高次脳機能障害の原因は、脳の血管の病気や頭のケガだけじゃないの?

2017/10/31 記事改定日: 2018/11/29
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

高次脳機能障害は脳血管の病気や交通事故などをきっかけに起こることが多いですが、ほかの病気が原因で発症することもあります。
この記事では、脳機能障害の原因について詳しく解説しています。

こんな症状が現れたら高次脳機能障害かも

脳卒中や交通事故などの後で、次のような症状が現れ、それが原因となって対人関係に問題が生じたり、生活への適応が難しくなったりしている場合、高次脳機能障害と診断される可能性があります。

たとえば「記憶障害」では、事故や病気の前に経験したことが思い出せなくなったり、新しい情報が頭に入らなくなったりします。
「注意障害」では、気が散りやすく集中できない状態が続きます。
「進行機能障害」が起こると、論理的に考えたうえでの行動や、自分の行動の分析が難しくなります。
「社会的行動障害」を発症すると、行動や感情のコントロールが効かなくなります。

そのほか、失語症や失認症(触っているものが何かわからない)も高次脳機能障害の特徴的な症状です。

高次脳機能障害をもたらす器質的病変は、脳に病気と事故や怪我などによるものとに分かれます。

下記で原因になる病気や障害について詳しく解説しましょう。

脳機能障害の原因 ― 脳血管の病気

「脳梗塞」とは、脳に酸素と栄養(ブドウ糖)を供給している血液の通り道である脳血管が閉塞することで起こる脳機能障害です。脳血栓と脳塞栓に分かれ、それぞれで症状も異なります。

「脳出血」とは、細い脳血管が破れて脳内に出血することです。小出血か大きな血腫かによって障害の程度も異なります。

「くも膜下出血」は、脳血管にできた脳動脈瘤が破裂する障害です。この瘤は概ね大脳の底面にあるので、出血も大脳の底面で生じ、記憶障害や性格変化などの社会的行動障害につながりやすいといわれています。

「脳腫瘍」は、発生部位および大きさ、良性か否かによって異なる障害をもたらします。

脳機能障害の原因 ― 事故やケガなどの外傷、低酸素脳症

「脳外傷」の主な原因は、若年者では交通事故、50歳以降では転倒・転落事故となっています。強く地面や車に打ち付けられると、前頭葉や側頭葉が損傷されやすく、このために、記憶障害や性格の変化などの社会的行動障害が表れやすくなります。脳損傷のタイプや出血の部位の違いから、脳挫傷、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、外傷性脳出血、外傷性くも膜下出血などの病名がつけられます。

「低酸素脳症」は、溺水、窒息、気管支喘息(喘息:ぜんそく)の発作、心筋梗塞、一酸化炭素中毒によって、脳に一時的に酸素や血液が供給されない、またはその量が少ないことで発症します。
発症時に何分間無酸素状態が続いたか、脳のどの部分に血液が流れなかったかなどにより、高次脳機能障害の内容や回復の度合いも異なってきます。記憶障害や知能低下、ふらつきなどが主な症状として挙げられます。

脳機能障害の原因 ― 感染症、自己免疫疾患、アルコール依存症

脳機能障害は脳にダメージが生じることで発症しますが、感染症や自己免疫疾患、アルコール依存症による脳へのダメージが原因になることも少なくありません。
感染症は、細菌やウイルス、真菌などによる髄膜炎や脳炎が原因になりますが、これらは一時的に脳への血流量が減少して低酸素脳症を引き起こすことがあります。

また、自己免疫疾患の中には、脳炎や脳症を引き起こすタイプのものがあります。これらの自己免疫疾患は難病に指定されており、何も症状がない時期もあれば、脳に強い炎症を引き起こして昏睡状態に陥ることもあるなど症状の変動が激しいのが特徴です。
しかし、脳内の強い炎症を繰り返すことで、次第に脳機能障害が見られるようになります。

さらに、アルコール依存症では、過度なアルコールの摂取は、アルコールが分解されて生じる有害な物質が体内に蓄積し、それが脳にダメージを与えることがあります。
また、アルコールの過剰摂取は動脈硬化の原因となり、脳への血流も減少することが分かっています。アルコール依存症による脳機能障害は、記憶障害が目立つのが特徴です。

周囲の人はどう対応したらいいか?

高次脳機能障害の人の日常生活は、関係者全員が歯がゆさを感じるものです。
特に本人は、いらつき、焦り、落ち込みなどのストレスを抱え込むことがあります。また思うような動作ができない、ミスをするなどが重なると、周囲からの指摘や注意も増え、リハビリがいやになって何もしないといった消極的な生活に陥りがちです。

家族や周囲は対応に気をつけ、明確な日課を準備して前向きな生活のリズムを作ることが求められます。

たとえば、「スケジュールに見通しを持たせ、希望をもって行動しやすくする」「具体的でわかりやすい短期目標を設定する」といった、リハビリ計画作成上の工夫が重要になります。

また周囲の者の心がけとして、「一度に複数の作業を並行して課さない」「否定的な言葉は避ける」など、本人の立場や心情を思いやった寄り添い方をするよう努めましょう。

おわりに:事故だけでなく、病気が原因のことも。疑わしい症状がある場合はすぐに病院へ

高次脳機能障害の原因というと、交通事故や転倒・転落など不意の事故を思い浮かべがちですが、脳血管障害など脳の病気に根ざしている可能性もあります。日常生活の中で疑わしい症状がある場合はすぐに病院を受診しましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

失語症(8) 高次脳機能障害(13) 記憶障害(11) 注意障害(5) 社会的行動障害(3) 交通事故(13)