ウィルソン病ってどんな病気? ~ 原因・症状・治療法について ~

2017/11/10

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「ウィルソン病」という病気をご存知ですか?国の指定難病の一種ですが、初めてこの病名を聞いたという方も多いかと思います。今回の記事ではこのウィルソン病について、症状や原因、治療法などをお伝えしていきます。

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ウィルソン病とは?

ウィルソン病は常染色体潜性遺伝で遺伝するとされる、先天性銅過剰症です。通常、食材から摂取した銅は身体に必要なミネラルで正常であれば肝臓から胆汁中へ、さらに腸へと排出されますが、ウィルソン病を発症すると上手く排泄できずに体内に蓄積してしまいます。そのため、肝臓・脳・腎臓などに多量に溜め込まれた銅は、肝臓や神経に重い障害を引き起こします。

ウィルソン病は、3~4万人に1人の確率で発症するとされる難病です。ただ、ウィルソン病は適切な治療を早期から受けることで、健康な方と同様に生活を送ることが可能となります。

原因と考えられるのは・・・

ウィルソン病の原因となるのは、細胞内で胴を輸送する銅輸送タンパク(ATP7B)の遺伝子異常です。この遺伝子異常により、細胞に胴が蓄積していきます。

遺伝形式は常染色体潜性遺伝で、両親が保因者であれば子供は4分の1の確率で発症します。ただ、保因者であっても一般的な病気の症状は現れず、生活に支障はなく治療の必要もありません。

なお、食生活や日常生活が原因となることはありません。また、発症数に男女の差もないとされています。

どんな症状が起きるの?

ウィルソン病の症状は、「肝型」「神経型」「肝・神経型」「その他」の4種類に分類されます。

まず肝型とは肝障害で、疲れやすくなったり、白目や皮膚に黄疸が現れたりします。3才から15才の小児期に発見されることが多い症状です。

神経型は神経障害で、初期症状では呂律が回らなくなり言葉が聞き取りづらくなるのが特徴です。手指がふるえて、字を書くなど細かな作業ができなくなり、症状が進行すると手足のふるえ(振戦)が強くなり、歩いていても急に止まることができなくなります。また記憶力や計算力が落ち、精神状態も不安定となって鬱や統合失調性の症状が現れる場合もあります。これらの症状は思春期頃から現れやすくなります。

肝・神経型では、上記の肝型、神経型の症状がどちらもみられます。そしてその他の症状としては血尿やタンパク尿、心筋症などの症状がみられます。

ウィルソン病はどうやって治療するの?

ウィルソン病の治療では、一般的に免疫を抑制するD-ペニシラミンや、塩酸トリエンチンなどの銅結合薬が処方されます。銅結合薬は空腹時に経口服用することで、銅の排泄を促進し、症状の進行を抑えます。また、食事中の銅吸収阻害をする亜鉛薬も、ウィルソン病の銅吸収を防げる薬として処方されることがあります。

これらの薬剤は副作用の可能性があるため、医師の管理が必要となります。そして、生涯服用を続けていくことが治療となります。

日常生活では銅の摂取を控えることも重要で、銅を多く含む貝や甲殻類・レバー・豆・穀物・ココア・チョコレートなどの摂取に注意をしなくてはいけません。

おわりに:肝臓や神経に重い障害を引き起こすウィルソン病。早期発見・治療が肝心

臓器に銅が溜め込まれることで、肝臓や神経などに重い症状を引き起こすウィルソン病。難病ではありますが、適切な治療を早い段階から受ければ人生を全うできるともされるので、疑わしい症状が現れたらすぐに専門の医療機関を受診してください。

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