記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/25 記事改定日: 2020/2/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「職業性ジストニア」は特定の動きを長期間繰り返した結果、これまで当たり前に行っていた動作ができなくなる病気で、仕事が続けられなくなる要因にもなりうる病気です。
この記事では、職業ジストニアの症状やなりやすい職業、治療などについて解説していきます。
職業性ジストニアとは
など、決まった動作をする時にだけ症状が現れる「動作特異性ジストニア」とよばれるものです。
局所のみの筋緊張の異常を起こす局所性ジストニアの一種で、繰り返し同じ動作を長期間し続けることで発症します。同じ動作をしようとすると上肢の筋肉などに異常な緊張が起こり動作を妨げます。ただし、決まった動作以外は普通に行うことができます。
熟練が必要な複雑な動作の過剰な繰り返しによって起こり、特定の職種に出やすいことから、職業性ジストニアとよばれています。
これまでは、精神的なストレスが原因と考えられてきましたが、近年、脳や神経系統の異常によって起こる筋肉の過剰な緊張が原因であることが明らかにされました。
職業性ジストニアを発症しやすい職業として
などが挙げられます。
また、口やあごのジストニアを発症しやすい職業としては
職業性ジストニアは、動作を反復すればするほど、つまり仕事をすればするほど練習をすればするほど症状が悪化してしまいます。職業によっては、プロとしての人生設計を狂わせてしまう可能性がある病気です。
職業性ジストニアのおもな症状としては
などがありますが、大量の字を書く事務系の職業の人に多くみられるのが「書痙」です。
書痙とは、字を書こうとすると自分の意志とは関係なく指に力が入り過ぎたり、手首が反り返ったり、手がふるえてしまって字が書けなくなってしまうことで。また、パソコンでタイピングすることが多い人では、指の曲がりや手のねじれなどが現れることがあります。
職業性ジストニアはピアニストやバイオリニストなどの音楽家にも多くみられ、音楽家が発症する職業性ジストニアのことを「音楽家ジストニア」と言います。
音楽家ジストニアの症状で多いものは、演奏するときだけ指が曲がって伸びなくなったり、突っ張ったりするなどです。管楽器奏者では口の開閉ができなくなったり無意識に動くなど、口やあごの筋肉に異常が起こり、同じような症状は話すことを職業とする人にも起きることがあります。
職業性ジストニアに対しては、筋肉の動きをスムーズにする効果のある抗コリン薬による薬物療法が第一に行われます。また、筋肉の痙攣が強い場合は、その部位にボツリヌス毒素を直接注射する治療が行われることも少なくありません。
しかし、これらの治療法は劇的に症状が改善する可能性は低く、なかには全く効果を実感できないという人もいます。こういった点から、これまでは職業性ジストニアは発症してしまうと治療が困難な病気と考えられてきました。
しかし、近年では脳の一部に電極を埋め込んで慢性的な刺激を加える「脳深部刺激療法」によって職業性ジストニアが改善するとの報告があり、日本国内でもこの治療を行っている医療機関があります。現在のところ症例数が少なく、保険適応とはなっていないため全額自己負担で手術を受ける必要がありますが、今後のさらなる発展と普及が望まれているところです。
職業性ジストニアに対する根治的な治療法はまだ確立されていませんが、専門的な治療を続けることで症状が少しずつ改善していったケースもあります。腱鞘炎などと誤診されることも多い病気なので、原因不明の筋緊張が続いている場合は、一度専門の医療機関を受診することをおすすめします。