トキソプラズマ症で起こる体の変化と妊婦への感染のリスク

2017/11/1 記事改定日: 2018/7/20
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

妊娠中の女性は風邪やインフルエンザなどさまざまな感染症に注意する必要がありますが、注意すべき感染症のひとつとして、「トキソプラズマ症」が挙げられます。以降でその具体的な症状や予防法、妊婦さんが感染した場合のリスクについて解説していきます。

トキソプラズマ症とは

トキソプラズマ症とは、トキソプラズマという原虫によって感染する病気です。この原虫はごく小さな単細胞生物で、ほぼ全ての哺乳類や鳥類に寄生することができます。中でも豚、牛、羊、鶏、馬などの家畜や、鹿、鼠、鯨などの野生生物に感染が多く見られます。最終的な宿主はネコ科の動物で、この体内で生殖を行って繁殖します。

トキソプラズマ症は感染した動物の肉を生食したり、猫の糞便に触れることによって人間に感染します。土壌や水の中に生息するトキソプラズマによって感染が起きたという報告も近年は増えています。また、妊娠中に初めてトキソプラズマに感染すると、胎盤を経由して胎児に伝染し、先天性トキソプラズマ症を引き起こす場合があります。

トキソプラズマ症の症状

トキソプラズマは、鳥刺しや馬刺しなど肉の生食の摂取や、猫の糞便の掃除、園芸などで土に触れることによって人に感染します。健康な成人に感染しても、大抵の場合は症状が出ることはなく、症状が出たとしても発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなど、軽い風邪程度の症状で治まることがほとんどです。また、1度感染すると抗体ができるため、再び感染することはほぼありません。

しかし、胎児や幼児、エイズ患者など免疫不全状態の人に感染した場合は、脳炎や肺炎などの重篤な症状を引き起こすことがあります。脳炎を引き起こした場合は、頭痛や言語障害、痙攣、錯乱、昏睡といった症状を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。ほかにも心臓・肝臓や眼球へ影響を及ぼすことがあります。

妊娠中はトキソプラズマ感染にとくに注意が必要!

妊娠中の女性がトキソプラズマに初めて感染してしまうと、胎盤を通して胎児へ感染し、先天性トキソプラズマ症を発症させる場合があります。胎児に感染する可能性は妊娠初期は低く、後期になるほど上昇しますが、感染した際の重症化のリスクは妊娠初期ほど高くなります。そのため、妊娠中の女性はトキソプラズマの感染に特に注意が必要となります。

先天性トキソプラズマ症の代表的な症状は、水頭症、視力障害、頭蓋内の石灰化、精神運動機能障害で、妊娠初期には流産や死産を引き起こす原因にもなります。

また、トキソプラズマ症は他にも胎児の臓器に種々の影響を及ぼし、リンパ節の腫脹や黄疸、貧血、肝脾腫、肝機能障害、血小板の減少などの症状を発生させる場合があります。妊娠後期の感染だと大きな症状が出ないこともありますが、出生から数年後に眼に病変が見つかる場合もあり、先天性トキソプラズマ症による眼への影響のリスクは思春期頃まで持続すると言われています。

妊娠中にトキソプラズマに感染してしまったら

妊娠中にトキソプラズマに感染しているかどうかは、抗体を検査することによって分かります。妊婦が感染していることが判明した場合は、さらに詳しい検査を行い、感染の時期を特定します。妊娠後の感染が考えられる場合は、薬の服用によって胎児に感染するリスクを減少させることができます。服用する薬は、アセチルスピラマイシンという薬が一般的です。アセチルスピラマイシンは胎盤内で濃度が高くなる性質を持っているため、胎盤でトキソプラズマ原虫が胎児に感染するリスクを減らすことができます。

これらの投薬によって胎児への感染リスクをゼロにすることはできませんが、重篤な症状を起こす可能性を大きく減少させることができます。従って、妊娠が判明したら早めに抗体検査を行い、トキソプラズマの感染が疑われたら、適切に薬を服用することが求められます。

トキソプラズマを予防するにはどうすればいい?

日本においてトキソプラズマに感染する機会には次のようなものが考えられますが、それぞれに対策が必要になります。

① 生肉の摂取

トキソプラズマは豚肉や鶏肉などに潜んでいることがあります。このため、鳥刺しやユッケなどの生肉や生ハム、サラミなどの加工肉を食べると感染することがあります。肉類を食べるときはよく火を通し、妊娠中の人は生ハムやサラミなどの摂取は控えるようにしましょう。
また、生肉に触れた調理器具はしっかり洗浄し、サラダなどの生食する食材に移らないように注意して下さい。

② ペットからの感染

トキソプラズマは猫に寄生していることが多く、猫の糞に触れることで感染することがあります。糞の処理をするときには使い捨ての手袋をするなどの対策をしましょう。

③ ガーデニング

土には猫の糞によって排出されたトキソプラズマが潜んでいる可能性があります。猫を飼っていない家庭でも、庭に猫が入り込むことがありますので、注意が必要です。ガーデニングを行うときには、手袋を着用するようにしましょう。

おわりに:妊娠中のトキソプラズマ感染は、赤ちゃんの先天性疾患や流産につながる恐れが!

妊娠中にトキソプラズマに感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症を発症し、視力障害になったり、あるいは流産を引き起こしたりする恐れがあります。妊娠中は、生肉の摂取や猫の糞便の掃除など、感染の要因となる行動を避け、予防に努めましょう。

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