高次脳機能障害の症状の種類と仕事への影響は?

2017/11/1 記事改定日: 2020/5/29
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

高次脳機能障害とは、脳に何らかの障害が発生して引き起こされますが、原因はさまざまで症状も多岐にわたります。
症状は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会機能障害などに分類されますが、日常生活や仕事にどんな影響を及ぼすのでしょうか。症状のチェックリストとあわせて解説していきます。

高次脳機能障害の症状の種類

高次脳機能障害の症状は、以下のように分類することができます。

記憶障害

記憶障害とは、事故や病気の前の経験やエピソードが思い出せなくなったり、新しい経験や情報を覚えられなくなったりする状態をいいます。

注意障害

注意障害とは、周囲からの刺激を受けても、必要なものや重要なことに意識を集中させることがうまくできない状態のことです。ぼーっとしていたり、ミスが多いなどの状態がみられます。

遂行機能障害

遂行機能障害とは、目的に合う「行動計画の障害」と、目的に合う「行動の実行障害」とに分かれます。
行動計画の障害は、行動の目的・計画の障害のために結果を成り行き任せにしたり、刺激への自動的な反応による衝動的な行動をとる傾向があります。行動の実行障害は、自分の行動を評価・分析し、制御することの障害です。

社会的行動障害

社会的行動障害は、行動や感情を場面や状況に合わせて適切にコントロールできなくなった状態です。具体的には、下記のような状態がみられます。

  • 意欲の低下(人や趣味に無関心になり、指示がなければ一日中ごろごろと過ごす)
  • 人格機能の低下(依存性や退行が見られる)
  • 自己制御の低下(感情コントロールが効かなくなる)
  • 固執性(些細なことにこだわる)
  • 対人関係の障害(空気が読めない)

半側空間無視

半側空間無視とは、片側に置かれたものに気づかず認識できない症状です。この症状は、脳の右半球損傷による左半側空間無視であることが多いとされます。
半側空間無視は、視力の問題でものが見えていないわけではありません。視神経の経路の一部に障害を受けて起こる同名半盲(片側の視野のものが見えなくなる状態)とは別の症状です。

病識欠落

病識欠落とは、本人が障害を持っていることを認識できず、障害がないかのような言動や行動をとることです。

失語症

失語症は、頭の中ではわかっていても言葉が出てこなかったり。声に出すと違う言葉が出てきてしまう、もしくは、人の話は聞こえるけれども内容を理解できないといった状態です。聞いた言葉を理解すること、思った言葉を口に出すこと、書かれた文字を読むこと、文字を書くこと、言われた言葉をおうむ返しにすることなどの障害があらわれます。

失認症

失認症は、視力など感覚能力や記憶は保たれているにも関わらず、目の前にあるものが何かわからなかったり名前がわからなかったりする状態をいいます。

失行症

失行症は、歯ブラシや箸を使うなど、日常生活の中で当然のこととして行うことができていた簡単な動作ができなくなる症状のことです。

発症すると、身の回りや身だしなみを整えたり、自分で食事を摂ったり、排泄したりといったことができなくなっていくため、日常的な介護が必要となります。

高次脳機能障害の症状チェックリスト

高次脳機能障害は脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの脳の病気や、交通事故などでの頭部外傷によって脳に損傷が生じて発生します

脳への損傷の後遺症として一般的に考えられる感覚や運動麻痺、言語障害などがみられない場合は、周囲の人や本人すら高次脳機能障害を発症していることに気づかないことが少なくありません。
脳にダメージが生じる病気や怪我をした後に以下のような症状がある場合は、高次脳機能障害を発症している可能性があります。当てはまる症状がある場合、病院を受診して相談しましょう。

  • 注意力が散漫で、些細なミスが増えた
  • 性格が怒りっぽく、周囲に当たることが多くなった
  • 身だしなみを整えるのが苦手になった
  • 同時に2つ以上のことを考えたり行ったりすることができなくなった
  • 集中力が欠如した
  • 特定の事柄に異常なこだわりを示すようになった
  • 計画を立てて実行する能力が著しく低下した
  • 料理の手順など、日常的な動作を突然忘れることがある

高次脳機能障害を起こす原因疾患は?

高次脳機能障害の原因の60~70%を脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)が占めます。その他に、脳外傷、低酸素脳症、脳腫瘍、脳炎などの感染症が挙げられます。

(1)脳梗塞

脳血管は、脳に酸素と栄養(ブドウ糖)を供給している血液の通り道です。この脳血管が閉塞してしまう病気を脳梗塞と呼びます。閉塞した血管の太さやどこの血管が閉塞したかによって、症状が異なります。

(2)脳出血

細い脳血管が破れて脳内に出血が生じる病気です。出血の部位と量(血腫の大きさ)によって、あらわれる高次脳機能障害の種類はさまざまです。

(3)くも膜下出血

脳血管にできた脳動脈瘤が破裂した場合、経験したことのない激しい頭痛が突然発症します。動脈瘤は、大抵、大脳の底面にあるので、出血も大脳の底面で起こりやすくなります。その結果、記憶障害や性格の変化などの社会的行動障害が引き起こされやすくなります。

(4)脳外傷

若年者では交通事故によるものが多く、50歳以降では転倒・転落事故によるものが多くみられます。頭を強く地面や車に打ちつけられると、前頭葉や側頭葉が損傷されやすいという特徴があります。そのために、記憶障害や性格の変化などの社会的行動障害が引き起こされやすくなります。

(5)低酸素脳症

溺水、窒息、喘息の発作、心筋梗塞、一酸化炭素中毒などによる、脳への一時的な酸素不足や血液の供給不足が原因で発症します。何分間、脳のどの部分に血液が流れなかったかによって、障害の内容や回復の速度は異なります。記憶障害や知能低下、ふらつきなどが主な症状とされます。

(6)脳腫瘍

腫瘍の発生部位、大きさ、良性か否かによって障害は異なります。まれにではありますが、脳腫瘍に対する外科的治療、放射線療法、ホルモン療法などが高次脳機能障害を引き起こすことがあります。

(7)脳炎などの感染症

脳炎や脳症など脳に炎症が引き起こされる病気によって高次機能障害を発症することがあります。これらの病気は回復しても脳に加わったダメージは完全に元の状態に戻らないことも多く、その結果として高次機能障害が引き起こされます。
高次機能障害の程度は脳炎や脳症によってダメージを受けた部位やダメージの強さによって異なります。

高次脳機能障害は治療で改善できる?社会復帰は?

高次脳機能障害は脳へのダメージが原因で引き起こされる病気です。一度ダメージを受けた脳は元の状態に完全に戻ることは難しく、症状を完全に治すことはできないと考えてよいでしょう。

しかし、症状に合わせて向精神薬や抗不安薬などを服用し、リハビリを重ねることである程度症状を改善することができることもあります。大幅な改善は難しいものの、リハビリを重ね、家族や職場など周囲の人が病気の性質を理解し、支えることでQOLを大きく向上させることもできます。また、社会復帰も可能なケースが多いでしょう。

そのためにも、高次脳機能障害が疑われる場合は、早めに病院を受診して適切な検査・治療を受けるようにしましょう。

おわりに:高次脳機能障害による日常生活の問題はリハビリや薬で改善することがある!

高次脳機能障害は、脳の病気や外傷によって脳に障害が生じる病気です。以前はできたことができなくなるなど、日常生活や仕事に影響を及ぼしますが、適切なリハビリと治療で改善することがあります。気になる症状や思い当たる病歴がある場合は、早めに病院を受診して治療を開始しましょう。

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