っていることもあります。

また、ほかの精神障害の併存がしばしば認められることも特徴です。中でもうつ病が多く、初診時の約30%で併存が認められるといわれています。

治療する方法とは


強迫性人格障害の治療には、認知行動療法と薬物療法の2療法を組み合わせるのが効果的だとされています。

認知行動療法としては、再発予防効果が高い「曝露反応妨害法」が代表的な治療法です。
これは、患者が強迫観念による不安に立ち向かい、強迫行為を押しとどめるという行動療法です。たとえば、汚いと思うものをさわっても手を洗わずに我慢する、などが挙げられます。こうした対応を継続していくことで、強い不安が弱くなり、やがて強迫行為をしなくても平気になっていきます。

薬物療法としては、クロナゼパムが重い症状の軽減のために処方されることがあります。また、クロミプラミンやフルオキセチンのような抗うつ薬のSSRIは、強迫的徴候や症状が出現する場合に有効と考えられています。この薬で状態を安定させてから、認知行動療法に入るのが一般的です。

おわりに:強迫性人格障害の治療は家族の支えが必要。担当医に確認しながら気長に治療しよう

強迫性人格障害の患者の多くは、不安が引き起こされる状況を避け(回避)、さらに患者の約1/3は確認を強要したりして、しばしば家族を症状に巻き込みます。焦らずに見守る姿勢を忘れず、担当医に確認をとりつつ気持ちにゆとりをもって治療にあたるようにしましょう。

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