職業性ジストニアとはどんな病気? 治療法はあるの?

2017/10/25

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

「職業性ジストニア」という病名を聞いたことがありますか?特定の動きを長期間繰り返した結果、これまで当たり前に行っていた動作ができなくなる疾患で、仕事が続けられなくなる要因にもなりうる病気です。以降で詳しく解説していきます。

職業性ジストニアとは


職業性ジストニアとは、字を書く、楽器を演奏するなど、決まった動作をする時にだけ症状が現れる「動作特異性ジストニア」とよばれるものです。局所のみの筋緊張の異常を起こす局所性ジストニアの一種で、繰り返し同じ動作を長期間し続けることで発症します。同じ動作をしようとすると上肢の筋肉などに異常な緊張が起こり動作を妨げます。ただし、決まった動作以外は普通に行うことができます。

熟練が必要な複雑な動作の過剰な繰り返しによって起こり、特定の職種に出やすいことから、職業性ジストニアとよばれています。これまでは、精神的なストレスが原因と考えられてきましたが、近年、脳や神経系統の異常によって起こる筋肉の過剰な緊張が原因であることが明らかにされました。

職業性ジストニアの特徴的な症状とは


主な症状として、痺れやふるえ、こわばり、脱力などがありますが、大量の字を書く事務系の職業の人に多くみられるのが「書痙」です。字を書こうとすると自分の意志とは関係なく指に力が入り過ぎたり、手首が反り返ったり、手がふるえてしまって字が書けなくなってしまいます。また、パソコンでタイピングすることが多い人では、指の曲がりや手のねじれなどが現れます。

職業性ジストニアはピアニストやバイオリニストなどの音楽家にも多くみられ、「音楽家ジストニア」ともよばれます。音楽家ジストニアの場合は、演奏するときだけ指が曲がって伸びなくなったり、突っ張ったりします。管楽器奏者では口の開閉ができなくなったり無意識に動くなど、口やあごの筋肉に異常が起こります。話すことを職業とする人も同様の症状が起きることがあります。

どのような職業の人に多いのか?


職業性ジストニアを発症しやすい職業として、タイピスト、作家、音楽家(ピアニスト、バイオリニスト、ギタリスト、打楽器奏者など)のほか、ゴルファー(「イップス」とよばれパットなどが打てなくなる)、画家、漫画家、美容師、歯医者、大工、時計や金細工などの職人があげられます。また、口やあごのジストニアを発症しやすい職業として、管楽器奏者のほか、話すことを仕事とする電話対応業、司会やアナウンサー、学校教員など多種多様です。

職業性ジストニアは、動作を反復すればするほど、つまり仕事をすればするほど練習をすればするほど症状が悪化してしまいます。職業によっては、プロとしての人生設計を狂わせてしまう可能性がある病気です。

治療について


職業性ジストニアは診断の難しい病気なので、頸椎の病気や腱鞘炎、心因性の病気やストレス性障害などと診断されている場合も多く、治療前に専門医に診てもらうことが大切です。

治療ではまず薬物療法が行われますが、効果があまりみられず副作用が出やすいことから、補助的に使われることがほとんどです。ほかの治療法としてはボツリヌス毒素を使ったブロック注射があり、こちらは限定的ではありますが一定の効果をあげています。

手指や口の症状に関しては局所麻酔薬とアルコールによるブロック療法、感覚と運動の関係を再学習するリハビリを根気よく行っていく方法なども模索されていますが、完治は困難です。ただ、ごく限られた脳神経外科施設での特殊な手術によって改善したケースもあります。

おわりに:完治はできないが、病院での治療で症状が改善することも

職業性ジストニアに対する根治的な治療法はまだ確立されていませんが、専門的な治療を続けることで、症状が少しずつ改善していったケースも存在します。腱鞘炎などと誤診されることも多い病気なので、原因不明の筋緊張が続いてお悩みであれば、一度専門の医療機関を受診することをおすすめします。

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