高次脳機能障害の症状の種類にはどんなものがある?

2017/11/1 記事改定日: 2018/11/28
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

高次脳機能障害が起こる原因には様々なものがあり、症状も多岐にわたります。症状を大きく分けると、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会機能障害に分類されますが、これらはどのような症状なのでしょうか?
症状のチェックリストとあわせて解説していきます。

高次脳機能障害の症状の種類

記憶障害

記憶障害とは、事故や病気の前の経験やエピソードが思い出せなくなったり、新しい経験や情報を覚えられなくなったりする状態をいいます。

注意障害

注意障害とは、周囲からの刺激を受けても、必要なものや重要なことに意識を集中させることがうまくできない状態のことです。

遂行機能障害

遂行機能障害とは、目的に適った「行動計画の障害」と、目的に適った「行動の実行障害」とに分かれます。前者は、行動の目的・計画の障害のために結果は成り行き任せか、刺激への自動的な反応による衝動的な行動となります。後者は、自分の行動をモニターして行動を制御することの障害です。

社会行動障害

社会的行動障害は、行動や感情を場面や状況にあわせ適切にコントロールできなくなった状態です。具体的には、人や趣味に無関心になり、指示がなければ一日中ごろごろと過ごす「意欲の低下」、依存性や退行が見られる「人格機能の低下」、感情コントロールが効かなくなる「自己制御の低下」、些細なことにこだわる「固執性」、いわゆる空気が読めない「対人関係の障害」などを意味します。

半側空間無視

半側空間無視とは、片側に置かれたものに気づかず認識できない症状のことです。
この症状は、脳の右半球を損傷することによる左半側空間無視であることがほとんどです。
これは、見えていないわけではなく、視神経の経路の一部に障害を受けて起こる同名半盲(片側の視野のものが見えなくなってしまう)とは別のものです。

病識欠落

病識欠落とは、本人が障害をもっていることをうまく認識できず、障害がないかのような言動をとることです。

失語症

失語症は、頭の中ではわかっていても声に出すと違う言葉が出てきてしまう、もしくは、聞こえるけれども理解できないといった状態です。聞いた言葉を理解すること、思った言葉を口に出すこと、書かれた文字を読むこと、文字を書くこと、言われた言葉をおうむ返しにすることなど、様々な障害が現れます。

失認症

失認症は、視力や感覚能力は保たれているにもかかわらず、目の前にあるものが何かわからなかったり名前がわからなかったりする状態をいいます。

高次脳機能障害かどうか、チェックしてみよう

高次脳機能障害は脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの脳の病気や、交通事故などでの頭部外傷によって脳に損傷が加わった後に生じるものです。

脳への損傷の後遺症として一般的に考えられる感覚や運動麻痺、言語障害などが見られない場合は、周囲の人や本人すら高次脳機能障害を発症していることに気づかないことが少なくありません。
脳にダメージが加わる病気や怪我をした後に以下のような症状がある場合は、高次脳機能障害を発症している可能性がありますので、念のため病院を受診して相談するようにしましょう。

  • 注意力が散漫で、些細なミスが増えた
  • 性格が怒りっぽく、周囲に当たることが多くなった
  • 身だしなみを整えるのが苦手になった
  • 同時に2つ以上のことを考えたり行ったりすることができなくなった
  • 集中力が欠如し、特定の事柄に異常なこだわりを示すようになった
  • 計画を立てて実行する能力が著しく低下した
  • 料理の手順など、日常的な動作を突然忘れることがある

高次脳機能障害が起こる原因は?

高次脳機能障害の原因の60~70%を脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)が占めます。他に、脳外傷、低酸素脳症、脳腫瘍、脳炎などの感染症が挙げられます。

(1)脳梗塞

脳に酸素と栄養(ブドウ糖)を供給している血液の通り道である脳血管が閉塞してしまう病気です。閉塞血管の太さや、どこの閉塞血管なのかによって、症状が異なります。

(2)脳出血

細い脳血管が破れて脳内に出血する病気です。出血の部位と量(血腫の大きさ)によって、現れる高次脳機能障害は様々です。

(3)くも膜下出血

脳血管にできた脳動脈瘤の破裂により、経験したことのない突然の激しい頭痛を発症します。動脈瘤は、大抵、大脳の底面にあるので、出血も大脳の底面で起こりやすく、記憶障害や性格の変化などの社会的行動障害を呈することが多くなります。

(4)脳外傷

若年者では交通事故、50歳以降では転倒・転落事故が多く見られます。頭が強く地面や車に打ちつけられると、前頭葉や側頭葉が損傷されやすいという特徴があります。そのために、記憶障害や性格の変化などの社会的行動障害が表れやすくなります。

(5)低酸素脳症

溺水、窒息、喘息の発作、心筋梗塞、一酸化炭素中毒などによる、脳への一時的な酸素や血液の供給不足が原因で発症します。何分間、脳のどの部分に血液が流れなかったかによって、障害の内容や回復の速度は異なります。記憶障害や知能低下、ふらつきなどが主な症状とされます。

(6)脳腫瘍

腫瘍の発生部位、大きさ、良性か否かによって障害は異なります。また、まれに脳腫瘍に対する外科的治療、放射線療法、ホルモン療法なども高次脳機能障害を引き起こすことがあります。

高次脳機能障害の症状は改善できる?

高次脳機能障害は脳へのダメージが原因で引き起こされる病気です。一度ダメージを受けた脳は元の状態に完全に戻ることは難しく、症状を完全に治すことはできないと考えてよいでしょう。

しかし、症状に合わせて向精神薬や抗不安薬などを服用し、リハビリを重ねることである程度症状を改善することは可能です。大幅な改善は難しいものの、リハビリを重ね、家族や職場など周囲の人が病気の性質を理解し、支えることでQOLを大きく向上させることもできます。また、社会復帰も可能なケースが多いでしょう。

そのためにも、高次脳機能障害が疑われる場合は、早めに病院を受診して適切な検査・治療を受けるようにしましょう。

おわりに:高次脳機能障害の症状による日常生活の問題は、リハビリで改善することがある!

高次脳機能障害は、すぐに治療が必要な外傷に気をとられ、障害をはっきりと認識しないまま進行し、日常生活に困難をきたすようになる危険性もあります。
ただ、適切なリハビリと治療で改善することもありますので、早期治療のためにも気になる症状と思い当たる病歴がある場合は、早めに病院を受診しましょう。

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