記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/31 記事改定日: 2018/11/29
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高次脳機能障害は交通事故や脳の病気などが原因で言語障害や記憶障害などの様々な症状が現れる障害です。一見すると以前と変わらないように見えるため、見過ごされやすく、対処が遅くなる傾向があります。
この記事では高次脳機能障害とはどのような病気かついて、全般的な解説しています。利用できるサポートについても触れているので、治療を続けていくためにも参考にしてください。
高次脳機能障害とは、脳の器質的病変の原因となる事故や疾病をきっかけに、人間らしい脳の働きである「認知機能」に問題が起こる障害です。認知機能の問題の具体例として、言語や記憶、注意、情緒などが挙げられます。
記憶力の低下や性格の変化など様々な症状が現れますが、外見は以前と変わらないことがほとんどのため家族さえ見過ごしてしまうケースも少なくありません。
全国の患者数は約50万人と推定され、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、社会的行動障害などに大別され、日常生活に支障をきたす場合も多く見られます。
高次脳機能障害の症例の約94%は、脳血管障害か脳外傷、脳腫瘍が原因です。また60~70%を脳血管障害が、約4%を脳腫瘍が占めるといわれます。
脳血管障害の場合、特に失語症が高い確率で現れます。
脳血管障害のうち、細い脳血管が破れて脳内に出血する脳出血の場合では出血の部位と量(血腫の大きさ)によって現れる障害はさまざまです。また、脳に酸素と栄養(ブドウ糖)を供給している血液の通り道である脳血管が閉塞することで起こる脳梗塞も、閉塞血管の太さやどこの閉塞血管なのかによって症状が異なります。
脳腫瘍で起こる高次脳機能障害も、腫瘍の部位により症状が異なります。ただし記憶障害や性格の変化などの社会的行動障害が現れやすいといわれています。
その他、ウィルス性脳炎、窒息や心筋梗塞から起こる低酸素脳症、アルコール中毒、てんかん、正常圧水頭症、パーキンソン病などによる脳の損傷から発症することもあります。
高次脳機能障害を引き起こす脳外傷の原因としては、交通事故が最も多いといわれています。これは頭が強く地面や車に打ちつけられるため、前頭葉や側頭葉が損傷されやすいということが理由といえるでしょう。損傷部位が広範囲に及ぶため、障害も複合的に発症する場合が多いとされます。また、他にも高所からの落下や暴行などによる脳損傷で発症することもあります。
高次脳機能とは、脳がつかさどっている知的認知機能の総称であり、この機能障害が生じたことで現れる症状は多種にわたります。
例として
などが挙げられますが、これ以外にも沢山の症状があります。
いずれも、一見、健常者と区別がつきにくいのが特徴です。
高次脳機能障害と診断するためには、一般的なCTやMRI検査だけではなく、臨床心理士や言語聴覚士や作業療法士による神経心理学検査が欠かせません。これらの神経心理学検査は、大がかりな医療機械による検査ではなく、担当者が簡単な質問をして回答を得、それを点数化して評価する形をとります。
また高次脳機能障害は、手術や内服、点滴治療といった治療方法が確立されていません。社会復帰を目指してリハビリテーションを行うことが中心になります。リハビリの内容も症状に応じて多様ですが、たとえば反復訓練は記憶障害の回復に有効とされます。またパズル・まちがい探しは注意障害の回復に効果的、家事や物の組み立ては遂行機能障害の回復に効き目があるといわれています。
なお高次脳機能障害は発症後1年程の間に障害・症状が著しく回復するとされています。特に回復しやすいとされるのは注意障害で、反対に回復しにくいのは記憶障害と言われています。脳血管性疾患に起因する高次脳機能障害の記憶障害は、発症者の50%が回復困難というデータも報告されています。
高次脳機能障害の患者に対しては、国や自治体によって様々な支援が行われています。患者の症状に合わせて日常生活をサポートする支援や就労をサポートする支援など様々なものがあります。どのような支援が利用できるかについては、お住まいの自治体に問い合わせたり、担当医やソーシャルワーカーに相談してみるとよいでしょう。
患者本人と家族の負担を少しでも軽減するためにも、利用できる支援は積極的に利用するようにしましょう。
高次脳機能障害は脳の病気や交通・転落事故を原因として生じます。見た目の変化が乏しいため見過ごしてしまいがちですが、早期に発見すれば著しく回復する可能性も高いため、疑わしい徴候があるときは早めの受診を心がけましょう。
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